2008年06月12日

「連峰は晴れているか」


「野性時代」(角川書店)56号収録
雑誌発売日:2008年6月12日 雑誌定価:840円



 放課後に、ヘリが飛んで来た。
 ぱらぱらという回転音が近づいてきて、驚くほど近くなって、なかなか去らなかった。あんまり長く頭上にいるので、もしかして校庭に下りるのかとさえ思い始めた頃、ようやくのことで遠ざかっていった。




 雑誌『野性時代』に掲載された短篇です。
〈古典部〉シリーズです。

 放課後の地学講義室には、古典部の四人が揃って思い思いの放課後を送っていました。突然聞こえてきたヘリの音に、四人の注意は引きつけられます。やがてヘリが去った後、折木はふと思いだして言いました。「小木が、ヘリ好きだったな」。
 彼が言っているのは中学校の英語教師のことでしたが、同じ中学出身の二人、福部と伊原は首を傾げました。そんな記憶はないというのです。
 会話と記憶をすり合わせていくうち、折木はある可能性に気づきます。たった一度だけ「ヘリが好き」になった教師。彼にその日、何があったのか。
 折木はそれを知るため、市立図書館に向かいます。

「記憶の中の殺人」というパターンも、挑戦し甲斐がありそうです。
 あ、本作には、殺人は関係ありません。

タグ:〈古典部〉
posted by 米澤穂信 at 00:00| 雑誌等掲載短篇