「小説新潮」2012年5月号(新潮社)収録 発売日:2012年4月21日 雑誌定価:952円 |
煙草の脂で黄色く汚れ、線香の煙に混じってどぶ川の匂いさえ漂ってくるような六畳間が、俺の告解室だった。 |
雑誌「小説新潮」に寄稿した短篇です。
国道60号線沿いに建つ交番に、警察学校を出たばかりの新人、川藤浩志が配属された。
交番長の柳岡は、新人を一見して嫌な予感を覚える。警官には向かない男……。その予感は、川藤の仕事ぶりを見る中で確信に変わっていく。
しかし柳岡には、かつて未熟な新人警官を厳しく指導し、失敗した過去があった。
川藤がいずれ道を踏み外すとしても、自分は口を出すまい。そう決めて数ヶ月、事件が起きる。
ある秋の夜。これまで幾度も夫の不審行動を訴えていた田原美代子から、110番通報が入った。柳岡たちは万が一に備え防刃ベストを着込み、現場の民家へと急行する。
呼べども返事がない家からは、時折悲鳴が響く。
警官たちは警棒を構え、現場へと突入していく……。
そして柳岡は回想する。
二階級特進した川藤警部補。やはり、あいつは所詮、警官には向かない男だった、と。
「小説新潮」2012年5月号には、マガジン・イン・マガジンとして「Story Seller 2012」が入っています。本作はその中に加えて頂きました。
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