2005年10月12日

「シャルロットだけはぼくのもの」


「ミステリーズ!」(東京創元社)vol.13収録
雑誌発売日:2005年10月12日 雑誌定価:1200円(本体)



 全てはこの忌々しい暑さのせいだ。ぼくはそう決めた。何もかもがいつも通りだったら、ぼくはこんなことを考えはしなかったに違いない。




 雑誌「ミステリーズ!」の2005年10月号に掲載された短篇です。
『春期限定いちごタルト事件』の続編です。いちごタルト事件の後、小鳩と小佐内はおとなしく毎日を送っていました。一年後の夏、彼らの高校二年生の夏休みが物語の舞台です。

 夏休み早々、小鳩は小佐内に頼まれ、ケーキを小佐内に買って行くことになります。しかし、四つ買って来てくれとたのまれたシャルロットが、店には三つしか残っていませんでした。
 自分が一つ、小佐内が二つ食べればいいと考えていた小鳩ですが、いざスプーンをつけてみるとこれが絶品。是非とも自分が二つせしめたいと考え始めます。幸い、小佐内は電話で席を外しています。自分が既に一つ食べてしまったことを隠しおおせることが出来れば、小佐内には「二つしか売ってなかった」と説明し自分が二つ目にありつくことが出来ます。
 小鳩はテーブルを睨みます。「ケーキが三つあった」ことを隠すには、やらなければならないことがいくつかあります。もし工作に隙があれば、小佐内はたやすく「三つ目」の存在を見抜くでしょう。
 小佐内はいつ電話を終えるとも知れません。残された時間は僅か。小鳩は自らの犯行を糊塗するため、脳を働かせます。

 倒叙です。
 犯人は小鳩。犯罪は、小佐内のものであるべきシャルロットを食べてしまったことです。
 身の毛もよだつ大罪。そして、さらに恐るべきことに、倒叙ミステリは探偵によって犯罪が露見することをほとんど運命づけられているのです。
 小鳩は何を隠し、何を隠さなかったのでしょうか。


*『夏期限定トロピカルパフェ事件』に収録済


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posted by 米澤穂信 at 00:00| 雑誌等掲載短篇