2010年12月17日

「死人宿」


「小説すばる」2011年1月号(集英社)収録
発売日:2010年12月17日 雑誌定価:880円



「ちくしょう、死人宿め。これでまた、さぞや繁盛するだろうよ」




 雑誌「小説すばる」に掲載された短篇です。

 かつて職場の人間関係に悩まされ姿を消した恋人・佐和子が、深い山の中で温泉宿の仲居をしているという。それを聞き、私は取るものも取りあえず車に飛び乗った。
 無事に再会した佐和子は、この宿は「死人宿」だと語る。吹き出す火山性ガスのため、死にたい人間はあっさりと死ねるのだと。交通不便な宿がそれなりに繁盛しているのは、浮き世に疲れた人間が最後の晩餐に訪れるからなのだ。

 そしてその晩、佐和子が「私」に助けを求める。彼女が手にしているのは、旅客の落とし物。その中身は遺書だった。
 宿泊客は三人。
 その中に、「死人宿」に遺書を持って来た者がいる……。

「私」は、死のうとしているのは誰なのか考え始める。
 だが情報は限られており、日はみるみるうちに暮れていく。

タグ:『満願』
posted by 米澤穂信 at 16:02| 雑誌等掲載短篇