「文芸カドカワ」2016年10月号(KADOKAWA)収録 発売日:2016年9月10日 |
でもそれは、くるしいことです。 |
電子雑誌「文芸カドカワ」に寄稿した短篇です。
神山高校の漫画研究会は二つに割れていた。自分でも漫画を描く人の部活なのか、それとも専ら読む人の部活なのか、活動方針の違いを巡って対立は日々深まるばかりだった。
そんな中で伊原摩耶花は、漫研の浅沼から同人誌に寄稿しないかと誘いを受ける。部費で同人誌を作り、それを部活の実績として既成事実化することで対立を有利に運ぼうというのだ。自分の漫画が部内の争いに使われることに違和感を覚えつつ、描く機会があるならと伊原は誘いに前向きになる。ただ、寄稿するためには先に何枚描くかを決める必要があると言われ、ページ数確定のために返答はいったん保留することになった。
しかし企みはあっさりと露見し、浅沼たちは部内の承認も得ずに部費を盗もうとしたと糾弾される。新しい部長は、浅沼たちに条件を突きつけた。烏合の衆の同人誌などどうせ完成はしない、企画が失敗したら、混乱の責任を取って全員退部せよ、と……。
漫研内部の対立が泥沼と化していく中でも、伊原は淡々と漫画を描き続ける。しかし状況は彼女の自由を許さなかった。
ある日、伊原の創作ノートが盗まれたのだ。
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