著:井上靖 出版社:中央公論新社(中公文庫) 解説:米澤穂信 |
井上靖の小説群からサスペンスに富む作品を特に選んだオリジナル短篇集の、解説をお任せいただきました。身に余る光栄です。
初めて読んだときからそのおそろしさ、かなしさが胸から離れない「雷雨」は、やはり何度読んでもいいものでした。作中の双璧は「傍観者」「ある偽作家の生涯」でしょう。高潔と俗悪を二つながらに描き出す井上靖の筆の冴えについては、いまさら私などが何を言うまでもないことでありますが、新しい読者の入口になればと願うばかりです。
自らの性分に振りまわされ、打ちのめされ、自らがぼろぼろであることを理解しながらも、他人の問題を解決する仕事を天職とし、すべてをそれに捧げて生きる男。 私はアルバート・サムスンが好きです。 (ミステリマガジン2022年9月号より) |
著:マイクル.Z.リューイン 出版社:早川書房(ハヤカワ文庫) |