2015年12月31日
今年の総括です
こんにちは。米澤です。
今年は前半を『王とサーカス』(東京創元社)に費やし、後半にバラエティに富む仕事をしていた印象があります。
実は昨年来少し体調を崩してしまい、『王とサーカス』は自分のコンディションとにらめっこをしながらじりじりと書いていくことになりました。昨年中には上梓できる予定だったことを思えば、今年7月刊行というのは不甲斐なくも待っていた読者のみなさまに申し訳ない結果ではあるのですが、自分の印象としては、ようやく刊行に辿り着けてずいぶんほっとしたというのが偽らざるところです。
7月の『王とサーカス』刊行後は、東京で二ヶ所、名古屋、大阪でそれぞれ一ヶ所、合計四ヶ所でのサイン会という初めての経験をさせて頂きました。
酷暑の中かつスケジュールの合間を縫った(「ミステリーズ!新人賞」の選考会が近かったのです!)タフなイベントでしたが、振り返ればずいぶん晴れがましく、楽しいものだったと思います。
整髪料を持っていくのを忘れて深夜の名古屋駅をうろうろしたり、大阪のモダン焼きに舌鼓を打ったりいたしました。
また、6月には『リカーシブル』(新潮社)が文庫化されました。
これの単行本を出すとき、ゲラ作業はゆえあって北海道でやったことを思い出します。
文庫化にあたって、装幀は清潔感と謎めいた感じが両立する素敵なものになりました。本書の主人公ハルカの気負いようは、好きです。長く手にとってもらえる一冊になればと思っています。
8月には雑誌「ダ・ヴィンチ」9月号(メディアファクトリー)で特集を組んで頂きました。
これはなかなかたいへんなお仕事だったはずなのですが、それよりもいろんな方とお話しできた楽しさばかりが思い出されます。杉江松恋さんと私の全仕事を振り返ったインタビューは、あれ何時間ぐらいかかりましたか。長いとまったく思っていなかったので、時計を見てびっくりしたものです。打てば響くような辻村深月さんとのお話も楽しかった。別れ際にほうとうの美味しい店を教えてもらったのですが、現地に行く時間が取れず、後の原稿に反映させられなかったのは残念です。
「CREA」12月号には西崎憲さんとの対談が載りました。対談の場では圧倒されるばかりで見当外れのことばかり話していたような気がしますが、誌面ではうまくまとめて頂きました。
短篇は10月、「オール讀物」(文藝春秋)に「重い本」を書きました。
これは〈甦り課〉シリーズの三作目、そろそろゴールが見えてきたかなと思いつつ、まだもう少し仕掛けることが残っています。
また、12月から二ヶ月連続で、「野性時代」(KADOKAWA)に「いまさら翼といわれても」を載せていただくことになりました。〈古典部〉の新作です。読んで下さったみなさまの反応が楽しみでもあり不安でもあり、この仕事をしていて、刊行直前のいまがいちばん浮き足立つ時期です。
そして12月に、『真実の10メートル手前』(東京創元社)を出すことが出来ました。
遡れば、最初に書いた短篇はもう八年前のものです。ずいぶん長い間、太刀洗万智の小説を書いてきたんだなと感慨深くなります。『王とサーカス』の刊行から間を空けずに短篇集を出せたのは、ほとんど偶然です(経緯は『真実の10メートル手前』のあとがきをご覧下さい)。が、素敵な偶然でした。
年末には各種ミステリランキングで『王とサーカス』を高く評価していただきました。光栄です。
来年は長篇一冊、短篇集一冊を出したいと目論んでいます。いいものになりますように。いいものをお届けできますように。
今年もありがとうございました。来年もがんばります。
posted by 米澤穂信 at 16:50| 近況報告