2023年01月20日

「命の恩」


掲載誌:「オール讀物」(文藝春秋)2023年2月号


 親父を嫌っていた人は、大勢いるでしょう。でも、殺すほどに憎んでいた人は思い当たりません。いえ、ひょっとしたら酒のはずみで暴力を振るったり、振るわれたりしたこともあったかもしれませんが、それで親父が死んだとして……ばらばらにされるようなことは、なかったと思います。


 夏の行楽シーズン、榛名山麓でバラバラ死体が発見された。ただちに特別捜査本部が設置される。
 捜査を担当する葛警部補は、次々に寄せられる死体発見報告を受けながら、「なぜ」と自問する。なぜ死体は切断されたのか? なぜ榛名山麓に捨てたのか。それがわからなければ、たとえ被疑者を逮捕しても事件は終わるまい……。
 被害者の過去を辿り、唯一の「なぜ」を解き明かす捜査が始まる。

タグ:〈葛警部〉
posted by 米澤穂信 at 22:54| 雑誌等掲載短篇