掲載誌:「小説野性時代」(KADOKAWA)特別編集2022年冬号 |
承知致したきはやまやまながら、まだ約束のものも少々あり且、この月廿日から歸省しますので(□□□したンですからね)今月中には承合いかねます、せめて四月一杯として戴けませんか。それでも宜しかったら書きます。 |
山田風太郎賞を受けた「私」に届いた一葉の葉書、それは、編集者だった妻の大叔父が山田風太郎から受け取った、原稿依頼の断り状だった。風太郎曰く、「山田三兄弟」の誼みもあるが、今は書けない……。
山田三兄弟とは、誰々を言うのだろう。帰省の理由は? この葉書は何年のものなのか。そして何より、妻の大叔父は山田風太郎から原稿を受け取れたのだろうか。
数々の疑問を胸に、「私」は資料を辿り始める。それは終戦直後の東京に、若き山風と若き編集者の交流を追う旅の始まりとなった。