2016年01月12日

「いまさら翼といわれても」

「野性時代」(角川書店)収録
発売日:(前篇掲載号)2015年12月12日 (後篇掲載号)2016年1月12日



 いまさら翼といわれても、困るんです。




 雑誌「野性時代」に寄稿した中篇です。

 高校生活二度目の夏休みを楽しんでいる折木奉太郎に、思いもかけず、伊原摩耶花からの電話がかかってきた。
「ちーちゃんの行きそうなところ、知らない?」
 千反田はその日、市が主催するイベントで合唱のソロパートを務めることになっていた。それが、集合時刻を大幅に過ぎても姿を見せないのだという。単に寝坊したのだろうと返す折木だが、どうやらそうではないらしい。
 千反田が合唱イベントの会場に向かうバスに乗るところを目撃した人物がいるというのだ。

 取りあえず会場に向かった折木は伊原の他、合唱サークルの関係者に事情を聞き、千反田を捜し始める。手がかりになるのはバス時刻表、雨傘と日傘、そして千反田がソロパートを受け持っている合唱曲「放生の月」……。

 最新の時刻表を持って現場に駆けつけた里志に、折木は言った。
「だいたいの察しはついてる。捜し出せるさ」



 前後編構成の中篇となっています。
 多くの人物は千反田の居場所を求めていますが、折木が求めているのは、それではありません。

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posted by 米澤穂信 at 00:00| 雑誌等掲載短篇