2013年10月22日

「黒い網」


「オール讀物」2013年11月号(文藝春秋)収録
発売日:2013年10月22日 雑誌定価:1,000円



 正直、偶然だとは思えない。河崎さんは上谷さんの恨みを買っていたし、滝山さんにも迷惑をかけていた。




 雑誌「オール讀物」に寄稿した短篇です。

 過疎により一度は無人となった蓑石地区だったが、市長ご執心の「よみがえれ! みのいし」プロジェクトによって居住者を全国から募り、集落としての実態を回復した。
 しかし選考を経たにもかかわらず、理想的な居住者ばかりとはいかなかった。たとえば河崎由美子は、近隣住人・市役所職員の別なく、気に入らないことがあれば猛然と食ってかかるのだった。

 ある日、蓑石で「秋祭り」が計画される。
 市役所職員である垂水は、部下の観山と共に秋祭りに参加した。表向きはゲストとして、その実、労働力として。
 野外パーティーの様相を呈する「秋祭り」で、垂水は曲がりなりにも活気づく蓑石居住者たちを眺め、ふと感慨にふけった。
 しかし、そこで非常事態が起こる。河崎由美子が突然倒れたのだ。

 救急車で運ばれ、河崎由美子は命に別状なく回復へと向かう。どうやら原因は毒キノコらしい。
 報告書を書きながら、垂水はふと思う。……河崎由美子は、本当に偶然、毒キノコを手にしたのか?
 それとも、大皿料理ばかりで誰もが自由に飲食物を手に取っていた「秋祭り」会場で、河崎由美子にだけ毒キノコを手に取らせる方法が、もしかすると何かあったのだろうか……? 


 割と屈託なくミステリを書いています。
軽い雨」とはシリーズになっていますが、本作からお読みいただいても支障はありません。

タグ:〈甦り課〉
posted by 米澤穂信 at 00:00| 雑誌等掲載短篇