2020年06月22日

「里芋病」


掲載誌:「小説現代」
発売日:2020年6月22日


 あなたのためを思ってという言葉は、相手を制御したいという毒をどこかに潜ませている。けれど私たちの場合は違うはずだ。



「小説現代」に寄稿した掌編です。

 妻は死を恐れる。自分自身のそれをではなく、身近な人に死の影が射すことをひどく怖がる。
 だから私は、妻に話すことが出来ない。――自分がしばしば、奇妙な汗をかくことを。
 私はこの汗をかく症状をもたらす何かを、「里芋病」と呼んでいる。


「day to day」に寄稿した「ありがとう、コーヒーをどうぞ」とたぶん同じ日の、別のふたりのお話です。

posted by 米澤穂信 at 00:00| 雑誌等掲載短篇