(四六判) 著:米澤穂信装画:小泉孝司 装幀:芥陽子(note) 出版社:集英社 発売日:2009年8月26日 定価:本体1,300円 四六版上製 ISBN:978-4-08-771304-6 (文庫判) 著:米澤穂信写真:@Walter B.McKenzie/Getty Images @KOUTAKU/orion/amanaimages 装幀:泉沢光雄 解説:葉山響 出版社:集英社 発売日:2012年4月20日 定価:本体495円 ISBN:978-4-08-746818-2 |
僕は己の掌篇を捨てねばならぬ。そう思い、僕は自分の楽園の片隅に焚き火を設けた。原稿用紙の束を投げ込んで、あの事件の全てを引き受け、死ぬまでの沈黙を誓うつもりだった。本当にそうするつもりだった。 |
十四冊目です。
武蔵野の古書店に居候する菅生芳光は、冬のある日、本を探してほしいという依頼を受けます。依頼主の名は北里可南子。ただ一篇の小説を求めて松本から来たのだという彼女は、首尾良く目当てのものを探し出した芳光に追加の依頼をします。
二十年以上前に、物陰に隠れるようにひっそりと幾つかの小説を遺した作家、叶黒白。それは可南子の父の筆名でした。
彼が書いた小説は五篇。奇妙なことに、それはどれも、結末を書かないリドル・ストーリーなのだといいます。そして可南子は、その書かれなかった結末を持っているのだとも。
失われた小説を探す芳光は、やがて一つのキーワードに行き着きます。
――「アントワープの銃声」。
二十二年前の不審な死が、おぼろに姿を現します。
長篇ミステリです。
手紙、雑誌記事、作文、そして失われた五篇のリドル・ストーリー。そうしたさまざまな「残されたテキスト」を素材に、ひとつの小説を書きました。
花火を上げてアピールするような華々しい変化ではありませんが、これが新境地というものかもしれない、としみじみ思います。