2007年05月12日

「あきましておめでとう」


「野性時代」(角川書店)43号収録
雑誌発売日:2007年5月12日
雑誌定価:840円



「なんで、こんなことに」
「そうですね。たぶん……」
 暗がりの中で、千反田が笑った気がした。
「おみくじが悪かったんじゃないでしょうか?」




 雑誌『野性時代』に掲載された短篇です。
〈古典部〉シリーズです。

 新年、めでたい元日。
 ところが折木奉太郎は、一年のしょっぱなからなかなかの奇禍に遭います。初詣のついで、ちょっとしたお使いで境内の納屋に入ったところ、通りがかりの誰かに外側から鍵をかけられてしまったのです。
 もし、閉じ込められたのが折木だけなら、話は簡単でした。「開けてくれ!」と大声を上げれば、初詣でにぎわう神社のこと、誰かは来てくれるでしょう。しかし彼には、大声を出せない理由がありました。――折木と一緒に、千反田までもが閉じ込められていたのです。断じて、誤解されるわけにはいきません。
 折木は大声を封じられたまま、鍵のかかった納屋からの脱出を試みます。急がねばなりません。早く脱出しなければ……。
 寒さに弱い折木は、凍えてしまうでしょう。

 目指せ大脱出。


*『遠まわりする雛』に収録済


タグ:〈古典部〉
posted by 米澤穂信 at 00:00| 雑誌等掲載短篇