「ミステリーズ!」vol.47 2011JUN(東京創元社)収録 発売日:2011年6月12日 雑誌定価:1,200円 |
そんな言葉に、いつまでも囚われていてはいけない。忘れなさい。忘れるしかないのよ。 |
雑誌「ミステリーズ!」に寄稿した短篇です。
福岡県鳥崎市で、一人暮らしの老人・田上良造が死亡した。死因は餓死と推定される。
第一発見者の檜原京介は高校受験を控えており、学校からの帰り道に死体を見つけた。彼は取材陣に、「いつもは元気な人なのに、何日か姿を見てなかったので、気になっていたんです」と話す。
それは嘘だった。京介は理由があって、田上良造が近々死ぬのではと思っていたのだ。
真実を誰にも告げられないまま、田上の死はニュースとして消費され尽くした。もう誰も彼の話を聞かないかに思われた。
しかし、遺体の発見から二十日後、ルポライターを称する女性が京介に接触してくる。
太刀洗というそのルポライターは、田上良造の人となりを追っていた。
人に言えなかったわだかまりを解くためには、田上がなぜ一人で死なねばならなかったのかを知るしかない。そう考えた京介は、取材に同行させてくれるよう太刀洗に頼み込む。
鍵になる言葉は田上の日記に遺されていた。
『私はまもなく死ぬ。願わくは、名を刻む死を遂げたい』
今際の願いは叶えられたのだろうか。
日本推理作家協会賞受賞第一作となります。