「オール讀物」2011年7月号(文藝春秋)収録 発売日:2011年6月22日 雑誌定価:1,000円 |
豊子が自分を愚図だと思い始めたのは、六歳の頃である。 |
「オール讀物」に寄稿した短篇です。
豊子は三人の子供に恵まれた人生を送り、生涯連れ添った夫に看取られて逝った。
死の間際に、彼女は自分の夢を見た。悪いこともあった。良いこともあった。
最期、豊子はずっと忘れていた疑問を思い出す。もう何十年も前、見合いで夫と結ばれたすぐ後のこと。夫は豊子にこう言ったのだ。
「茄子のような嫁だよ」
夫が豊子を評した、たったひとつの言葉だった。
あれはどういう意味だったのだろう?
誌上での推協賞発表・選評掲載に合わせて書きました。