2004年12月18日

『春期限定いちごタルト事件』


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THE SPECIAL STRAWBERRY TART CASE

著:米澤穂信
解説:極楽トンボ
装画:片山若子
装幀:岩郷重力+WONDER WORKZ。
出版社:東京創元社

発売日:2004年12月18日
定価:税込609円(本体580円)
文庫判
ISBN:4-488-45101-2



 終わった? ううん、小鳩くん。これからじゃない。




 四冊目です。
 これまでの本を読んで頂けた方にはもちろん、本作で初めて米澤の本を手に取って下さった方にも、肩の力を抜いて楽しんで頂ければと思います。

 舞台は船戸高校。主人公は、入学したての小鳩常悟朗。彼は中学時代から、ある女子とよく行動を共にしてきました。彼女の名は小佐内ゆき。小鳩と小佐内の二人は、共通した徳目を掲げています。
「小市民たれ」、と。
 小市民たらんとする以上、探偵をするなどということはもっての他。ですが二人は、避けがたい事情からしばしば謎に直面することになります。
 徳目に完全に従うことはできないまでも、ある程度は穏やかな日々。しかし、ある日突然、小佐内ゆきを悲劇が襲いました。
 あまりに理不尽な事態に小佐内は言葉を失い、小鳩には慰めの言葉もありません。そしてこの事件は、小鳩と小佐内の小市民たらんとする願望に、微妙な影を落とし始めます。

 日常ミステリの連作短編集です。
 基本的な読み味は、帯にもあります通り、コミカルではないかと思います。味が軽い分、いろいろなタイプのミステリを盛り込むことができました。たとえば最終話「狐狼の心」は、ケメルマンの『9マイルは遠すぎる』に敬意を捧げてているつもりです。
 君よ掴め、あの小市民の星を。

タグ:〈小市民〉
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2002年08月02日

『愚者のエンドロール』


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Why didn't shy ask EBA?

著:米澤穂信
装幀:岩郷重力+WONDER WORKZ。
出版社:角川書店

発売日:2002年8月1日
定価:本体533円(税別)
文庫判
ISBN:4-04-427102-X


 出版されたものとしては第二作目に当たります。
『氷菓』の続編であり、登場人物の多くや物語の舞台は『氷菓』を引き継いでいます。しかし物語としての連続性は強くはありませんので、本作単独でも読んでいただくことができると思います。

 神山高校の文化祭は盛大なものです。そのイベントに一枚噛みたいと、2年F組の人々はビデオ映画を撮影することにしました。内容を「ミステリー」とだけ決められたその映画はしかし未完に終わりそうになります。脚本製作が、拠所ない事情によって停止してしまったのです。
 脚本家の代役を立てるにしても、そのためには作中で起きた事件のトリックを暴かなくてはいけません。問題の解決を委託された女子生徒、入須冬実は一計を案じます。
 折木奉太郎属する古典部は、紆余曲折を経て、その「ミステリー」の謎解きに深く関わっていくことになります。

「ミステリーと遊ぼう」をコンセプトに、いささか趣味的な仕上がりになりました。作品の構成はアントニー・バークリー『毒入りチョコレート事件』に、敬意を払いつつ倣っています。
 錯綜した状況のうちに謎が潜むとすれば、ミステリーの中にミステリーの種が潜んでいるとしても、少しも不思議ではないでしょう。

タグ:〈古典部〉
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2001年11月01日

『氷菓』


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The niece of time

著:米澤穂信
装幀:岩郷重力+WONDER WORKZ。
出版社:角川書店

発売日:2001年11月1日
定価:本体457円(税別)
文庫判
ISBN:4-04-427101-1


 処女作です。
 物語の舞台は神山高校。文化活動が活発ですが、特異というほどの特徴は持たない普通科全日制高等学校です。主人公は省エネルギーを旨とする一年生、折木奉太郎。入学直後、彼が「古典部」なる部活に入るところから、物語は始まります。

 折木奉太郎の入部した古典部には、他に部員はいないはずでした。しかし、彼にとっては折悪しく、その年の古典部には新入部員がいたのです。彼女、千反田えるは、折木奉太郎にとってさらに悪いことに非常に好奇心旺盛な少女でした。千反田の好奇心は、折木を幾つかの不思議に関わらせます。
 日を過ごすうちに、望むと望まざるとに関わらず折木はその能力を千反田に認められていきます。そしてある日、千反田は折木に依頼しました。失踪した伯父がまだ幼児だった千反田に残した言葉、それがなんだったのか思い出す手伝いをして欲しいと。
 その依頼は思いがけず、33年前に起きたとある事件へと繋がっていくことになります。

 いわゆる日常ミステリの系譜に連なる小説です。最近はこの手のものをめっきり見かけなくなりました。
 体験は存外早く歴史になるようです。そして歴史を扱ったミステリーは、決して少なくありません。

タグ:〈古典部〉
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