「オール讀物」2015.11(文藝春秋)収録 発売日:2015年10月22日 雑誌定価:980円 |
あの子はこれから、どんな本を読んでいくんでしょうな。無理に読ませる気はないが、薦める本はつい考えます。 |
雑誌「オール讀物」に寄稿した短篇です。
いったん無人となった蓑石村、現在の南はかま市蓑石にふたたび人を呼び戻そうという試みは、幾度ものトラブルに見舞われていた。
入居者のひとり久保寺は、アマチュアの歴史研究家として何冊か単著も出しており、入居者の中でも目を惹く経歴の持ち主だった。大量の本に囲まれ、豊かに、そして孤独に暮らしてきた彼の家を、新しく近所に引っ越してきた家の子供、速人くんが頻繁に訪れる。目当ては妖怪を描いた本らしい。久保寺は速人くんの訪問を、内心で嬉しがっているようだった。
しかしある日、市の出張所に、速人くんが帰ってこないという電話がかかってきた。いつものように「本の小父さん」のところに遊びに行くと言って家を出たきり、戻ってこないのだという。急行した市役所職員が調べたところ、状況から見て、やはり久保寺の家に行ったのだろうとしか考えられないことがわかったが、その久保寺家は堅く戸締まりされている。留守だったのだ。
速人くんはどこに消えたのか。日没が迫り、各人に焦りが見え始めた時、職員のひとりがふと久保寺の話を思い出す。
そういえばこの家について、久保寺さんは何か気になることを言っていた……。
「軽い雨』『黒い網』に続くシリーズものです。
前作を踏まえている部分はないので、単独でもお読み頂けるかと思います。
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