2017年08月04日

『煙の殺意』帯文


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著:泡坂妻夫
装画:松尾かおる
装幀:柳川貴代
出版社:東京創元社

発売日:2001年11月30日
定価:本体740円(税別)
文庫判
ISBN:978-4-488-40217-4



 思い込みをくるりと反転させる手つきのたおやかさは、さすが名人。世界最高のミステリ短篇集です。




 泡坂妻夫の傑作短篇集『煙の殺意』のオビ文を書かせていただきました。
『煙の殺意』は、私が最も愛するミステリ短篇集です。それを広くお薦めできるのは本当に幸せなお仕事で、このような機会に恵まれたことを嬉しく思います。

『煙の殺意』は、「椛山訪雪図」を何より愛していて、「狐の面」もたまらなく好きで、「紳士の園」がすばらしく、「煙の殺意」はもう完璧で、今回読み返して「赤の追想」にしみじみ感じ入り、「閏の花嫁」も良いですが、「歯と胴」もなんとも忘れがたく、「開橋式次第」も賑やかで好きです。

 最初、私は「世界最高級のミステリ短篇集です」と書いていました。しかし推敲するうち、「この『世界最高級』の『級』はいるだろうか。これからさらに素晴らしい短篇集に出会うこともあるだろうし、そうあってほしいものだけれど、そうした一冊に出会ったときに『煙の殺意』を最高とは言い切れないと思い直すことがあるだろうか」と考え、「いや、そうはならないだろう」と結論づけて、「級」を取りました。
 広く読まれる一助になればと願っています。

posted by 米澤穂信 at 00:00| 解説・推薦・編纂