2018年07月17日

「ない本」


「小説すばる」2018年 8月号
発売日:2018年7月17日


 本を探しているんだ。



「小説すばる」に寄稿した短編です。

 三年生が自殺した。死者の名はいくつも説があり、自殺の方法も幾通りも噂された。
 図書委員の堀川と松倉は、今日も今日とて利用者の少ない図書室で、少しは図書委員らしいこともしたいものだと愚痴を言いながら当番を務めていた。そこに来た三年生が、「本を探している」と言ってきた。
 喜び、どんな本を探しているのかと訊く堀川に、三年生は言う。死んでしまったクラスメートが、最後に読んでいた本を知りたい……。

 三年生は、コンピュータかなにかで簡単に貸出履歴が見られると思っていたようだが、貸出システムは履歴を見られるようになっていないし、そもそも図書委員はそういう問い合わせに答えない。
 しかし、探している本の特徴がわかるなら、探しものの手伝いは出来る。そう伝えると、三年生は本の特徴を一つずつ思い出し始める……。

 手がかりは読者の手の中にあります。
(電子書籍の場合は、ちょっと難しいかもしれませんが)

posted by 米澤穂信 at 00:00| 雑誌等掲載短篇