掲載誌:「週刊新潮」(新潮社)2021年12月2日号〜12月23日号 |
高校生の時、わたしの恋人がわたしと姉を見比べて、「どうして?」と言い放ったことがある。まったく、どうして、である。その頃のわたしには、姉とわたしが姉妹であるという事実こそが世界の理不尽さそのものだった。それはそれとしてわたしはそいつを殴って交際を終わらせた。 |
小さな町工場に生まれた姉妹。姉は美しく、妹は、いずれ自分も姉のように美しくなるのだと思っていた。時は流れ、生きることを喜んでいない姉と、たくましく人生を切り開く妹の道は、思いがけないところで交差する。
そして妹は、姉「で」人を殺すことになる。