2012年04月25日

『追想五断章』


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(四六判)
著:米澤穂信
装画:小泉孝司
装幀:芥陽子(note)
出版社:集英社

発売日:2009年8月26日
定価:本体1,300円
四六版上製
ISBN:978-4-08-771304-6

(文庫判)
著:米澤穂信
写真:@Walter B.McKenzie/Getty Images
@KOUTAKU/orion/amanaimages
装幀:泉沢光雄
解説:葉山響
出版社:集英社

発売日:2012年4月20日
定価:本体495円
ISBN:978-4-08-746818-2



 僕は己の掌篇を捨てねばならぬ。そう思い、僕は自分の楽園の片隅に焚き火を設けた。原稿用紙の束を投げ込んで、あの事件の全てを引き受け、死ぬまでの沈黙を誓うつもりだった。本当にそうするつもりだった。




 十四冊目です。

 武蔵野の古書店に居候する菅生芳光は、冬のある日、本を探してほしいという依頼を受けます。依頼主の名は北里可南子。ただ一篇の小説を求めて松本から来たのだという彼女は、首尾良く目当てのものを探し出した芳光に追加の依頼をします。

 二十年以上前に、物陰に隠れるようにひっそりと幾つかの小説を遺した作家、叶黒白。それは可南子の父の筆名でした。
 彼が書いた小説は五篇。奇妙なことに、それはどれも、結末を書かないリドル・ストーリーなのだといいます。そして可南子は、その書かれなかった結末を持っているのだとも。

 失われた小説を探す芳光は、やがて一つのキーワードに行き着きます。
 ――「アントワープの銃声」。
 二十二年前の不審な死が、おぼろに姿を現します。


 長篇ミステリです。
 手紙、雑誌記事、作文、そして失われた五篇のリドル・ストーリー。そうしたさまざまな「残されたテキスト」を素材に、ひとつの小説を書きました。
 花火を上げてアピールするような華々しい変化ではありませんが、これが新境地というものかもしれない、としみじみ思います。
posted by 米澤穂信 at 00:00| 既刊情報