9999年01月01日

予定情報

刊行予定
7/28『満願』(新潮文庫)

雑誌掲載等
12月「紐育チーズケーキの謎(仮)」
(東京創元社「ミステリーズ!」 〈小市民〉シリーズ )

(この頁は米澤が気がついたときに更新しています)
(正確な情報は出版社のサイトなどでご確認下さい)
(更新日時が9999年になっているのは、この項目をトップに表示するためです)
posted by 米澤穂信 at 00:00| 予定情報一覧

2016年12月31日

今年の総括です


 こんにちは。米澤です。

 2016年の終わりにあたり、今年の総括をします。
 今年は総じて低調な一年でした。二月から三月にかけてひどい痛みに襲われ、打ち合わせをキャンセルすること数度、いちど仕事を止めて受診や検査に明け暮れましたが、これといって問題は見つかりませんでした。
 その後、仕事の状況が変化してから、痛みがほぼ消えたのがありがたいところです。


 一月は岐阜県立図書館にお招き頂いて、講演をいたしました。(講演録は「文芸カドカワ」に収録されています)。また、短篇「いまさら翼といわれても」の後篇が「野性時代」に載りました。

 二月は「GRANTA JAPAN with 早稲田文学 03」に短篇「竹の子姫」を載せて頂きました。紙幅に制限がある中、「虫愛ずる姫君」と密室トリック(ジャック・フットレル「十三号独房の問題」の系譜に連なるものです)を書けた、心残りと楽しさが同居する仕事でした。

 三月は「ダ・ヴィンチ」で有栖川有栖先生と対談をいたしました。なにぶん私も新本格の直撃を受けていますのでどうしても固くなってしまいましたが、ホテルに関する話がとりわけ面白かったです。

 四月は「女性自身」で柚月裕子さんと対談をいたしました。日常の謎から書誌を始めた私と、警察や検察の世界を描いて評価の高い柚木さんではずいぶん傾向が違いますが、誌面には収まらないほど話が盛り上がりました。

 五月は、記録を見る限り、ようやく体調が回復に向かったことで遅れていた仕事を進め、溜まっていた連絡を取ることなどに忙殺されていたようです。

 六月は「ユリイカ」の妖怪特集に、短篇「野風」を載せて頂きました。郡代の息子、鉄太郎が散策中ふと墓地に迷い込み、加藤清正の孫の墓を見つけるという物語です。天狗が出て来ますが、天狗は妖怪かと訊かれて驚きました。

 七月は「本の雑誌」にエッセイ「鷹と犬」を寄稿しました。名物企画、三万円分の本を買い、その様子をレポートしたものです。前半戦までしか書けなかったので、どこかで後半戦も書きたいと思っていましたが、なかなかままなりません。

 八月は「文芸カドカワ」に短篇「箱の中の欠落」を載せて頂きました。短篇集の冒頭に置くことを想定していたため、掉尾を飾る「いまさら翼といわれても」とはいろいろ対比する点があります。たとえばどちらも、折木の料理が出来上がったところで電話がかかってきます。

 九月は、先月に続いて「文芸カドカワ」に、「わたしたちの伝説の一冊」が載りました。電子メディアならではの枚数無制限につられ、ずいぶん勢いよく書いたことを憶えています。

 十月は、短篇「花冠の日」を新たに併録した、『さよなら妖精』の新装版が刊行されました。小説が長く読まれ、その寿命が保たれるのはこの上ない喜びです。しかも、新装版は版を重ねることができました。しみじみと喜んだものです。

 十一月は金沢学院大学のお招きを受けて公開講座に出させて頂き、その翌週には福岡県大刀洗町立図書館で講演をいたしました。そして月末にはとうとう、〈古典部〉の短篇集、『いまさら翼といわれても』を読者の方々にお届けすることができました。

 十二月は短篇「巴里マカロンの謎」を「ミステリーズ!」に載せて頂きました。久しぶりの〈小市民〉です。そして都内二ヶ所、それと大阪で『いまさら翼といわれても』のサイン会を開いて頂きました。先月から続いてなかなかの強行軍でしたが、読者と直接接するのは何よりの喜びです。これからもいろいろ書いていくつもりですが、やはり〈古典部〉や〈小市民〉も大事にしたいと、改めて痛感いたしました。


 こうして書き出してみても、年の前半はやや低調で、後半にかけて調子が上がってきた様子がわかります。
 このまま、2017年はよい滑り出しをしたいものです。

 今年もありがとうございました。どうぞ来年も、よろしくお願いいたします。

posted by 米澤穂信 at 05:49| 近況報告

2016年12月12日

「巴里マカロンの謎」


「ミステリーズ!」vol.80(KADOKAWA)収録
発売日:2016年12月12日



 楽しみだったの! でも、いまはもう、自分でもどれを諦めたのかわからない……。



「ミステリーズ!」に寄稿した短篇です。

 高校一年の二学期、小鳩常悟朗は小佐内ゆきに連れられ、名古屋への快速列車に乗っていた。とある事情で小佐内の頼み事をひとつ聞くことになり、小佐内は名古屋のパティスリーへの同行を希望したのだ。その店では三種類のマカロンを選べるのだが、小佐内は四種類食べたかったのだ。小鳩を連れていけば、一回で四種類試せる。

 そうして訪れたパティスリーで三種類のマカロンを注文し、小佐内は少しのあいだ席を外した。戻って来たとき、彼女の皿には四つのマカロンが乗っていた。
 頼んだのは三つだったはずなのになぜ? 店員が間違えたのだろうか? まさか! しかしではなぜ、誰が第四のマカロンを置いたのか?

 疑問は多々あるが、小鳩はまず、「どれが後から置かれた四つめのマカロンなのか」を当てようとする。その問いの解決自体は、二人にとってそれほど難しいものではなかった。

 真の問題は、小佐内が「四つめのマカロン」を手に取ったときに浮上する。そのマカロンは、重かったのだ。
 涙を呑んでマカロンを割った小佐内は、その中身を見て、さすがに驚愕を隠せない。
 ……中には、金の指輪が入っていたのだ。


〈小市民〉シリーズの、ひさしぶりの短篇です。
 彼らは変わらないですね。

タグ:〈小市民〉
posted by 米澤穂信 at 00:00| 雑誌等掲載短篇

2016年11月30日

『いまさら翼といわれても』


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著:米澤穂信
写真:清水厚
装幀:岩郷重力+K.T
出版社:KADOKAWA

発売日:2016年11月30日
定価:本体1,480円(税別)
四六判上製
ISBN:978-4-04-104761-3


 21冊目にして、〈古典部〉シリーズの6冊目です。

 機会を見つけて書いていた短篇を、短篇集として編み上げました。
 いずれ本にするときこのような一冊になればと思い描いていたその形に、仕上げられたと思います。
『氷菓』から続く小説を、また新たにお届けできました。
 物語の時期は、折木奉太郎たちが二年生になった一学期、ほぼ『ふたりの距離の概算』と重なっています。
 以下の小説が収録されています。

箱の中の欠落
 夕食を作り終えた折木奉太郎に、電話が掛かってくる。福部里志が、散歩に行かないかと誘ってきたのだ。落ち合った福部は、その日おこなわれた生徒会選挙で、あり得ない投票結果が出たと告げる。

鏡には映らない
 伊原摩耶花はふとしたことから、中学時代に折木が犯した過ちのことを思い出す。その過ちゆえに折木はクラス全員から軽蔑された。それから二年、折木と同じ古典部に属してきた伊原は思う。……あの一件は見た目通りだったのか?

連峰は晴れているか
 校舎上空を、一機のヘリコプターが飛び越していく。そのエンジン音を聞き、折木はなんとはなしに、「荻がヘリ好きだったな」と呟く。中学校の英語教師、小木のことを言ったのだが、中学校が同じだった福部も伊原も、そんな話は知らないという。

わたしたちの伝説の一冊
 中核的な部員が退部したことで、漫画研究会は分裂状態に陥っていた。伊原は漫画を描きたいだけだが、いまの漫画研究会でそれをすることには派閥的な意味が生じてしまう……。息苦しい状況の中、伊原の創作ノートが盗まれてしまう。

長い休日
 清々しい休日、折木は街歩きに出かけた先で、千反田えると出会う。なぜか稲荷の祠を掃除することになり、箒で落葉を集める折木は、千反田から問いかけられる。「やらなくてもいいことなら、やらない」……折木はどうして、モットーを掲げることになったのか。

いまさら翼といわれても
 昼食を作り終えた折木奉太郎に、電話が掛かってくる。伊原が、千反田の行方を知らないかと訊いてきたのだ。市の合唱祭でソロパートを歌うはずだった千反田が、出番が近づいても会場に現われないというのだ。取りあえず現場に向かった折木は、僅かな手がかりから千反田の居場所と、その望みとを推理していく。

タグ:〈古典部〉
posted by 米澤穂信 at 00:00| 既刊情報

2016年11月14日

『いまさら翼といわれても』サイン会


 こんにちは。米澤です。

『いまさら翼といわれても』の刊行に際し、サイン会を開いて頂けることになりました。
 場所は新宿と池袋と大阪です。


【新宿】
紀伊國屋書店 新宿本店様

11月20日をもちまして、新宿会場は申込受付満数終了です。
ありがとうございます。
以下は当日のご案内のために残してあります。

日 時:2016年12月3日(土) 14:00 〜
場 所:紀伊國屋書店新宿本店8階 イベントスペース
定 員:120名

参加方法:11月20日(日)午前10時より、店頭にて予約受付開始
 残部がある場合、11月21(月)午前10時より電話にて受付

電話番号:03-3354-5702

紀伊國屋書店新宿本店詳細URL
https://www.kinokuniya.co.jp/c/store/Shinjuku-Main-Store/20161114101711.html



【池袋】
ジュンク堂書店 池袋本店様

11月14日をもちまして、池袋会場は申込受付満数終了です。
ありがとうございます。
以下は当日のご案内のために残してあります。

日 時:2016年12月4日(日)
 第一部 14:00〜(お並びは13:30〜)
 第二部 14:30〜(お並びは14:20〜)

場 所:ジュンク堂書店 池袋本店 1階 エントランス
定 員:120名

参加方法:ジュンク堂書店池袋本店3F店頭 または 電話にて整理券配布受付

電話番号:03-5956-6111

ジュンク堂書店池袋本店詳細URL
http://honto.jp/store/news/detail_041000020384.html?shgcd=HB300



【大阪】
紀伊國屋書店 グランフロント大阪店様

11月17日をもちまして、大阪会場は申込受付満数終了です。
ありがとうございます。
以下は当日のご案内のために残してあります。

日 時:2016年12月10日(土) 14:00〜
場 所:紀伊國屋書店グランフロント大阪店 店内特設会場にて
定 員:120名

参加方法:店頭 または 電話にて整理券配布受付

電話番号:06-7730-8451(10:00〜21:00)

紀伊國屋書店グランフロント大阪店詳細URL
https://www.kinokuniya.co.jp/c/store/Grand-Front-Osaka-Store/20161117094946.html


 久しぶりのシリーズ新刊をお届けできて本当に嬉しいです。
 当日、どうぞよろしくお願いいたします。
posted by 米澤穂信 at 19:56| イベント告知

2016年11月01日

『インサート・コイン(ズ) 』


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著:詠坂雄二
装画:旭ハジメ
装幀:坂野公一(welle design)
出版社:光文社

発売日:2016年10月12日
定価:本体800円
文庫判
ISBN:978-4-334-77365-6



 世界なら何千回も救ってきたのに自分一人を救いきれず、もがきながら「たたかう」を選び続ける、これは痣だらけの物語だ。




 詠坂雄二の文庫刊行にあたり、オビ文を書かせていただきました。
 字数と、より多くの読者にてにとってもらうためという目的がなければ、「キングレオに『たたかう』を選び続けるような」と書いていたかもしれません。
 負けるとわかっている、ほとんど諦めている、それでも書き続けることをやめる気は毛頭ない、自ら選んでの消耗戦を描いたこの小説の、魅力の一端なりと伝えられていればと願います。

 ところでテレビゲーム「ドラゴンクエスト」シリーズでは、とても手に負えない難敵に会った時、あるいは諸般の事情で敵とたたかいたくない時、逃走を選択することができます。
 そしてその逃走が失敗すると、「しかし まわりこまれてしまった!」と表示されます。
 本書のサブテキストとしてお役に立てばと思います。

posted by 米澤穂信 at 13:24| 解説・推薦・編纂

2016年10月31日

『さよなら妖精』


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THE SEVENTH HOPE

(単行本新装版)
著:米澤穂信
装幀:岩郷重力+k.k
出版社:東京創元社

発売日:2016年10月31日
定価:本体1,700円(税別)
四六判上製
ISBN:978-4-488-02768-1

(四六判)
著:米澤穂信
装幀:岩郷重力+WONDER WORKZ。
出版社:東京創元社

発売日:2004年2月24日
定価:本体1,500円(税別)
四六判仮フランス装
ISBN:4-448-01702-9

(文庫判)
著:米澤穂信
解説:鷹城宏
装幀:岩郷重力+WONDER WORKZ。
出版社:東京創元社

発売日:2006年6月10日
定価:本体743円(税別)
文庫判
ISBN:4-488-45103-9


(2016年追記)
 今回、『さよなら妖精』を単行本新装版として再刊して頂けることになりました。
 すべての小説が長く記憶されるわけではない中で、私にとっても思い出深い本作を、ふたたび読者の皆さまにお届けできることを嬉しく思います。

 いまならこうは書かないという若書きの点も多々ありますが、今回加筆修正は行いませんでした。未熟ゆえの失敗や不足ならば改めるに憚りはありませんが、当時の私にしか書き得なかった文章を、いまの私の目から見て若いからといって手を加えるのは、小説を殺すことだと考えたからです。

 また、短篇「花冠の日」を併録していただきました。
(追記おわり)

 三冊目です。初めての非シリーズ物になります。
 タイトルから、ファンタシー物と思われる方もいらっしゃるようですが、違います。
 舞台は藤柴市。観光業以外にこれといって売り物もなく、その観光業もやや衰退の兆しが見える地方都市です。主人公は大学一年生、守屋路行。彼が友人と喫茶店で待ち合わせるところから、物語は始まります。

 彼らは、一年前のことを思い返します。
 ある雨の日、守屋たちの前に現れた旅行者。黒髪の白人である彼女は、マーヤと名乗ります。行く当てがないという彼女に、守屋はホームステイ先を紹介します。
 そして、それからの二ヶ月。守屋とその友人たちは、マーヤと時を過ごします。マーヤの故郷と日本との違いに深い興味を示し、それは時として守屋たちに謎を投げかけます。
 約束の時間が過ぎ、マーヤは故郷へと帰って行きました。
 そして一年。守屋はどうしても、マーヤの故郷とはどこであったのかを知らなければならなくなります。

『愚者のエンドロール』が趣味的な仕上がりになっていると以前書きましたが、本作はまた別の意味で趣味的です。
 作中で取り上げられる事態の「真犯人」を当てるのは、ちょっと骨が折れる仕事になるでしょう。
posted by 米澤穂信 at 00:00| 既刊情報

2016年10月01日

大刀洗町立図書館講演会


 こんにちは。米澤です。

 2016年11月12日、福岡県大刀洗町立図書館で行われる「大刀洗ドリーム祭り」に伴い、講演をさせていただくことになりました。

 奇妙なご縁でお招きをいただき、伺うこととなりました。
 人前で話すことはどうにも不得手ですが、準備して務めさせていただきます。

日時:2016年11月12日(土) 13:00 〜
場所:大刀洗ドリームセンター ドリームホール
参加費:無料

申込方法:10月2日(日)午前10時より、電話およびにて受付開始
電話番号:0942-41-6111

 今回は会場が(とても)広いので、とりあえずいまのところ定員は決まっていないようです。
 詳しくは大刀洗町立図書館のサイトでご確認ください。


 当日を楽しみにしています。
posted by 米澤穂信 at 21:20| イベント告知

2016年09月10日

「わたしたちの伝説の一冊」


「文芸カドカワ」2016年10月号(KADOKAWA)収録
発売日:2016年9月10日



 でもそれは、くるしいことです。



 電子雑誌「文芸カドカワ」に寄稿した短篇です。

 神山高校の漫画研究会は二つに割れていた。自分でも漫画を描く人の部活なのか、それとも専ら読む人の部活なのか、活動方針の違いを巡って対立は日々深まるばかりだった。
 そんな中で伊原摩耶花は、漫研の浅沼から同人誌に寄稿しないかと誘いを受ける。部費で同人誌を作り、それを部活の実績として既成事実化することで対立を有利に運ぼうというのだ。自分の漫画が部内の争いに使われることに違和感を覚えつつ、描く機会があるならと伊原は誘いに前向きになる。ただ、寄稿するためには先に何枚描くかを決める必要があると言われ、ページ数確定のために返答はいったん保留することになった。

 しかし企みはあっさりと露見し、浅沼たちは部内の承認も得ずに部費を盗もうとしたと糾弾される。新しい部長は、浅沼たちに条件を突きつけた。烏合の衆の同人誌などどうせ完成はしない、企画が失敗したら、混乱の責任を取って全員退部せよ、と……。
 漫研内部の対立が泥沼と化していく中でも、伊原は淡々と漫画を描き続ける。しかし状況は彼女の自由を許さなかった。
 ある日、伊原の創作ノートが盗まれたのだ。

タグ:〈古典部〉
posted by 米澤穂信 at 00:00| 雑誌等掲載短篇

2016年08月10日

「箱の中の欠落」


「文芸カドカワ」2016年9月号(KADOKAWA)収録
発売日:2016年8月10日



「福部里志の話なら夜の散歩ぐらい付き合うのも面白いが、副委員長の相談だったら委員会に持ち帰ってくれ」



 電子雑誌「文芸カドカワ」に寄稿した短篇です。

 ある日、夕食に焼きそばを作っていた折木奉太郎に電話がかかってくる。福部里志から、散歩をしないかという誘いの電話だった。折木は何かあると察し、焼きそばをさっさと平らげて里志と合流する。
 初夏の夜、街中を歩きながら、里志は学校であったことを話す。……総務委員会の仕事で生徒会選挙の開票に立ち会ったところ、投票総数が神山高校の全生徒数よりも多かったというのだ。
 誰がやったか、何故やったかはともかく、どうやってやったかを突き止めないことには再選挙もできない。困っているのだ、と里志は話す。
 折木は夜空を見上げ、
「帰った方がよさそうだな」
 と呟いた。

 ハウダニットのミステリであり、古典部の彼らの(比較的)ふだんの様子でもあります。
 高校生はよく食べる、という話でもあります。

タグ:〈古典部〉
posted by 米澤穂信 at 13:55| 雑誌等掲載短篇

2016年06月27日

「野風」


「ユリイカ」2016年7月号(青土社)収録
発売日:2016年6月27日 雑誌定価:1,300円



 鎌倉が焼け室町が倒れ、何ぞ江戸のみとこしえに栄えようか。瓦解の日こそ満願成就、死ぬぞ、死ぬぞ、何千何万と死ぬぞ。



 雑誌「ユリイカ」の特集、「ニッポンの妖怪文化」に寄稿した短篇です。

 江戸生まれの鉄太郎は、郡代に任ぜられた父親に伴って草木深い鄙の地に移ったが、少々退屈していた。ある日、ふと思いついて天性寺裏の墓地に入り込んだ彼は、流罪の末に果てた加藤光広の墓を見つける。あわれを覚え手を合わせた鉄太郎に、嘲弄の声がかけられる。
「物知らずのこわっぱが、ほざきおる」
 振り返れば、いましも異形の影が山の奥へと駆けていくところ。若年とはいえ新影流を学んだ鉄太郎は、いざとなれば刀に物を言わせるつもりで、逃がすものかと影を追った……。


 本歌は雨月物語から「白峯」です。
 古来名文中の名文と称えられた白峯にならうのは恐ろしいことですが、初読時は解説付きでもわからなかった白峯が学習を進めるに従って一語一語の意味が明らかになっていった喜びを忘れがたく、今回機会を頂き、及ばずながら本歌取りを試みました。

posted by 米澤穂信 at 00:00| 雑誌等掲載短篇

2016年03月22日

連続刊行記念


 こんにちは。米澤です。

(2016.3.22追記)

 トークイベントの開催日時が5月14日(土)14時から(2時間程度を予定)と決定しました。
 場所は、東京都内でいろいろ探しています。候補は絞れているようなので近日中にはお知らせできると思います。

 また、応募の締切は2016年3月末日(消印有効)となっています。

(追記おわり)


 今年は『王とサーカス』と『真実の10メートル手前』というシリーズ作品を立て続けに上梓することが出来ました。
 連続刊行はそうそうないことですから、記念の意を込めて、二冊とも買って下さった読者の方にささやかなお礼をしようという企画が持ち上がりました。


『王とサーカス』と『真実の10メートル手前』のオビには、応募券がついています。
 これを両方揃えて東京創元社に送って下さった方から、抽選で30名様をA賞としてトークイベント(2016年5月開催)にご招待いたします。また、100名様にB賞として特製図書カード1000円分をお贈りします。

 A賞のトークイベントとB賞の図書カード、両方に応募することは出来ません
 また、応募は一人一口までとなっています。
 詳細、お問い合わせ先は東京創元社のサイトをご覧ください。


 トークイベント……どうしよう……。
 と、当日までに何か用意しておきます。

 どうぞ、よろしくお願いいたします。
posted by 米澤穂信 at 00:00| イベント告知

2016年02月26日

「竹の子姫」


「GRANTA JAPAN with 早稲田文学 03」(早川書房)収録
発売日:2016年2月26日 雑誌定価:1,944円



  父に、和尚に、里の皆にわかってもらおうとは思わない。おのれは竹林や山野を巡る中で、無数の虫たちから、いのちを学んだ。いのちのありようは無数にあることを、誰に教わることなくひとり感得していったのだ。母が死に、乳母が死に、なぜおのれは生きているのか、虫の生き死にを見つめるうちに少しずつ納得することができた。




 ムック「GRANTA JAPAN with 早稲田文学」に寄稿した短篇です。

 美母衣の里の春日長者はたいそうな物持ちで、人も多く使い都と商いをしておおいに富み栄えていた。
 その娘は竹の子姫と名付けられ、母は早くに亡くしたが、気丈に爛漫に育っていた。
 ある日、竹の子姫は蛹を見つけ、ここから蝶が出てくるのだと教わった。それを期に姫は虫を好み、地を蓄えるため山野を巡るようになる。
 無邪気な歳月は速く過ぎ、年頃になった竹の子姫に縁談が持ち込まれる。春日長者に呼び出された竹の子姫は、ふたつのことを言い渡される。ひとつは、決められた家に嫁ぐこと。もうひとつは、薄気味の悪い虫好みをやめること。
 竹の子姫はすぐに答えた。
「嫌でございます」
 それから、姫の人生は一変していく。

 一万字で、という条件を頂いていました。
 子供の頃はよく竹の子を掘ったものです。

posted by 米澤穂信 at 00:00| 雑誌等掲載短篇

2016年01月12日

「いまさら翼といわれても」

「野性時代」(角川書店)収録
発売日:(前篇掲載号)2015年12月12日 (後篇掲載号)2016年1月12日



 いまさら翼といわれても、困るんです。




 雑誌「野性時代」に寄稿した中篇です。

 高校生活二度目の夏休みを楽しんでいる折木奉太郎に、思いもかけず、伊原摩耶花からの電話がかかってきた。
「ちーちゃんの行きそうなところ、知らない?」
 千反田はその日、市が主催するイベントで合唱のソロパートを務めることになっていた。それが、集合時刻を大幅に過ぎても姿を見せないのだという。単に寝坊したのだろうと返す折木だが、どうやらそうではないらしい。
 千反田が合唱イベントの会場に向かうバスに乗るところを目撃した人物がいるというのだ。

 取りあえず会場に向かった折木は伊原の他、合唱サークルの関係者に事情を聞き、千反田を捜し始める。手がかりになるのはバス時刻表、雨傘と日傘、そして千反田がソロパートを受け持っている合唱曲「放生の月」……。

 最新の時刻表を持って現場に駆けつけた里志に、折木は言った。
「だいたいの察しはついてる。捜し出せるさ」



 前後編構成の中篇となっています。
 多くの人物は千反田の居場所を求めていますが、折木が求めているのは、それではありません。

タグ:〈古典部〉
posted by 米澤穂信 at 00:00| 雑誌等掲載短篇

2015年12月31日

今年の総括です


 こんにちは。米澤です。

 今年は前半を『王とサーカス』(東京創元社)に費やし、後半にバラエティに富む仕事をしていた印象があります。
 実は昨年来少し体調を崩してしまい、『王とサーカス』は自分のコンディションとにらめっこをしながらじりじりと書いていくことになりました。昨年中には上梓できる予定だったことを思えば、今年7月刊行というのは不甲斐なくも待っていた読者のみなさまに申し訳ない結果ではあるのですが、自分の印象としては、ようやく刊行に辿り着けてずいぶんほっとしたというのが偽らざるところです。

 7月の『王とサーカス』刊行後は、東京で二ヶ所、名古屋、大阪でそれぞれ一ヶ所、合計四ヶ所でのサイン会という初めての経験をさせて頂きました。
 酷暑の中かつスケジュールの合間を縫った(「ミステリーズ!新人賞」の選考会が近かったのです!)タフなイベントでしたが、振り返ればずいぶん晴れがましく、楽しいものだったと思います。
 整髪料を持っていくのを忘れて深夜の名古屋駅をうろうろしたり、大阪のモダン焼きに舌鼓を打ったりいたしました。

 また、6月には『リカーシブル』(新潮社)が文庫化されました。
 これの単行本を出すとき、ゲラ作業はゆえあって北海道でやったことを思い出します。
 文庫化にあたって、装幀は清潔感と謎めいた感じが両立する素敵なものになりました。本書の主人公ハルカの気負いようは、好きです。長く手にとってもらえる一冊になればと思っています。

 8月には雑誌「ダ・ヴィンチ」9月号(メディアファクトリー)で特集を組んで頂きました。
 これはなかなかたいへんなお仕事だったはずなのですが、それよりもいろんな方とお話しできた楽しさばかりが思い出されます。杉江松恋さんと私の全仕事を振り返ったインタビューは、あれ何時間ぐらいかかりましたか。長いとまったく思っていなかったので、時計を見てびっくりしたものです。打てば響くような辻村深月さんとのお話も楽しかった。別れ際にほうとうの美味しい店を教えてもらったのですが、現地に行く時間が取れず、後の原稿に反映させられなかったのは残念です。
「CREA」12月号には西崎憲さんとの対談が載りました。対談の場では圧倒されるばかりで見当外れのことばかり話していたような気がしますが、誌面ではうまくまとめて頂きました。

 短篇は10月、「オール讀物」(文藝春秋)に「重い本」を書きました。
 これは〈甦り課〉シリーズの三作目、そろそろゴールが見えてきたかなと思いつつ、まだもう少し仕掛けることが残っています。
 また、12月から二ヶ月連続で、「野性時代」(KADOKAWA)に「いまさら翼といわれても」を載せていただくことになりました。〈古典部〉の新作です。読んで下さったみなさまの反応が楽しみでもあり不安でもあり、この仕事をしていて、刊行直前のいまがいちばん浮き足立つ時期です。

 そして12月に、『真実の10メートル手前』(東京創元社)を出すことが出来ました。
 遡れば、最初に書いた短篇はもう八年前のものです。ずいぶん長い間、太刀洗万智の小説を書いてきたんだなと感慨深くなります。『王とサーカス』の刊行から間を空けずに短篇集を出せたのは、ほとんど偶然です(経緯は『真実の10メートル手前』のあとがきをご覧下さい)。が、素敵な偶然でした。

 年末には各種ミステリランキングで『王とサーカス』を高く評価していただきました。光栄です。
 来年は長篇一冊、短篇集一冊を出したいと目論んでいます。いいものになりますように。いいものをお届けできますように。

 今年もありがとうございました。来年もがんばります。


posted by 米澤穂信 at 16:50| 近況報告

2015年12月25日

『真実の10メートル手前』


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How many miles to the truth

著:米澤穂信
写真:岩郷重力+K.K
装幀:岩郷重力+K.K
出版社:東京創元社

発売日:2015年12月25日
定価:本体1,400円(税別)
四六判上製
ISBN:978-4-488-02756-8



 ところで目とは、そこにあるものを見るための器官ではありません。




 20冊目です。

『王とサーカス』の経験を経て、太刀洗万智は一人のフリー記者として歩み始めました。
 彼女の仕事を収めた短篇集をお届けします。

 折を見て書き溜めていた短篇が一冊にまとまりました。
 最初の短編は実に8年前に書かれています。推協賞受賞記念のものや、アンソロジーに向けたもの、機会を見つけて書いてきたものが長篇と同じ年に本になるとは、感慨深い巡り合わせです。


真実の10メートル手前
 失踪したベンチャー企業の広報担当者が、その妹に電話をかけてきた。東洋新聞大垣支局の記者・太刀洗は、電話の内容だけを手がかりに単独インタビューを試み、名古屋駅から特急「しなの」に乗る。

正義漢
 東京都吉祥寺駅で乗客が線路に転落、轢死し、電車は運行を停止した。別ルートを模索するひとびとの中で、不審な動きをする女性がいた。

恋累心中
 三重県の恋累(こいがさね)で、高校生の男女が心中した。現場に向かう週刊誌記者に、上司は取材コーディネーターを手配していた。「癖はあるが、切れるやつだ」。

名を刻む死
 福岡県鳥崎市で、独居老人が亡くなっているのが見つかった。遺体の第一発見者の中学生に、太刀洗が接触を試みる。彼女の取材目標はひとつ、『名を刻む死』とはなにか。

ナイフを失われた思い出の中に
 神奈川県浜倉市で、男子高校生が姪を刺殺したとして自首、逮捕される。その数日後、東欧のある国から男性が浜倉を訪れる。ある思い出のために……。

「綱渡りの成功例」
 長野県南部を襲った台風により、西赤石市は大きな被害を受けた。大きな土砂崩れからかろうじて生き延びた住人に、太刀洗は取材を試みる。なぜ、いまなのか。なぜ、その問いなのか。(書き下ろし)

posted by 米澤穂信 at 00:00| 既刊情報

2015年12月10日

評価を頂きました


 こんにちは。米澤です。

 年の瀬となりまして、毎年恒例のミステリランキングが各社から発表されています。
 拙作『王とサーカス』が、宝島社の「このミステリーがすごい!」、文藝春秋の「週刊文春ミステリーベスト10」、早川書房の「ミステリが読みたい!」の三つのランキングにおいて1位を頂きました。

 昨年に続き高い評価を頂きまして、これはさすがに、驚きが先に立ちました。
 毎年、各種ランキング本を参考に「今年はこういうミステリがあったのか」と胸を躍らせていた昔日を思うに、感慨深いものがあります。

『王とサーカス』を多くの方々に楽しんで頂けたこと、とても嬉しく思っています。
 次作もがんばります。ありがとうございました。
posted by 米澤穂信 at 00:00| お知らせ

2015年12月08日

岐阜県図書館講演会




 申込受付満数終了です。
 ありがとうございます。



 こんにちは。米澤です。

 2016年1月10日、岐阜県図書館で行われる「ぎふけん・おすすめの1冊コンクール」表彰式に伴い、講演をさせていただくことになりました。

 テーマは「小説の故郷」としています。
 話すことはあまり得意ではありませんが、いろいろ考えていきます。ゆるゆるお話しさせていただければと思っています。

日時:2016年1月10日(日)
場所:岐阜県立図書館
定員:250人
参加費:無料

 詳しくは岐阜県図書館のサイトでご確認ください。


 当日を楽しみにしています。
posted by 米澤穂信 at 00:00| イベント告知

2015年12月01日

『真実の10メートル手前』サイン会


 こんにちは。米澤です。

『真実の10メートル手前』の刊行に際し、サイン会を開いて頂けることになりました。
 場所は池袋と横浜です。
 横浜には何度か遊びに(より正確には、白菜のクリーム煮を食べに)行っていますが、サイン会は初めてです。


【池袋】
三省堂書店 池袋本店様

12月1日をもちまして、池袋会場は申込受付満数終了です。
ありがとうございます。
以下は当日のご案内のために残してあります。

日 時:2015年12月19日(土)15:00 〜
場 所:三省堂書店 池袋本店 別館地下1階 特設会場
定 員:100名
 
参加方法:2015年12月1日(火)午前10:00時より下記WEBサイトにて、参加券引換券の予約受付開始。

三省堂書店西部池袋本店サイン会受付URL
http://eventregist.com/e/honobu


【横浜】
紀伊國屋書店 横浜店様

12月6日をもちまして、横浜会場は申込受付満数終了です。
ありがとうございます。
以下は当日のご案内のために残してあります。

日 時:2015年12月20日(日) 16:00 〜
場 所:紀伊國屋書店横浜店店内特設会場
定 員:100名

参加方法:12月1日(火)午前10時より、電話および店頭にて予約受付開始。
電話番号:045-450-5901
(横浜店代表/受付時間:10:00〜20:00)

紀伊國屋書店横浜店詳細URL
https://www.kinokuniya.co.jp/c/store/Yokohama-Store/20151201095500.html



 年の瀬の慌ただしい時期ではありますが、おいで頂ければ嬉しいです。
 当日、どうぞよろしくお願いいたします。
posted by 米澤穂信 at 16:26| イベント告知

2015年10月22日

「重い本」


「オール讀物」2015.11(文藝春秋)収録
発売日:2015年10月22日 雑誌定価:980円



 あの子はこれから、どんな本を読んでいくんでしょうな。無理に読ませる気はないが、薦める本はつい考えます。




 雑誌「オール讀物」に寄稿した短篇です。

 いったん無人となった蓑石村、現在の南はかま市蓑石にふたたび人を呼び戻そうという試みは、幾度ものトラブルに見舞われていた。
 入居者のひとり久保寺は、アマチュアの歴史研究家として何冊か単著も出しており、入居者の中でも目を惹く経歴の持ち主だった。大量の本に囲まれ、豊かに、そして孤独に暮らしてきた彼の家を、新しく近所に引っ越してきた家の子供、速人くんが頻繁に訪れる。目当ては妖怪を描いた本らしい。久保寺は速人くんの訪問を、内心で嬉しがっているようだった。

 しかしある日、市の出張所に、速人くんが帰ってこないという電話がかかってきた。いつものように「本の小父さん」のところに遊びに行くと言って家を出たきり、戻ってこないのだという。急行した市役所職員が調べたところ、状況から見て、やはり久保寺の家に行ったのだろうとしか考えられないことがわかったが、その久保寺家は堅く戸締まりされている。留守だったのだ。
 速人くんはどこに消えたのか。日没が迫り、各人に焦りが見え始めた時、職員のひとりがふと久保寺の話を思い出す。
 そういえばこの家について、久保寺さんは何か気になることを言っていた……。

軽い雨』『黒い網』に続くシリーズものです。
 前作を踏まえている部分はないので、単独でもお読み頂けるかと思います。

タグ:〈甦り課〉
posted by 米澤穂信 at 23:51| 雑誌等掲載短篇