2024年04月26日

『冬期限定ボンボンショコラ事件』


(記事作成中)

タグ:〈小市民〉
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2023年10月25日

2023年07月25日

『可燃物』


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(かねんぶつ)


著:米澤穂信
装幀:野中深雪
出版社:文藝春秋

発売日:2023年7月25日
定価:1,700円(税別)
四六判上製
ISBN:978-4-16-391726-9



打てる手は全部打つというわけだな。いいだろう。



 28冊目です。

 遭難したスノーボーダーが発見された。一人は重傷、そしてもう一人は死体となって。県警葛班は捜査本部に加わり、殺人容疑で捜査を開始する。犯人はわかっている、だが、凶器がない……。
 雪降る崖下の、凶器なき殺人。――「崖の下」

 強盗致傷事件が発生。犯人の「稼ぎ」は少額で、事件は続発するおそれが大きい。強行軍で捜査する捜査本部に、最有力被疑者が交通事故を起こしたという一報が入る。
 葛の前に現れたのは、あまりにも好都合な証言者たちだった。――「ねむけ」

 花咲く行楽地で、切り刻まれた死体が発見された。捜索が行われ、死体の部位は次々に発見される。遺体の身元も判明し、捜査は着々と進展するが、葛は事件の全体像とかみあわない一点を決して看過しなかった。すなわち……犯人はなぜ、死体を刻んだのか?――「命の恩」

 強風地帯で連続放火事件が発生する。葛班が捜査に乗り出すが、その途端犯行は停止した。捜査員の存在がばれたのか? でなければ……。
 カギは、この街でかつて発生した、痛恨事の中にある。――「可燃物」

 県警本部に帰還中の葛班は、急遽、移動経路上で発生した立てこもり事件の応援に駆けつける。避難は完了しているか、負傷者はいないか、現場の建物の構造は……情報を収集する葛班の前に、立てこもり犯が姿を見せる。その手には「拳銃」が。――「本物か」

 部下も、上司も、自分の立場も未来もすべて眼前の事件解決のために注ぎ尽くして悔いない葛警部が、人智の限りを尽くして挑んだ事件集です。
 警察ミステリをお届けします。推理をお楽しみ頂ければ、幸いです。

タグ:〈葛警部〉
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2023年03月02日

『愛蔵版〈古典部〉シリーズI 氷菓・愚者のエンドロール』


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(あいぞうばん こてんぶシリーズ 1)


著:米澤穂信
出版社:KADOKAWA

発売日:2023年3月2日
定価:4,500円(税別)
四六変形判
ISBN:978-4041124604



きっと十年後、この毎日のことを惜しまない。



〈古典部〉シリーズの愛蔵版が刊行されることになりました。
 初刊時、書店に勤務していた私は『氷菓』の売り上げデータを見て、これでは作家という仕事を続けていけまいと思いました。
 その後、角川文庫から再刊されてから今日に至るまで、多くの読者に愛していただき、大切にしていただいて、〈古典部〉は恵まれたシリーズへと育って行きました。思いもかけなかった、しあわせなことです。
 そして今日、愛蔵版の刊行に至りました。ありがとうございます。

 今回愛蔵版の刊行に当たって、以下の二編を追加しています。

 一つ目は、『プールサイドにて』です。
 これは〈古典部〉シリーズが『氷菓』の題名でアニメ化された時、特典エピソードとして作成された『持つべきものは』の原案を、改めて小説の形で書き直したものです。
 夏休みの一日を描いた、〈日常の謎〉です。

 二つ目は、『クリスマスは箱の中』です。
 これは新人賞への応募原稿『ありうべきよすが』(という題名だったのです)に含まれており、『氷菓』への改稿時に編集者さんとご相談の上で削除した、暗号ミステリです。
 私はこのお話を、アニメ版『氷菓』のBD-BOXに収録されるコミック特典の原作として再構成しました(後にコミック版『氷菓』の11巻に収録されています)。
 今回、このエピソードを改めて小説の形に書き直しました。
 クリスマスを巡る、古典部四人の小さな謎解きです。

 お楽しみ頂き、ご愛蔵いただけますよう、心から願っています。

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2022年11月04日

『栞と嘘の季節』


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(しおりとうそのきせつ)


著:米澤穂信
装幀:坂野公一(welle design)
出版社:集英社

発売日:2022年11月10日
定価:1,650円(税別)
四六判仮フランス装
ISBN:978-4-08-771813-3



わたしたちは切り札を持たなきゃいけなかった



 27冊目です。

『本の鍵と季節』の続編です。
 松倉詩門が図書室に来なくなり、堀川次郎は図書委員の仕事を続けつつ、友を待っていた。そして彼は帰ってきた……不在の期間など、ただの一日もなかったかのように。そして二人は元通り、放課後の図書委員としての務めを再開する。だが、いつもの業務は、いつものようには始まらなかった。
 返却本に挟まっていた、忘れ物の栞――松倉はそこに用いられている花が、猛毒のトリカブトだと気づく。余計なお世話かもしれないが、栞の持ち主にひとこと、これは毒だと教えた方がいいかもしれない。堀川と松倉がそう考え、栞を特別な場所に隠した時、彼らはこの街で静かに始まっていた事件にかかわってしまった。

 栞は、誰が何のために作ったのか。同学年の瀬野を加え、三人は毒と嘘の迷路に踏み込む。
 そして、誰にも知られないはずだった過去が、あばかれてゆく。

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2021年11月10日

『米澤屋書店』


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(よねざわやしょてん)


著:米澤穂信
装幀:大久保明子
出版社:文藝春秋

発売日:2021年11月10日
定価:1,700円(税別)
四六判上製
ISBN:978-4-391452-7



 読書という大海の前ではとんだ蛙ではありますが、蛙も時には真の宝に巡り会うことはあったのだと思し召し頂ければ幸いです。



 26冊目です。

 これまで25冊の本を書くかたわら、折に触れて書いてきた読書に関するエッセイが、どうしたわけか一冊にまとまって本になりました。
 しょせんミステリや小説について当を得たことは言えそうもない私ですから、出来ることは、ただ楽しそうに読むさまをお見せすることばかりです。
 せっかくの機会ですからおすすめのミステリを上げようとしたところ、原稿用紙120枚のおまけとなりました。
 ついでに、ところどころに註釈を加えて幅広い世界へのいざないにしようとたくらんだところ、こちらは180枚相当となりました。

 お楽しみ頂ければいいのですが。そして……。
 どこかの誰かが生涯の一冊に巡り会う、その小さなお手伝いになれば、本望です。

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2021年06月02日

『黒牢城』


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(こくろうじょう)


著:米澤穂信
装幀:岩郷重力+WONDER WORKZ。
出版社:KADOKAWA

発売日:2021年6月2日
定価:1,600円(税別)
四六判上製
ISBN:9784041113936



罪は我にある



 25冊目です。

 天正六年、冬――。
 織田家から摂津一国を任されていた荒木村重が、突如、叛旗を翻す。村重を説得するべくその居城・有岡城を訪れた黒田官兵衛はその智謀を危ぶまれ、囚われて地下牢に入れられる。
 数万の織田勢に囲まれた有岡城という密室に閉じ込められ、人の心はいつまでも平静ではいられない。一人の死が、一つの首が、一口の壷が、城内の将兵、そして民の心を動揺させる。村重は人心を収攬するため、智略を尽くして難題に立ち向かう。
 だがそれでも解き得ぬ謎が残った時、村重は、この有岡城にあってただひとり村重を上まわる知恵者、播磨にその人ありとうたわれた知将、もう二度と会うこともないと思っていた黒田官兵衛に答えを求めるため、ひとり地下牢へと降りていく。

 地上には戦雲がたなびき、地下では、二人の武士が心底を読み合う。
 修羅の世の果てに、救いはあるか。


第12回山田風太郎賞受賞作
第166回直木三十五賞受賞作
第22回本格ミステリ大賞受賞作
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2020年01月30日

『巴里マカロンの謎』


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著:米澤穂信
装幀:岩郷重力+WONDER WORKZ。
出版社:東京創元社

発売日:2020年1月31日
定価:620円(税別)
文庫判
ISBN:978-4488451110



わたしがあなたを、助けてあげる。



 24冊目です。

 小市民を志す高校一年生、小鳩常悟朗と小佐内ゆき。自分たちの住む街では羊の着ぐるみをかぶる二人が、東海道本線に乗って名古屋におでかけ。
 トラブル回避のための注意深さも禍根を残さないための慎重さもお出かけ先ではいったん棚上げし、おいしくマカロン(などなど)を賞味するだけの小市民の休日には、特筆すべきことなど何も起こらない……はずだった。



巴里マカロンの謎
 新規開店のパティスリーに馳せ参じた小佐内(と小鳩)。三種類のマカロンが試せるティー&マカロンセットを注文したのに、皿にはなぜか四つマカロンが乗っていた。
 どれが招かれざるマカロンかを当てることは、小鳩と小佐内には難しいことではない。けれど、問題はそれで終わらなかった――増えたマカロンの中から何かが出てきた。なんと、金の指輪だ。

紐育チーズケーキの謎
 名古屋で知り合った中学生、古城秋桜に招かれて、小鳩と小佐内は文化祭にやって来た。別行動を取った二人だったが、小佐内が三人組の男子生徒に言いがかりをつけられ、拉致されてしまう(n年ぶりm回目)。
 三人組の言い分はこうだ――小佐内は、三人組が捜している「あるもの」を手に入れ、どこかに隠したはずだ。小鳩は小佐内救出のためという建前で、小佐内が隠した「あるもの」の所在を推理する。

伯林あげぱんの謎
 アンケートを届けに新聞部の部室を訪れた小鳩は、知人の堂島健吾から相談を持ち掛けられる。「世界の年越し」についての特集記事を書くため、新聞部はベルリーナープファンクーフェンを手配し、その中の一つにマスタードを仕込んだ。参加した部員は四人、だがベルリーナープファ……あげぱんを食べた四人の誰一人、マスタード入りに当たったとは言いださなかったのだ。しかし誰かは「あたり」のあげぱんを食べたはず。それは誰か。なぜそう言えるのか?

「花府シュークリームの謎」
 正月を迎え、小佐内はおしるこを食しながら、新年は些事に妨げられることなく心行くまで甘味を楽しめる一年になるよう祈念していた。しかしそんな彼女の思惑をあざ笑うように携帯電話に着信が入る。古城秋桜が停学になったというのだ――まったく身に覚えのない罪状で!
 誰が自分に罪を着せたのかを知りたいと、古城は言う。小鳩と小佐内はそんな古城に覚悟を問う。本当に知りたいのか? ……何を犠牲にしても? 古城が頷いた時、小市民ふたりの捜査が始まる。



「小市民の休日」をコンセプトにした、中篇集です。
 地元ではそれなりに身を慎む小鳩と小佐内ですが、名古屋では匿名であるのをいいことにいつもよりちょっと気軽に推理をして、起きている事件の表面にあらわれた謎だけを解き、その推理によって関係者の人間関係がかき乱されたことにはノータッチで、謎を解いた満足感を胸に東海道本線で帰っていきます。

 どうかと思います。

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2019年09月26日

『Iの悲劇』


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著:米澤穂信
装幀:大久保明子
出版社:文藝春秋

発売日:2019年9月26日
定価:本体1,500円(税別)
四六判上製
ISBN:978-4163910963



みのいしへようこそ!



 23冊目です。

 徐々に人口が減り、とうとう最後の一人が去って無人になった旧・簑石村。そこに、市長肝いりのIターン推進プロジェクトで延べ十二世帯が移り住んでくる。よみがえるはずだった簑石では、しかしなぜか、奇妙な謎が絶えない。
 プロジェクトを担当する市役所「甦り課」は、本来の業務のかたわら、謎の解明に奔走することになる――でないと、せっかくの移住者が去ってしまう!

 小さな村で繰り広げられる密室、失踪、服毒その他もろもろの謎に挑むのは、「甦り課」に属する三人の公務員。一人は学生気分が抜けきらない新人、観山。一人は煙草を吸ってくると言って出て行くと三十分は戻ってこない課長、西野。苦労は必然的に最後の一人、万願寺にのしかかる。
 移住者のため万願寺は走り続ける、簑石が甦るその日まで、さもなくば異動の辞令が下るまで。





「Iの悲劇」
 序章です。みのいしへようこそ!

軽い雨
 先行して移住してきた二世帯のあいだに、早くも緊張がみなぎる。ある晩、一方の家で小火が起きた。対立する家の住人が放火したと考えれば辻褄が合うが、彼のアリバイは万願寺と観山自身が証明している……。

「浅い池」(書き下ろし)
 簑石に事業を興そうと、ある移住者が鯉を育て始める。ある日、出張中の万願寺に電話がかかってきた。助けて、閉ざされた空間からなぜか鯉が減っている! 万願寺は電話の内容から、密室の謎に挑む。

重い本
 単著も出している歴史研究家が、近所の子供と仲良くなった。夏のある日、「本の小父さん」のところに遊びに行くと言ったまま、子供が行方不明になる。歴史研究家は留守、家は完全に施錠されているが……。

黒い網
 住人達の親睦を深めるため、秋祭りが計画される。当日、それなりに楽しい時間が流れる中、突然一人が倒れてしまう。ただの食中毒か? 一服盛る機会は誰にもなかったはずだから……本当に?

「深い沼」(書き下ろし)
 万願寺の実家で法事が営まれることになり、参加人数を確定させるため、万願寺は弟に電話をかける。短い対話の章。

白い仏
 村に円空が彫った仏像があることを知った住人が、それを観光の起爆剤にしたいと主張。地権者から仏像を預かっている住人は、この仏は自分が守ると主張し譲らない。緊張の中、万願寺に「祟り」が降りかかる。

「Iの喜劇」
 終章です。真相へようこそ。





 ユーモアとペーソスを両輪にした、ミステリ連作です。
 解決は少々困難かもしれません。

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2018年12月14日

『本と鍵の季節』



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著:米澤穂信
装幀:坂野公一(welle design)
出版社:集英社

発売日:2018年12月14日
定価:本体1,400円(税別)
四六判仮フランス装
ISBN:978-4-08-771173-8


 22冊目です。

 堀川次郎。高校二年生、図書委員。
 松倉詩門。高校二年生、図書委員。
 図書当番の時だけ顔を合わせる二人は、放課後のつれづれに江戸川乱歩「黒手組」の暗号を解いたことから先輩に見込まれ、謎を解いてみないかと持ちかけられる。
 それははからずも、学校の中、そして外で彼らが挑んでいく数々の謎の、最初の一つになった。

 民家の書斎で、繁華街の美容院で、夕暮れ時のアパートで、そして放課後の図書室で……。いくつもの謎を解くうちに、二人の男子はお互いを知り、そしてお互いを知っていないことを知る。
 冬の近いある日のこと。松倉が、堀川にこう話しかけた。
「昔話でもしようぜ」
 そして、彼ら自身の事件が始まる。

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2018年08月31日

『王とサーカス』


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(文庫判)
著:米澤穂信
解説:末國善己
装幀:岩ク重力+K.K
出版社:東京創元社

発売日:2018年8月31日
定価:本体860円(税別)
文庫判
ISBN:978-4-488-45110-3




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KINGS AND CIRCUSES

著:米澤穂信
写真:岩郷重力+K.K
装幀:岩郷重力+K.K
出版社:東京創元社

発売日:2015年7月29日
定価:本体1,700円(税別)
四六判上製
ISBN:978-4-488-02751-3



信念を持つこととそれが正しいことの間には関係がない




 19冊目です。

 新聞社に勤めていた太刀洗万智は、やむを得ない事情から五年目にして職を辞し、フリーの記者として生きていこうとする。
 雑誌社から紹介された仕事に便乗し、事前取材と休暇を兼ねて何気なく訪れたネパールで、彼女は大事件に遭遇した。入国の翌日、ネパール国王が殺されたのだ。
 伝えることを自らの仕事と考える太刀洗は、カメラを手に取材を始める。突然の大事件に混乱する人々の声を聞き取るうち、彼女は幸運にも、国王殺害の現場近くにいた軍人と会う機会を得る。指定された場所に向かいながら、太刀洗は奇妙な緊張を覚えていた。この取材は、危険なのではないか?
 彼女の予感は当たった。しかし危険は、想像とは別の形で襲ってきた。
 ――太刀洗万智はこの国で、自らの信念を問われることになる。


 長篇ミステリです。
さよなら妖精』とは登場人物の一部が共通していますが、続篇というわけではありません。
 作中で取り上げられる事態の「真犯人」を当てるのは、ちょっと骨が折れる仕事になるでしょう。

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2018年03月23日

『真実の10メートル手前』


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How many miles to the truth

著:米澤穂信
写真:岩郷重力+K.K
装幀:岩郷重力+K.K
出版社:東京創元社

発売日:2018年3月23日
定価:本体680円(税別)
文庫判
ISBN:978-4-488-45109-7




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著:米澤穂信
写真:岩郷重力+K.K
装幀:岩郷重力+K.K
出版社:東京創元社

発売日:2015年12月25日
定価:本体1,400円(税別)
四六判上製
ISBN:978-4-488-02756-8



目とは、そこにあるものを見るための器官ではない。




 20冊目です。

『王とサーカス』の経験を経て、太刀洗万智は一人のフリー記者として歩み始めました。
 彼女の仕事を収めた短篇集をお届けします。

 折を見て書き溜めていた短篇が一冊にまとまりました。
 最初の短編は実に8年前に書かれています。推協賞受賞記念のものや、アンソロジーに向けたもの、機会を見つけて書いてきたものが長篇と同じ年に本になるとは、感慨深い巡り合わせです。


真実の10メートル手前
 失踪したベンチャー企業の広報担当者が、その妹に電話をかけてきた。東洋新聞大垣支局の記者・太刀洗は、電話の内容だけを手がかりに単独インタビューを試み、名古屋駅から特急「しなの」に乗る。

正義漢
 東京都吉祥寺駅で乗客が線路に転落、轢死し、電車は運行を停止した。別ルートを模索するひとびとの中で、不審な動きをする女性がいた。

恋累心中
 三重県の恋累(こいがさね)で、高校生の男女が心中した。現場に向かう週刊誌記者に、上司は取材コーディネーターを手配していた。「癖はあるが、切れるやつだ」。

名を刻む死
 福岡県鳥崎市で、独居老人が亡くなっているのが見つかった。遺体の第一発見者の中学生に、太刀洗が接触を試みる。彼女の取材目標はひとつ、『名を刻む死』とはなにか。

ナイフを失われた思い出の中に
 神奈川県浜倉市で、男子高校生が姪を刺殺したとして自首、逮捕される。その数日後、東欧のある国から男性が浜倉を訪れる。ある思い出のために……。

「綱渡りの成功例」
 長野県南部を襲った台風により、西赤石市は大きな被害を受けた。大きな土砂崩れからかろうじて生き延びた住人に、太刀洗は取材を試みる。なぜ、いまなのか。なぜ、その問いなのか。(書き下ろし)

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2017年10月13日

『米澤穂信と古典部』


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写真:atsushi shimizu+WW
装幀:岩郷重力+K.T
本文デザイン:原田郁麻
出版社:KADOKAWA

発売日:2017年10月13日
定価:本体1,100円(税別)
A5版
ISBN:978-4-04-106051-3


〈古典部〉シリーズのムックであり、気恥ずかしいようにも思いますが、私の個人ムックでもあります。

 2001年の『氷菓』刊行以降、「野性時代」誌で組んで頂いた対談や特集を軸に、いくつかの記事を増補しています。目次は以下の通りです。


Interview 〈古典部〉シリーズ15年のあゆみ
短編 「虎と蟹、あるいは折木奉太郎の殺人」
対談 北村薫――「謎に気付く」醍醐味
対談 恩田陸――こんなミステリが書きたい!
著者による〈古典部〉シリーズ全解説
さらにディープな〈古典部〉隠れネタ大公開!
米澤穂信に30の質問 読者編
あなたの本棚見せてください! 古典部メンバー4人の本棚大公開
お仕事場拝見 2017年
『いまさら翼といわれても』刊行密着レポート!
米澤穂信のマイルストーン
講演録 物語のみなもと
対談 綾辻行人――豊潤なミステリを生み出すために
対談 大崎梢――『いまさら翼といわれても』
米澤穂信に30の質問 読者編/作家、声優、漫画家編
門外不出の〈古典部〉ディクショナリー


 今回のムック用に新しく書き下ろした「古典部メンバー4人の本棚大公開」は、以前このサイトで公開した折木奉太郎の本棚(掘り出し物です)を発展させ、折木、千反田、福部、伊原の四人につき、彼らの本棚に収まっている本を30冊ずつ選んだものです。
「門外不出の〈古典部〉ディクショナリー」は、古典部に関する設定資料の一部を、文章にまとめていただいたものです。こういうものがないと、山本という苗字は出たことがあるのか、伊原に兄弟はいるのか……などちょっとしたことが、すぐにはわからなかったりするのです。

 読者、編集者、同業者、関係者、多くの方に助けられ、こうした本が出せるようになりました。本当にありがたいことです。
 どうぞよろしくお願いいたします。

タグ:〈古典部〉
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2017年07月28日

『満願』


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(文庫判)
著:米澤穂信
解説:杉江松恋
写真:Jim Green/Getty Images
装幀:新潮社装幀室
出版社:新潮社

発売日:2017年7月28日
定価:本体670円(税別)
文庫判
ISBN:978-4-10-128784-3



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(単行本版)
著:米澤穂信
写真:Jim Green/fStop/Getty Images
装幀:新潮社装幀室
出版社:新潮社

発売日:2014年3月20日
定価:本体1,600円(税別)
四六判上製
ISBN:978-4-10-301474-4



 天も見ていたに違いありません。




 18冊目です。

 四年前、当時の担当編集者さんと、捨てるところなきミステリ短篇集を作ろうと話し合いました。記憶に残る傑作ミステリ短篇集を挙げあう、楽しい時間でした。
 それから、「小説新潮」の企画「Story Seller」シリーズを主な舞台として、ミステリ短編を書き続けてきました。タイムスケジュールに追われることはあっても、いつも意識の片隅には「この短編は、あの日約束した短篇集に恥じることなく入れられるだろうか?」という問いがあったと思います。
 また今回、刊行に当たって、集英社「小説すばる」の当時の担当編集者さんの快諾を得て、そちらに載せて頂いた短編も入れることが出来ました。

 収録作は以下の通りです。

夜警
死人宿
柘榴
万灯
関守
満願

 お楽しみ頂けることを願っています。


第27回山本周五郎賞受賞作
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2016年11月30日

『いまさら翼といわれても』



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著:米澤穂信
写真:清水厚
装幀:岩郷重力+K.T
出版社:KADOKAWA

発売日:2016年11月30日
定価:本体1,480円(税別)
四六判上製
ISBN:978-4-04-104761-3


 21冊目にして、〈古典部〉シリーズの6冊目です。

 機会を見つけて書いていた短篇を、短篇集として編み上げました。
 いずれ本にするときこのような一冊になればと思い描いていたその形に、仕上げられたと思います。
『氷菓』から続く小説を、また新たにお届けできました。
 物語の時期は、折木奉太郎たちが二年生になった一学期、ほぼ『ふたりの距離の概算』と重なっています。
 以下の小説が収録されています。

箱の中の欠落
 夕食を作り終えた折木奉太郎に、電話が掛かってくる。福部里志が、散歩に行かないかと誘ってきたのだ。落ち合った福部は、その日おこなわれた生徒会選挙で、あり得ない投票結果が出たと告げる。

鏡には映らない
 伊原摩耶花はふとしたことから、中学時代に折木が犯した過ちのことを思い出す。その過ちゆえに折木はクラス全員から軽蔑された。それから二年、折木と同じ古典部に属してきた伊原は思う。……あの一件は見た目通りだったのか?

連峰は晴れているか
 校舎上空を、一機のヘリコプターが飛び越していく。そのエンジン音を聞き、折木はなんとはなしに、「荻がヘリ好きだったな」と呟く。中学校の英語教師、小木のことを言ったのだが、中学校が同じだった福部も伊原も、そんな話は知らないという。

わたしたちの伝説の一冊
 中核的な部員が退部したことで、漫画研究会は分裂状態に陥っていた。伊原は漫画を描きたいだけだが、いまの漫画研究会でそれをすることには派閥的な意味が生じてしまう……。息苦しい状況の中、伊原の創作ノートが盗まれてしまう。

長い休日
 清々しい休日、折木は街歩きに出かけた先で、千反田えると出会う。なぜか稲荷の祠を掃除することになり、箒で落葉を集める折木は、千反田から問いかけられる。「やらなくてもいいことなら、やらない」……折木はどうして、モットーを掲げることになったのか。

いまさら翼といわれても
 昼食を作り終えた折木奉太郎に、電話が掛かってくる。伊原が、千反田の行方を知らないかと訊いてきたのだ。市の合唱祭でソロパートを歌うはずだった千反田が、出番が近づいても会場に現われないというのだ。取りあえず現場に向かった折木は、僅かな手がかりから千反田の居場所と、その望みとを推理していく。

タグ:〈古典部〉
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2016年10月31日

『さよなら妖精』


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THE SEVENTH HOPE

(単行本新装版)
著:米澤穂信
装幀:岩郷重力+k.k
出版社:東京創元社

発売日:2016年10月31日
定価:本体1,700円(税別)
四六判上製
ISBN:978-4-488-02768-1

(四六判)
著:米澤穂信
装幀:岩郷重力+WONDER WORKZ。
出版社:東京創元社

発売日:2004年2月24日
定価:本体1,500円(税別)
四六判仮フランス装
ISBN:4-448-01702-9

(文庫判)
著:米澤穂信
解説:鷹城宏
装幀:岩郷重力+WONDER WORKZ。
出版社:東京創元社

発売日:2006年6月10日
定価:本体743円(税別)
文庫判
ISBN:4-488-45103-9


(2016年追記)
 今回、『さよなら妖精』を単行本新装版として再刊して頂けることになりました。
 すべての小説が長く記憶されるわけではない中で、私にとっても思い出深い本作を、ふたたび読者の皆さまにお届けできることを嬉しく思います。

 いまならこうは書かないという若書きの点も多々ありますが、今回加筆修正は行いませんでした。未熟ゆえの失敗や不足ならば改めるに憚りはありませんが、当時の私にしか書き得なかった文章を、いまの私の目から見て若いからといって手を加えるのは、小説を殺すことだと考えたからです。

 また、短篇「花冠の日」を併録していただきました。
(追記おわり)

 三冊目です。初めての非シリーズ物になります。
 タイトルから、ファンタシー物と思われる方もいらっしゃるようですが、違います。
 舞台は藤柴市。観光業以外にこれといって売り物もなく、その観光業もやや衰退の兆しが見える地方都市です。主人公は大学一年生、守屋路行。彼が友人と喫茶店で待ち合わせるところから、物語は始まります。

 彼らは、一年前のことを思い返します。
 ある雨の日、守屋たちの前に現れた旅行者。黒髪の白人である彼女は、マーヤと名乗ります。行く当てがないという彼女に、守屋はホームステイ先を紹介します。
 そして、それからの二ヶ月。守屋とその友人たちは、マーヤと時を過ごします。マーヤの故郷と日本との違いに深い興味を示し、それは時として守屋たちに謎を投げかけます。
 約束の時間が過ぎ、マーヤは故郷へと帰って行きました。
 そして一年。守屋はどうしても、マーヤの故郷とはどこであったのかを知らなければならなくなります。

『愚者のエンドロール』が趣味的な仕上がりになっていると以前書きましたが、本作はまた別の意味で趣味的です。
 作中で取り上げられる事態の「真犯人」を当てるのは、ちょっと骨が折れる仕事になるでしょう。
posted by 米澤穂信 at 00:00| 既刊情報

2015年06月26日

『リカーシブル』


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(四六判)
著:米澤穂信
装画:笹部紀成
装幀:新潮社装幀室
出版社:新潮社

発売日:2013年1月22日
定価:本体1,600円(税別)
四六判仮フランス装
ISBN:978-4-10-301473-7

(文庫判)
著:米澤穂信
装画:笹部紀成
装幀:新潮社装幀室
出版社:新潮社

発売日:2015年6月26日
定価:本体750円
ISBN:978-4-10-128783-6



「バカじゃないの。あんたは人の話をどう聞いてたのよ」
 喉の痛みを忘れ、わたしは叫ぶ。
「強くないから、強いふりするんでしょ!」




 17冊目です。

 中学一年生の越野ハルカは、家の都合で母の故郷に引っ越してきた。新しい環境に戸惑いながらも何とか学校になじもうと、ハルカは神経を張り詰める。その甲斐あってか、在原リンカという友人を得ることができた。

 その一方で、弟のサトルには奇妙なことが起きていた。
 この町で、これから起きることがわかるというのだ。かまってほしくて言った嘘だと、ハルカはサトルに取り合わない。
 しかしある日、サトルの言葉通りに小さな事件が起き、そして言葉通りに解決する。

 そしてサトルは、泣き出しそうになりながら、学校へと続く橋を怖がる。
「ここから落ちた人がいるんだ。ぼく、知ってる」

 ……この町はどこかおかしい。



 長篇ミステリです。
 彼女のしあわせを願っています。
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2013年07月12日

『折れた竜骨』


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THE BROKEN KEEL

(四六判)
著:米澤穂信
装幀:岩郷重力+WONDER WORKZ。
出版社:東京創元社

発売日:2010年11月27日
定価:本体1,800円(税別)
四六判仮フランス装
ISBN:978-4-488-01765-1

(文庫判)
著:米澤穂信
装画:影山徹
装幀:岩郷重力+k.k
解説:森谷明子
出版社:東京創元社

発売日:2013年7月12日
定価(上巻):620円+税
定価(下巻):620円+税
ISBN(上巻):978-4488451073
ISBN(下巻):978-4488451080


 16冊目です。

 12世紀末。北海に浮かぶソロン島を、奇妙な客が訪れます。彼は自らをトリポリから来た騎士ファルク・フィッツジョンと名乗り、敵を追っているのだと言います。敵とは、東方でイスラム暗殺者の術を身につけた〈暗殺騎士〉。ファルクの警告も虚しく、ソロン島には奇妙な死がもたらされます。――自然の要害に守られていたはずの領主が刺殺されたのです。
 領主の娘アミーナは、ファルクとその弟子ニコラに協力し、共に事件の真相を追うことになります。容疑者は、いずれも一筋縄ではいかぬ傭兵たち。そしてソロン島にはもう一つ、大きな脅威が迫りつつありました……。
 以下はその章立てです。



序章 老兵の死
 1 魂の危機を

第一章 東より
 2 聞けばイェルサレムから来たらしい
 3 オート麦のビスケット
 4 伝説の悪鬼たち
 5 聖アンブロジウス病院兄弟団
 6 暗い森の中
 7 神の家を焼く

第二章 騎士と傭兵
 8 英雄は死んだ
 9 この中の誰かが
10 詩篇を歌う
11 自殺者と異教徒
12 八角形の見張り塔
13 奇妙な燭台
14 歪んだ家
15 黒い綾織布
16 歌を聴かせるべき人
17 ゴリアテに挑むダビデ
18 前夜式

第三章 追悼
19 宵課の鐘はまだ鳴らない
20 背誓者の子
21 冬の七晩

第四章 嵐の鐘
22 噂は噂
23 右手にはナイフ
24 滑らかな象牙
25 何千日分のひっかき傷
26 大きすぎる扉
27 死者たちの船
28 足せば三十八人
29 落とした銀貨
30 斧の軌道
31 一すじの血
32 果たして素手で
33 理性と理論

第五章 儀式
34 誰が〈走狗〉であったのか
35 残るのはただ一人
36 父の腕の中

終章 彼方へ
37 折れた竜骨



 特殊設定を用いたミステリです。
 推理をお楽しみ頂ければと思います。そして、理性と理論は魔術をも打ち破ることを証明して下さい。


第64回日本推理作家協会賞受賞作
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2012年06月22日

『ふたりの距離の概算』


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It walks by past

(四六判)
著:米澤穂信
装画:北沢平祐
装幀:岩郷重力+WONDER WORKZ。+K・S
出版社:角川書店

発売日:2010年6月30日
定価:本体1,470円
四六判上製
ISBN:978-4-04-874075-3

(文庫判)
著:米澤穂信
写真:清水厚
装幀:岩郷重力+WONDER WORKZ。
出版社:角川書店

発売日:2012年6月22日
定価:本体552円
ISBN:978-4-04-100325-1



 ただ走るには長すぎる。しかし人を理解するのに充分な距離かどうかはわからない。




 十五冊目です。
〈古典部〉シリーズの第五巻になります。

 一年が経ち、折木奉太郎たち古典部員は二年生になりました。神山高校の多種多様な部活動は新入生獲得に血道を上げ、古典部もまた、いちおう勧誘活動を行います。折木はいつもの通り座って喋っているだけでしたが、成り行きで女子生徒が一人、入部することになりました。
 名を大日向友子。折木とは同じ中学校の出身です。

 新入部員を迎え、古典部はにわかに活気づきます。
 ホームパーティーに、開店を間近に控えた喫茶店のモニター客。それらはどれも大日向が画策したものでした。

 しかし、入部から二ヶ月。
 部員としての正式な登録を前にして、大日向は突如、古典部には入らないと言いました。
 どうやら彼女を心変わりさせた何かがあったらしい。そして前後の事情を考えると、どうやら古典部部長・千反田えるとの確執があったとしか思えないのです。

 折木は大日向を引き止めようと考えます。
 しかしそのためには、大日向と千反田の確執とは何だったのかを知らなければならない。それはすなわち、大日向友子とはどういう子だったのかを見つめ直すことを意味しています。

 与えられた時間はさほど長くありません。
 距離は二十キロ。
 神山高校マラソン大会、通称「星ヶ谷杯」のスタートからゴールまでが猶予期間です。それが終わってしまえば慰留は手遅れとなるでしょう。
 隠された思いを見出すべく、折木は記憶を遡ります。


 連作短篇仕立ての長篇です。
「日常の謎」のスタンダードな構成であり、〈古典部〉の既刊にしっくりと馴染む一冊になっていればと思います。

タグ:〈古典部〉
posted by 米澤穂信 at 00:00| 既刊情報

2012年04月25日

『追想五断章』


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(四六判)
著:米澤穂信
装画:小泉孝司
装幀:芥陽子(note)
出版社:集英社

発売日:2009年8月26日
定価:本体1,300円
四六版上製
ISBN:978-4-08-771304-6

(文庫判)
著:米澤穂信
写真:@Walter B.McKenzie/Getty Images
@KOUTAKU/orion/amanaimages
装幀:泉沢光雄
解説:葉山響
出版社:集英社

発売日:2012年4月20日
定価:本体495円
ISBN:978-4-08-746818-2



 僕は己の掌篇を捨てねばならぬ。そう思い、僕は自分の楽園の片隅に焚き火を設けた。原稿用紙の束を投げ込んで、あの事件の全てを引き受け、死ぬまでの沈黙を誓うつもりだった。本当にそうするつもりだった。




 十四冊目です。

 武蔵野の古書店に居候する菅生芳光は、冬のある日、本を探してほしいという依頼を受けます。依頼主の名は北里可南子。ただ一篇の小説を求めて松本から来たのだという彼女は、首尾良く目当てのものを探し出した芳光に追加の依頼をします。

 二十年以上前に、物陰に隠れるようにひっそりと幾つかの小説を遺した作家、叶黒白。それは可南子の父の筆名でした。
 彼が書いた小説は五篇。奇妙なことに、それはどれも、結末を書かないリドル・ストーリーなのだといいます。そして可南子は、その書かれなかった結末を持っているのだとも。

 失われた小説を探す芳光は、やがて一つのキーワードに行き着きます。
 ――「アントワープの銃声」。
 二十二年前の不審な死が、おぼろに姿を現します。


 長篇ミステリです。
 手紙、雑誌記事、作文、そして失われた五篇のリドル・ストーリー。そうしたさまざまな「残されたテキスト」を素材に、ひとつの小説を書きました。
 花火を上げてアピールするような華々しい変化ではありませんが、これが新境地というものかもしれない、としみじみ思います。
posted by 米澤穂信 at 00:00| 既刊情報

2011年06月28日

『儚い羊たちの祝宴』


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(四六判)
著:米澤穂信
装幀:新潮社装幀室
出版社:新潮社

発売日:2008年11月21日
定価:税込1470円
四六判上製
ISBN:978-4-10-301472-0

(文庫判)
著:米澤穂信
装画:日月沙絵
装幀:新潮社装幀室
解説:千街晶之
出版社:新潮社

発売日:2011年6月28日
定価:税込500円
ISBN:978-4101287829



 わたしたちは、いわば同じ宿痾を抱えた者なのです。




 十一冊目です。
「小説新潮」誌などに掲載させていただいたシリーズに、書き下ろしを加えました。

 連作短篇集です。
「秘密の書架」を共有する二人を襲う、酸鼻な不幸。「身内に不幸がありまして」。
 その屋敷の一室には、空を紫に塗った絵がかけられている。「北の館の罪人」。
 愛らしく、それでいて人跡まれな山荘に、遭難者が消えた。「山荘秘聞」。
 わたしの弱さは生まれつきのものだったのだと、いまになって思う。「玉野五十鈴の誉れ」。
「バベルの会」を除名された元会員は、知りたくなかった真実を知る。「儚い羊たちの晩餐」。

 クラシカルで、どこか残照のような雰囲気の小説を書けないかと思っていました。物語好きの心に、何かちょっとでも響くものを、と。
 いつか、何かの形で読んでいただけたらと思っていた小説たちを、いまお届けします。

posted by 米澤穂信 at 03:13| 既刊情報

2010年07月24日

『遠まわりする雛』


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Little birds can remember

(四六判)
著:米澤穂信
装幀:岩郷重力+WONDER WORKZ。
出版社:角川書店

発売日:2007年10月3日
定価:本体1,400円(税別)
四六判仮フランス装
ISBN:978-4048738118

(文庫判)
著:米澤穂信
写真:清水厚
装幀:岩郷重力+WONDER WORKZ。
出版社:角川書店

発売日:2010年7月24日
定価:本体629円
ISBN:978-4-04-427104-6

 記念すべき十冊目です。
〈古典部〉シリーズの四冊目でもあります。

『氷菓』『愚者のエンドロール』『クドリャフカの順番』の三冊で、神山高校文化祭はいったんの終わりを迎えます。
 しかし古典部にとって、折木奉太郎たちにとって、文化祭は数多ある学校イベントのひとつに過ぎません。
 彼らには常に、時に卑近な、時に瑣末な厄介ごとが襲い掛かるのです。
 適当にいなしたり付き合ったりしているうちに、時計の針は進みます。彼らは、高校二年生になりました。

 連作短篇集です。
 入学直後、まだ何もかもが不安定だった頃。「やるべきことなら手短に」。
 一学期、「だべり」以外のなにものでもない、どうでもいい放課後。「大罪を犯す」。
 夏休み、コネを使って、古典部は温泉宿にタダで泊まります。山奥で夏合宿! 「正体見たり」。
 二学期、折木と千反田の放課後。他に話すことはないのか。「心あたりのある者は」。
 冬休み、正月には初詣に。しかし恐るべき密室が折木たちを襲います。「あきましておめでとう」。
 三学期、バレンタインデーをテーマにした一大伽藍(でも短篇)。「手作りチョコレート事件」。
 そして春休み。千反田家と「生き雛」と、一年という時間がもたらしたもの。「遠まわりする雛」。

 全七編です。……ということは、一篇あたり200円(税別)ですね。文庫判なら90円弱(税別)です。
 これはお買い得!
 もうひとつ、いちおう宣伝宣伝。「心あたりのある者は」は、推理作家協会賞短篇部門候補作です。あんまりこういう宣伝は好きではないのですが、でも、宣伝宣伝。

〈古典部〉シリーズをずっと読んで下さっていた方はもちろん、この『遠まわりする雛』からでも読んでいただける一冊になっていると思います。
 今回は、時系列を追っていくことがひとつのテーマになっています。「野性時代」誌でお読みくださった方も、できることならば、最初からお読みいただけると嬉しいです。

タグ:〈古典部〉
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2010年06月10日

『インシテミル』


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(四六判)
著:米澤穂信
装画:西島大介
装幀:関口信介
出版社:文藝春秋

発売日:2007年8月31日
定価:税込1680円(本体1600円)
四六判上製
ISBN:978-4-16-324690-1

(文庫判)
著:米澤穂信
装画:村尾亘
装幀:関口信介
解説:香山二三郎
出版社:文藝春秋

発売日:2010年6月10日
定価:本体686円
文庫判
ISBN:978-4-16-777370-0


 九冊目です。

 充実した学生生活を送るために是非ともクルマが欲しい大学生、結城理久彦。バイトでもするかと情報誌を探しに立ち寄ったコンビニで、彼は指一本分の不足があるという令嬢に出逢います。須和名祥子と名乗った彼女は、高額報酬の仕事を探していると言いました。
 彼女のためにバイト情報誌を繰る結城。須和名はふと、ある仕事に目を留めます。『報酬:1120百円』。百の字が誤植でなければ、この仕事の報酬は十一万二千円の計算になります。
 間抜けな間違いもあるものだと思いながら、冗談半分で応募する結城。しかし、それが彼の運の尽きでした。

 案内されたのは、地下空間。名づけて〈暗鬼館〉。
 参加メンバーは十二人。
 そしてラウンジの円卓には、十二体のネイティブアメリカン人形が。

 ……さて、ミステリの始まりです。
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2009年10月01日

『ボトルネック』


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BOTTLENECK

(四六判)
著:米澤穂信
装画:フジモト・ヒデト
装幀:新潮社装幀室
出版社:新潮社

発売日:2006年8月31日
定価:税込1470円(本体1400円)
四六判クレスト装
ISBN:4-10-301471-7

(文庫判)
著:米澤穂信
装画:笹部紀成
装幀:新潮社装幀室
解説:村上貴史
出版社:新潮社

発売日:2009年10月1日
定価:本体476円
文庫判
ISBN:978-4-10-128781-2

 八冊目です。
 ミステリというよりは青春小説、と言われます。

 舞台は石川県金沢市。実在の場所を物語の舞台にするのは、多分初めてです。主人公は高校一年生、嵯峨野リョウ。彼は二年前に死亡した恋人を弔うため、福井県東尋坊を訪れます。
 しかし、強い眩暈に襲われ、気がつくと彼がいたのは金沢市。不思議に思いながらも帰宅した彼を迎えたのは、サキと名乗る見知らぬ女性でした。いくばくかのやり取りの後、サキは言います。自分はリョウの、生まれなかった姉。ここはあなたが生まれなかった世界なのだ、と。
 もちろんリョウは、すぐにはその言葉を信じません。ともあれサキはリョウを温かく遇し、二人は連れ立って金沢の街や、北陸本線や、東尋坊を見てまわることになります。

 ボトルネックがあります。排除すれば済むと人は言いますが、むしろ問題なのはここからです。
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2009年03月11日

『秋期限定栗きんとん事件 下』


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THE SPECIAL KURI-KINTON CASE

著:米澤穂信
解説:辻真先
装画:片山若子
装幀:岩郷重力+WONDER WORKZ。
出版社:東京創元社

発売日:2009年3月11日
定価:税込609円
文庫判
ISBN:978-4-488-45106-6



 わたし、知りたかったの。
 恋とはどんなものかしらって。



 十三冊目です。
〈小市民〉シリーズ第三弾『秋期限定栗きんとん事件』の、下巻です。

 木良市全域で起きている連続放火事件は、次第にエスカレートしています。船戸高校新聞部は、部長である瓜野高彦の指揮下、放火犯を追っていきます。
 一方、三年生となった小鳩常悟朗もまた、同じ事件を調べ始めました。友人である堂島健吾の力を借りて。
 そして彼らは決着の夜を迎えます。

 上下分冊の長篇です。
 多視点の手法を用い、同じ事件に別々のアプローチをしています。
 聞け万国の小市民、轟き渡る解決篇。

タグ:〈小市民〉
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2009年02月27日

『秋期限定栗きんとん事件 上』


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THE SPECIAL KURI-KINTON CASE

著:米澤穂信
装画:片山若子
装幀:岩郷重力+WONDER WORKZ。
出版社:東京創元社

発売日:2009年2月27日
定価:税込609円
文庫判
ISBN:978-4-488-45105-9

 その程度でぼくに謎をかけようなんて、おかしくって話にもならない。

 十二冊目です。
『春期限定いちごタルト事件』『夏期限定トロピカルパフェ事件』に続く、〈小市民〉シリーズの三作目です。

『夏期限定トロピカルパフェ事件』が終わり、二学期が始まります。ある日の、小鳩常悟朗は一枚のメモを受け取りました。そのメモに従い放課後の教室を訪れた小鳩を、クラスメートの仲丸十希子が待っていました。彼女は言います。「つきあっちゃおうよ」。
 そして小鳩は、仲丸と交際を始めます。

 一方、新聞部では一つの騒動が持ち上がっていました。
 一年生の瓜野高彦が、学内の出来事しか記事にしない紙面作りに異を唱えたのです。彼は学内新聞で取り上げるべきネタを探し、市内で起きている連続放火事件に行き当たります。
 瓜野は発奮します。彼には、いいところを見せなければならない相手がいるのです。

 上下分冊の長篇です。
 多視点の手法を用い、傾向の違う二つの話を同時に進めています。
 立て飢えたる小市民、いまぞ日は近し。

タグ:〈小市民〉
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2006年04月14日

『夏期限定トロピカルパフェ事件』


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THE SPECIAL TROPICAL PARFAIT CASE

著:米澤穂信
解説:小池啓介
装画:片山若子
装丁:岩郷重力+WONDER WORKZ。
出版社:東京創元社

発売日:2006年4月14日
定価:税込600円(本体571円)
文庫判
ISBN:4-488-45102-0



 わたしね。……何だか、素敵な予感がしてるの!



 七冊目です。
『春期限定いちごタルト事件』の続篇です。一応、前作を読んでくださっていることを前提にしてはいますが、本作の後で前作をお読みいただくのもそれはそれで味があるかもしれません。

『いちごタルト事件』から一年。小鳩常悟朗と小佐内ゆきは、「小市民」という徳目を掲げたまま高校二年生になりました。物語は、彼らの高校二年生の夏休みが舞台となります。
 小鳩と小佐内は「小市民」になるために一緒にいるのであって、夏休みにまで行動を共にする必要はまったくありません。しかし、そう考えていたのは小鳩の方だけ。夏休み初日、小佐内は小鳩を訪れ、彼に〈小佐内スイーツセレクション・夏〉なるリストと地図を手渡します。
 なんだこれは、とあきれ返る小鳩。微笑むだけの小佐内。やがて小鳩は、余人の目がない夏休みであれば、「小市民」らしからぬ振る舞いも見咎められないことに気づきます。憚らず知恵を振るう小鳩。彼はしかし一方で、疑問を抱き続けます。……なぜ小佐内は、夏休みに自分に会おうとするのか?

 連作短篇集風の、長編です。
 このシリーズは、いろいろなタイプのミステリを盛り込むことを目的の一つに掲げています。たとえば第一章は倒叙ミステリ、第二章はダイイングメッセージものの変形、といった感じです。第三章は幕間ですが、第四章がどんなタイプのミステリなのかは伏せておきます。……もちろん、作品全体を通じるとどんなミステリになるのか、も。
 嗚呼。日暮れて、小市民への道遠し。

タグ:〈小市民〉
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2005年07月21日

『犬はどこだ』


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THE CITADEL OF THE WEAK

(四六判)
著:米澤穂信
装幀:岩郷重力+WONDER WORKZ。
出版社:東京創元社

発売日:2005年7月21日
定価:税込1680円(本体1600円)
四六判仮フランス装
ISBN:4-488-01718-5

(文庫判)
著:米澤穂信
解説:村上貴史
装幀:岩郷重力+WONDER WORKZ。
出版社:東京創元社

発売日:2008年2月29日
定価:税込777円
文庫判
ISBN:978-4-488-45104-2


 六冊目です。
 主人公の年齢層を十歳ほど上げ、取り上げる事件の内容もそれ相応のものになりました。

 順調な人生を歩んできたものの、就職後に突然病魔に襲われ、やむなく生まれ故郷の八保市に戻ってきた紺屋長一郎。彼は、自分の新しい仕事として調査業を始めます。想定した業務内容は、いなくなったペット捜し。彼は自分の事務所を〈紺屋S&R〉と名づけます。
 しかし実際に舞い込んだのは、都会から失踪しどうやら八保市近辺に来ているらしい孫娘、佐久良桐子を捜してくれという依頼。思わぬ依頼に少し戸惑った紺屋ですが、条件さえ折り合うならと引き受けることにします。
 ですがさしもの彼も、続いて持ち込まれた依頼にはあきれました。八保市の北にある小さな町の神社に代々伝わる古文書、その内容を、教育委員会に頼らずに解読してくれというのです。どう断ろうか腐心する紺屋でしたが、その場に同席していた紺屋の知人半田平吉が、憧れの探偵への第一歩としてその仕事を受ける意思を見せました。
 こうして、紺屋長一郎は都会から消えた佐久良桐子を捜し、半田平吉は村に伝わる古文書を解読することとなりました。
 全く関係がないかに見えた二つの事件ですが、二人の探偵が気づかないうちに、調査内容はニアミスを繰り返していきます。

 調査と推理と検証と。これまでの私の作品を「日常の謎」とくくるなら、本作は「私立探偵もの」になろうかとおもいます。

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2005年06月30日

『クドリャフカの順番』


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Welcome to KANYA FESTA!

(四六判)
著:米澤穂信
装幀:遊空龍+WONDER WORKZ。
出版社:角川書店

発売日:2005年6月30日
定価:本体1,600円(税別)
四六判仮フランス装
ISBN:4-04-873618-3

(文庫判)
著:米澤穂信
装幀:岩郷重力+WONDER WORKZ。
出版社:角川書店

発売日:2008年5月25日
定価:本体629円(税別)
文庫判
ISBN:978-4-04-427103-9


 五冊目です。
『氷菓』『愚者のエンドロール』に続く、〈古典部〉シリーズの三作目です。

『氷菓』で文集作成を始め、『愚者のエンドロール』で文化祭用のビデオ映画制作に手を貸した古典部。暦は進み、いよいよ神山高校は文化祭当日を迎えます。
 ですが、彼らは少々ミスを犯しました。彼らが作成した文集「氷菓」の印刷数が、予定よりも多くなってしまったのです。
 このままでは過剰在庫は確実。部長の千反田えるは責任を感じてうなだれ、福部里志はトラブルの発生に興奮を隠しきれません。折木奉太郎も、自分も原稿を書いた文集が百部単位で焼き捨てられるところを想像すると、あまりいい気はしていませんでした。
 一方、古典部員であると同時に漫画研究会にも所属している伊原摩耶花は、古典部の窮状を気にかけながらも、漫研から出ることが出来ないでいました。そして彼女はそこで、漫研内部の争いに身を投じることになります。
 次々と行われる文化祭の企画。伸びない文集「氷菓」の売れ行き。やがて神山高校の生徒たちは、文化祭の裏で連続盗難事件が起きていることに気づきます。
 古典部の四人それぞれの物語は、やがてこの連続盗難事件、「十文字」事件に絡め取られていきます。

 文化祭が舞台ということで、これまでの作品に比べると話は明るく始まります。
 前半は文化祭を後半はミステリを。そして、四人それぞれの違いを楽しんで頂ければと思います。

タグ:〈古典部〉
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