掲載誌:「ミステリーズ!」(東京創元社) 発売日:2020年12月21日 |
わたし、誰にでも公平でありたいと思ったことは、一度もない。 |
船戸高校出身の芸術家縞大我が、サンフランシスコ美術展で特別賞を受賞。全国紙でも報道され、テレビでも取り上げられる騒ぎとなり、市はにわかに活気づく。そんな中、小鳩常悟朗は新聞部の堂島健吾から頼みごとをされる。いわく、
「小佐内を紹介してくれないか?」
新聞部員の健吾は、縞大我の学生時代の活動を調べるうち、縞が残した絵を見つけたのだ。だがそれはロシアの画家の絵にそっくりだった。練習のために模写したのかと思われたが、どうやらこの絵は県展に出展されていたらしい。
この絵は剽窃なのか? 健吾は卒業生の成功を祝うつもりで、彼の旧悪を暴いてしまったのか?
剽窃ではないと言える理由が、何かひとつでも見つからないか。健吾は藁にも縋る気持ちで、かつて絵にまつわる謎を解いた(ことになっている)小佐内を頼ろうとしている。
相談を受けた小佐内は言う。
「いやです」
まあ、そうだよね、と小鳩は思う。小市民たらんとする小佐内ゆきが、どうして鑑定士のまねごとをしなければならないのか。だけどそこはそれ、人情というものがあるじゃないか!
ふたりは紆余曲折の末、絵の正体に迫っていく。
謎のカギを握るのは――サンフランシスコ生まれのにくいやつ、フォーチュンクッキー。
調査と捜査の面白さを描ければと思った短編です。
お楽しみいただければ幸いです。
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