「小説新潮」2013年5月号(新潮社)収録 発売日:2013年4月22日 |
はい。雨の日も風の日も来ておりますから、もちろん知っていますよ。 |
雑誌「小説新潮」に寄稿した短篇です。
「都市伝説」で一本記事を書くことになったライターが、タネに困り果て、先輩の元を訪れる。面倒見の良い先輩は、ライターに伊豆半島で連続している事故について教える。これを亡霊の仕業にでもすれば、記事は一本出来上がると思われた。
しかし先輩は、ふと思い出したように表情を曇らせる。
「いや、やっぱりそれはやめた方がいいかもしれない。そいつは、ホンモノだって気がするんだ」
桂谷峠を通る者は、あるカーブを曲がりきれずに落ちて死ぬ……。
先輩の不安を一笑に附し、ライターは取材へと出かけていく。小田原から三時間、夏の日のことだった。
そうして訪れた桂谷峠の名も無きドライブインで、ライターは店をやっている老女に話を聞くことにする。
老女はこっくりと頷き、事故のことなら知っていると告げた。
「雨の日も風の日も来ておりますから」
と。
「小説新潮」2013年5月号には、マガジン・イン・マガジンとして「Story Seller 2013」が入っています。本作はその中に加えて頂きました。
タグ:『満願』