2016年06月27日

「野風」


「ユリイカ」2016年7月号(青土社)収録
発売日:2016年6月27日 雑誌定価:1,300円



 鎌倉が焼け室町が倒れ、何ぞ江戸のみとこしえに栄えようか。瓦解の日こそ満願成就、死ぬぞ、死ぬぞ、何千何万と死ぬぞ。



 雑誌「ユリイカ」の特集、「ニッポンの妖怪文化」に寄稿した短篇です。

 江戸生まれの鉄太郎は、郡代に任ぜられた父親に伴って草木深い鄙の地に移ったが、少々退屈していた。ある日、ふと思いついて天性寺裏の墓地に入り込んだ彼は、流罪の末に果てた加藤光広の墓を見つける。あわれを覚え手を合わせた鉄太郎に、嘲弄の声がかけられる。
「物知らずのこわっぱが、ほざきおる」
 振り返れば、いましも異形の影が山の奥へと駆けていくところ。若年とはいえ新影流を学んだ鉄太郎は、いざとなれば刀に物を言わせるつもりで、逃がすものかと影を追った……。


 本歌は雨月物語から「白峯」です。
 古来名文中の名文と称えられた白峯にならうのは恐ろしいことですが、初読時は解説付きでもわからなかった白峯が学習を進めるに従って一語一語の意味が明らかになっていった喜びを忘れがたく、今回機会を頂き、及ばずながら本歌取りを試みました。

posted by 米澤穂信 at 00:00| 雑誌等掲載短篇