2007年01月12日

「手作りチョコレート事件」


「野性時代」(角川書店)39号収録
雑誌発売日:2007年1月12日 雑誌定価:840円(本体)



 口の中に広がるチョコレートの味。それは強烈に甘く、そしてやはり苦く、当然のように次第次第に薄れて印象だけを残し、消えていった。




 雑誌『野性時代』に掲載された短篇です。
〈古典部〉シリーズです。

 話は、一年前、折木奉太郎や福部里志が中学三年生だったころから始まります。
 鏑矢中学の三年生であった福部里志は、2月14日、伊原麻耶花からバレンタインチョコを差し出されます。しかし彼は、「カカオから作らなければ手作りチョコレートとはいえない」という理屈を盾に、チョコを拒否。怒り狂った伊原は、翌年こそ福部にチョコを食わせることを誓い、立ち去りました。
 そして、翌年。神山高校一年生となった折木たち。古典部の地学講義室では、伊原が千反田に講義しています。いわく、「そもチョコレートとはなにものぞ」。伊原は、一年前の誓いを忠実に実行するつもりで、チョコレートのことを調べ上げてきたのです。千反田は喜んで、伊原のチョコレート作りを手伝うことを約束しました。
 そして、2月14日。完成した伊原の手作りチョコレートはいかなる末路を辿り、折木奉太郎はこの日いかなる役割を果たすのでしょうか?

 形式としては、少しだけフーやハウのふりをしたホワイダニットです。


*『遠まわりする雛』に収録済

タグ:〈古典部〉
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2006年11月11日

「心あたりのある者は」


「野性時代」(角川書店)37号収録
雑誌発売日:2006年11月11日 雑誌定価:880円(本体)



『十月三十一日、駅前の巧文堂で買い物をした心あたりのある者は、至急、職員室柴崎のところまで来なさい』




 雑誌「野性時代」に掲載された短篇です。
『氷菓』『愚者のエンドロール』『クドリャフカの順番』の〈古典部〉シリーズです。

 折木奉太郎と千反田えるは、古典部の部室である地学講義室で、放課後を過ごしておりました。
 二人は、ちょっとしたことで諍いになります。これまで折木が度々示してきた推理の才能を褒める千反田と、どうも納得がいかない折木。折木は果たして、どんな状況からでも蓋然性の高い仮説を導き出せるのか?
 そこに流れてきた校内放送。「十月三十一日、駅前の巧文堂で買い物をした心あたりのある者は、至急職員室柴崎のところまで来なさい」。千反田は、ふと思いついて言いました。「いまの放送にしましょう。いまの放送はどういう意味で行われたのか、推論を立ててください」。
 そして折木は、考え考え、話し始めます。

 ワンルームミステリ(いま作った用語)です。舞台は地学講義室だけ。
 安楽椅子探偵ものっぽいミステリだと思っていただければと思います。


*『遠まわりする雛』に収録済


タグ:〈古典部〉
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2005年12月12日

「シェイク・ハーフ」


「ミステリーズ!」(東京創元社)vol14収録
発売日:2005年12月12日 定価:本体1,260円(税別)



 メールが届いた。差出人は小佐内さん。文面は、
『もしもし、わたし小佐内』
 そりゃわかってるよ、と思ったら、立て続けにもう一通届いた。
『いま、あなたの後ろにいるの』




 雑誌「ミステリーズ!」の2005年12月号に掲載された短篇です。
〈小市民〉シリーズの一環です。

『シャルロットだけはぼくのもの』で小佐内に破れた小鳩は、小佐内の市内スイーツめぐりに付き合わされることになります。今日も今日とて、「フローズンすいかヨーグルト」なるものを食べるのだという小佐内に連れ出され、小鳩は駅前までやってきました。
 約束の時間よりも早く着き、たまたま昼食をとっていなかった小鳩は、手近なハンバーガーショップに入ります。そこで彼は、古い知り合いである堂島健吾に出会います。
 堂島はひどく真剣な様子で駅前の様子を観察しています。彼によれば、薬物を濫用しているグループが駅前にたむろしているとのこと。堂島は小鳩に、あのグループの中に助け出したい相手がいるのだと語ります。
 やがてグループは動き出し、堂島は慌ててハンバーガーショップを出ていきます。小鳩に向かい、もう少しここにいるなら自分の代わりに駅前を見張って何かあったらここに連絡してくれとメモを残して。しかし、そのメモを見た小鳩は目を丸くします。
 そのメモにはたった一文字、『半』とあっただけなのです。

 暗号ものです。ただ、自分としてはダイイングメッセージものの変形のつもりではいます。
 メッセージは一文字。発想の転換がミソです。
 難易度はさほど高くありません。是非、解読に挑戦していただきたいと思います。


*『夏期限定トロピカルパフェ事件』に収録済


タグ:〈小市民〉
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2005年10月12日

「シャルロットだけはぼくのもの」


「ミステリーズ!」(東京創元社)vol.13収録
雑誌発売日:2005年10月12日 雑誌定価:1200円(本体)



 全てはこの忌々しい暑さのせいだ。ぼくはそう決めた。何もかもがいつも通りだったら、ぼくはこんなことを考えはしなかったに違いない。




 雑誌「ミステリーズ!」の2005年10月号に掲載された短篇です。
『春期限定いちごタルト事件』の続編です。いちごタルト事件の後、小鳩と小佐内はおとなしく毎日を送っていました。一年後の夏、彼らの高校二年生の夏休みが物語の舞台です。

 夏休み早々、小鳩は小佐内に頼まれ、ケーキを小佐内に買って行くことになります。しかし、四つ買って来てくれとたのまれたシャルロットが、店には三つしか残っていませんでした。
 自分が一つ、小佐内が二つ食べればいいと考えていた小鳩ですが、いざスプーンをつけてみるとこれが絶品。是非とも自分が二つせしめたいと考え始めます。幸い、小佐内は電話で席を外しています。自分が既に一つ食べてしまったことを隠しおおせることが出来れば、小佐内には「二つしか売ってなかった」と説明し自分が二つ目にありつくことが出来ます。
 小鳩はテーブルを睨みます。「ケーキが三つあった」ことを隠すには、やらなければならないことがいくつかあります。もし工作に隙があれば、小佐内はたやすく「三つ目」の存在を見抜くでしょう。
 小佐内はいつ電話を終えるとも知れません。残された時間は僅か。小鳩は自らの犯行を糊塗するため、脳を働かせます。

 倒叙です。
 犯人は小鳩。犯罪は、小佐内のものであるべきシャルロットを食べてしまったことです。
 身の毛もよだつ大罪。そして、さらに恐るべきことに、倒叙ミステリは探偵によって犯罪が露見することをほとんど運命づけられているのです。
 小鳩は何を隠し、何を隠さなかったのでしょうか。


*『夏期限定トロピカルパフェ事件』に収録済


タグ:〈小市民〉
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2004年11月23日

「Do you love me?」


「ミステリーズ! extra」(東京創元社)収録
雑誌発売日:2004年11月23日 雑誌定価:1200円(本体)



 わたしのこと、好き? 神かけて?




 雑誌「ミステリーズ!」の増刊、「ミステリーズ! extra」に掲載された短編です。
 主人公は渡良瀬みこと。物語はある夏の日、帰宅した彼女を男の幽霊が待ち受けていたところから始まります。

 幽霊は名を今谷と名乗ります。彼には生前の記憶が残っており、それによれば彼の死因は刺殺です。彼は、自分を殺した犯人も、はっきりと憶えていました。彼の恋人です。ただわからないのは、なぜ彼が恋人に殺されなければならなかったのか、です。
 渡良瀬はこれまでもしばしば、未練を残した幽霊の相談に乗ってきました。よって今谷の相談も、彼女にとってはややマンネリとしたものです。それでも彼女は今谷に、恋人との馴れ初めを話させます。殺人の動機を探るために。
 始まったのは当然のことながら、惚気話でした。

 恋愛が前面に出て、起きる事件は殺人で、安楽椅子探偵がいます。
 こう書くと普通のミステリみたいですね。普通は嫌だ、などとは思いませんけれど。
 実際は、ホワイダニットです。
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2002年02月28日

「影法師は独白する」


「The Sneaker」(角川書店)2002年4月号収録
雑誌発売日:2002年2月28日 雑誌定価:686円(本体)



 この話は絶対内緒よ! 他のお客さんの前じゃ、言っちゃ駄目なのよ――。




 雑誌『The Sneaker』に掲載された短編です。
 登場人物は『氷菓』を継承しています。舞台はあまり流行らない温泉街。夏休みの合宿と称して主人公たちが温泉街に遊びに向かうところから、物語は始まります。

 温泉街に到着した彼らを迎えたのは、古典部員の一人伊原摩耶花の姪に当たる姉妹でした。本来楽しかるべき合宿の夜ですが、主人公折木奉太郎はちょっとした不注意からその夜を病床で過ごすことになります。
 翌朝、回復し起きだしてきた折木は奇妙な話を聞かされます。昨夜、古典部の女子部員二人が揃って、怪談に出るような「首吊りの影」を見たと言うのです。見間違いだと一笑に付す折木に、女子部員たちは詰め寄ります。見間違いだというのなら、何を見間違えたのか証明せよと。

 夏休みは合宿です。温泉ですし、怪談でしょう。
 仲の良いことは美しいことですね。


*『遠まわりする雛』に収録済


タグ:〈古典部〉
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