2009年05月21日

かなしい食事をしました

 昨日はかなしい食事をしました。


 近くの街で、ビストロが撤退しました。
 店内には二人がけの椅子しかないという、お一人さまはおろか団体さまも完全否定という強気設定のお店でした。味が特に良かったという記憶はありません。量が少なかったことは憶えています。あとキッシュが品切れだったのも。
 潰れたのか、より良い立地の店に引っ越したのかはわからりませんが、とにかくお二人さま専用のビストロはもうありません。
 後釜に入ったのがドンブリ飯屋でした。イッツジャンク。でもラブリー。
 というわけで行ってきました。

 結論として、とてもかなしい思いをしました。
 カウンターには白木を使っていますが、開店一週間も経っていないだろうに、盛大にひびが入っています。わざわざ選んだとは思えません。悪い建築会社が粗悪な木を使ったのでしょう。
 店内に客は少ないのに、店員が五人もいます。二人で充分回っていくはずなのに。
 具は揚げ物、それもただ一種類。揚げ物は薄く、タレに浸けたものがご飯に乗っていました。
 それだけ。
 ソースのかかった薄っぺらい一種類の揚げ物がドンブリ飯に乗っているだけです。
 素朴さの言い換えとしての「おふくろの味」ですらありません。あれは「まかないの味」でした。 値段は1000円。そして斜め向かいの店は牛丼チェーン店!


 ぜったい潰れる。この店、一年以内に絶対潰れる。


 夢を持って開いた店が潰れるのは、いつもかなしいものです。しかし多くの場合マズイ店が潰れるので、「仕方がなかった」という気にもなります。
 ところが昨日の夕食がとりわけかなしかったのは、そのまかない飯のような丼が、意外にもかなりおいしかったからなのです。

 味だけで米の品種がわかるほどいい舌を持ってはいませんが、かなり上等な米を使っていることぐらいはわかります。ジャンクなドンブリ飯屋で「米がうまい」と思ったのは初めてです。揚げ物も、少々単調で最後には食べ飽きしましたが、おいしい部類に入るものでした。

 問題は、本当にこれが最大の問題なのですが、見た目が「ご飯の上に一種類の揚げ物が乗ってるだけ」だということです(三回目)。ドンブリ飯に近所のスーパーで買って来たアジフライを乗せたのと変わりありません。アジフライに文句は何一つありませんが、それを外食で食べようとする人が多いでしょうか?
 ああ神よ、せめて、揚げ物とご飯の間に千切りキャベツを挟むだけでも全然印象が違うでしょうに!


 新規開店の店で、心の内で追悼の辞を述べながら、おいしいものを食べる。
 昨日は本当に、かなしい食事でした。
posted by 米澤穂信 at 16:10| 近況報告