2020年08月07日

「バラ法」


掲載誌:「群像」(講談社)
発売日:2020年8月7日


「豚バラの角煮じゃん」
「じゃん、と来たか……」
「豚バラは禁止じゃなかったっけ」
 在宅勤務に従い通勤の負荷が軽減され、「夫に貫禄がつき、人が丸くなってきたことに対する緊急の措置として」豚肉はバラを禁ずると妻が宣言したのは、わずか三日前のことであった。



 豚バラの角煮を食べるだけの話です。
 本当にそれだけです。


「day to day」に寄稿した「ありがとう、コーヒーをどうぞ」、「小説現代」に寄稿した「里芋病」とたぶん同じ日の、別のふたりのお話です。
 実はこの三篇、同時に書いたのです。おそれに満ちた世相の中で、自宅で読めるものを……という「day to day」の趣旨に賛同し、かなしくない、平凡なものを書いています。

posted by 米澤穂信 at 00:00| 雑誌等掲載短篇