掲載誌:「オール讀物」(文藝春秋) 発売日:2021年1月22日 |
人間の観察力と記憶力はあいまいなものだ。時に誤り、時に正確になる。葛は、二人の目撃者の証言が一致したとしても疑問には思わなかっただろう。三人の言うことが同じだったら、少し疑う。そして四人がまったく同じ証言をしたとなれば、それを頭から信じることなど出来はしない。 |
「オール讀物」に寄稿した短編です。
強盗傷害事件が発生し、特別捜査本部が設置された。被疑者は数人、中でも特に容疑が濃厚な男がいる。刑事にマークされていた彼は、深夜三時、交通事故を起こした。
現場の交差点には信号機があった。もし被疑者が信号を無視したのであれば、公明正大に逮捕できる。葛警部は事故の目撃者を探すよう、指揮下の刑事たちに名じる。そして、目撃情報は集まった……いともたやすく、充分な数が。
ハードワークゆえの睡魔に襲われながら、しかし葛はひっかかりを覚える。深夜三時の事故に四人の目撃者がいて、その証言が大枠で一致することがあり得るだろうか。
深夜三時、強盗被疑者は何をしていたのか。証言者たちは何を見て、何を見なかったのか。彼らに繋がりはあるのか?
葛は、逮捕しないための裏付け捜査を命じ、自らは推理に没頭する。
ミッシングリンク!
せっかくですから、葛警部に先んじて「共通項」の正体を当てられるか、試していただければ幸いです。
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