2016年12月31日

今年の総括です


 こんにちは。米澤です。

 2016年の終わりにあたり、今年の総括をします。
 今年は総じて低調な一年でした。二月から三月にかけてひどい痛みに襲われ、打ち合わせをキャンセルすること数度、いちど仕事を止めて受診や検査に明け暮れましたが、これといって問題は見つかりませんでした。
 その後、仕事の状況が変化してから、痛みがほぼ消えたのがありがたいところです。


 一月は岐阜県立図書館にお招き頂いて、講演をいたしました。(講演録は「文芸カドカワ」に収録されています)。また、短篇「いまさら翼といわれても」の後篇が「野性時代」に載りました。

 二月は「GRANTA JAPAN with 早稲田文学 03」に短篇「竹の子姫」を載せて頂きました。紙幅に制限がある中、「虫愛ずる姫君」と密室トリック(ジャック・フットレル「十三号独房の問題」の系譜に連なるものです)を書けた、心残りと楽しさが同居する仕事でした。

 三月は「ダ・ヴィンチ」で有栖川有栖先生と対談をいたしました。なにぶん私も新本格の直撃を受けていますのでどうしても固くなってしまいましたが、ホテルに関する話がとりわけ面白かったです。

 四月は「女性自身」で柚月裕子さんと対談をいたしました。日常の謎から書誌を始めた私と、警察や検察の世界を描いて評価の高い柚木さんではずいぶん傾向が違いますが、誌面には収まらないほど話が盛り上がりました。

 五月は、記録を見る限り、ようやく体調が回復に向かったことで遅れていた仕事を進め、溜まっていた連絡を取ることなどに忙殺されていたようです。

 六月は「ユリイカ」の妖怪特集に、短篇「野風」を載せて頂きました。郡代の息子、鉄太郎が散策中ふと墓地に迷い込み、加藤清正の孫の墓を見つけるという物語です。天狗が出て来ますが、天狗は妖怪かと訊かれて驚きました。

 七月は「本の雑誌」にエッセイ「鷹と犬」を寄稿しました。名物企画、三万円分の本を買い、その様子をレポートしたものです。前半戦までしか書けなかったので、どこかで後半戦も書きたいと思っていましたが、なかなかままなりません。

 八月は「文芸カドカワ」に短篇「箱の中の欠落」を載せて頂きました。短篇集の冒頭に置くことを想定していたため、掉尾を飾る「いまさら翼といわれても」とはいろいろ対比する点があります。たとえばどちらも、折木の料理が出来上がったところで電話がかかってきます。

 九月は、先月に続いて「文芸カドカワ」に、「わたしたちの伝説の一冊」が載りました。電子メディアならではの枚数無制限につられ、ずいぶん勢いよく書いたことを憶えています。

 十月は、短篇「花冠の日」を新たに併録した、『さよなら妖精』の新装版が刊行されました。小説が長く読まれ、その寿命が保たれるのはこの上ない喜びです。しかも、新装版は版を重ねることができました。しみじみと喜んだものです。

 十一月は金沢学院大学のお招きを受けて公開講座に出させて頂き、その翌週には福岡県大刀洗町立図書館で講演をいたしました。そして月末にはとうとう、〈古典部〉の短篇集、『いまさら翼といわれても』を読者の方々にお届けすることができました。

 十二月は短篇「巴里マカロンの謎」を「ミステリーズ!」に載せて頂きました。久しぶりの〈小市民〉です。そして都内二ヶ所、それと大阪で『いまさら翼といわれても』のサイン会を開いて頂きました。先月から続いてなかなかの強行軍でしたが、読者と直接接するのは何よりの喜びです。これからもいろいろ書いていくつもりですが、やはり〈古典部〉や〈小市民〉も大事にしたいと、改めて痛感いたしました。


 こうして書き出してみても、年の前半はやや低調で、後半にかけて調子が上がってきた様子がわかります。
 このまま、2017年はよい滑り出しをしたいものです。

 今年もありがとうございました。どうぞ来年も、よろしくお願いいたします。

posted by 米澤穂信 at 05:49| 近況報告

2016年12月12日

「巴里マカロンの謎」


「ミステリーズ!」vol.80(東京創元社)収録
発売日:2016年12月12日



 楽しみだったの! でも、いまはもう、自分でもどれを諦めたのかわからない……。



「ミステリーズ!」に寄稿した短篇です。

 高校一年の二学期、小鳩常悟朗は小佐内ゆきに連れられ、名古屋への快速列車に乗っていた。とある事情で小佐内の頼み事をひとつ聞くことになり、小佐内は名古屋のパティスリーへの同行を希望したのだ。その店では三種類のマカロンを選べるのだが、小佐内は四種類食べたかったのだ。小鳩を連れていけば、一回で四種類試せる。

 そうして訪れたパティスリーで三種類のマカロンを注文し、小佐内は少しのあいだ席を外した。戻って来たとき、彼女の皿には四つのマカロンが乗っていた。
 頼んだのは三つだったはずなのになぜ? 店員が間違えたのだろうか? まさか! しかしではなぜ、誰が第四のマカロンを置いたのか?

 疑問は多々あるが、小鳩はまず、「どれが後から置かれた四つめのマカロンなのか」を当てようとする。その問いの解決自体は、二人にとってそれほど難しいものではなかった。

 真の問題は、小佐内が「四つめのマカロン」を手に取ったときに浮上する。そのマカロンは、重かったのだ。
 涙を呑んでマカロンを割った小佐内は、その中身を見て、さすがに驚愕を隠せない。
 ……中には、金の指輪が入っていたのだ。


〈小市民〉シリーズの、ひさしぶりの短篇です。
 彼らは変わらないですね。

タグ:〈小市民〉
posted by 米澤穂信 at 00:00| 雑誌等掲載短篇