「小説新潮」2011年5月号(新潮社)収録 発売日:2011年4月22日 雑誌定価:900円 |
この国はいずれ、あの天然ガスを必要とする。一億何千万人というバングラデシュ人が豊かになるためには、エネルギー資源は必ず天井知らずに必要になる。あの資源は、いずれ私の子孫が明かりを点け、食べ物を冷やし、地下水を汲み上げるために使うべきものだ。 |
雑誌「小説新潮」に収録された短篇です。
日本の総合商社・井桁商事は新規事業としてバングラデシュの天然ガスに目をつけ、精鋭スタッフを送り込んだ。彼らはインドとの国境に近い地域を有望と考える。しかし現地は交通の便が悪く、調査は難航した。
安全かつ迅速にプロジェクトを進めるためには、前線に開発拠点が必須だった。地図を検討した結果、小さな農村・ボイシャク村が拠点として最適だとわかる。
しかし、村の長老の一人アラム・アベッドは、物資・人員を置かせて欲しいという井桁商事の要求をすげなく撥ねつけた。そればかりか、送り込まれた社員はリンチされ、重傷を負ってしまう。開発計画は暗礁に乗り上げたかに見えた。
そんなある日、ボイシャク村から手紙が届く。拙い英語で書かれた言葉は短かった。「一人で来い」。
交渉の糸口になるのなら、危険を冒すメリットはある。開発室長は一路ボイシャク村を目指す。
そこでは、自らの仕事の正当性をも問われるような、過酷な運命が彼を待っていた。
「小説新潮」2011年5月号には、マガジン・イン・マガジンとして「Story Seller 2011」が入っています。本作はその中に加えて頂きました。
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