「小説新潮」2010年9月号(新潮社)収録 発売日:2010年8月23日 雑誌定価:900円 |
二人の娘を得て、私は自分の別の顔に気づいた。 容貌を頼りに誰をも手玉に取り、恋多き女を気取っていた過去が信じられないほど、私は娘たちを愛した。水門が開き堰き止められていた水があふれ出るように、いとおしい気持ちは止まることがなかった。 友人はその変わり様を笑った。 「本当のことを言うと、あんたに愛情があるなんて思ってなかった」 |
雑誌「小説新潮」に掲載された短篇です。
皆川さおりは美しく育ち、その容姿と手管で結婚相手を捕まえます。やがて産まれた二人の娘を、彼女は深く愛します。しかし残念なことに夫は充分な生活能力を備えていませんでした。
成長した娘たちの将来を心配し、彼女は夫との離婚を決めます。
夫は、離婚には同意しました。ただし一つだけ条件を付けて。
親権は自分に。しかしその要求は、娘たちのために離婚を決めたさおりには耐え難いものでした。
親権争いの調停は不調に終わり、審判が始まります。
一方、両親の動向は二人の娘たちにも影を落としていました……。
「小説新潮」2010年9月号には、特集企画というか、雑誌内雑誌として「Mystery Seller」が収録されています。本作はその中の一つに加えていただきました。
取材を通じ、ちょっとだけ離婚手続きに詳しくなりました。
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