2016年11月01日

『インサート・コイン(ズ) 』


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著:詠坂雄二
装画:旭ハジメ
装幀:坂野公一(welle design)
出版社:光文社

発売日:2016年10月12日
定価:本体800円
文庫判
ISBN:978-4-334-77365-6



 世界なら何千回も救ってきたのに自分一人を救いきれず、もがきながら「たたかう」を選び続ける、これは痣だらけの物語だ。




 詠坂雄二の文庫刊行にあたり、オビ文を書かせていただきました。
 字数と、より多くの読者に手にとってもらうためという目的がなければ、「キングレオに『たたかう』を選び続けるような、痣だらけの物語」と書いていたかもしれません。
 負けるとわかっている、ほとんど諦めている、それでも書き続けることをやめる気は毛頭ない、自ら選んでの消耗戦を描いたこの小説の、魅力の一端なりと伝えられていればと願います。

 ところでテレビゲーム「ドラゴンクエスト」シリーズでは、とても手に負えない難敵に会った時、あるいは諸般の事情で敵とたたかいたくない時、逃走を選択することができます。
 そしてその逃走が失敗すると、「しかし まわりこまれてしまった!」と表示されます。
 本書を読む際のサブテキストとしてお役に立てばと思います。

posted by 米澤穂信 at 13:24| 解説・推薦・編纂

2015年03月27日

『星読島に星は流れた』


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著:久住四季
装画:星野勝之
装幀:岩郷重力+WONDER WORKZ。
出版社:東京創元社

発売日:2015年3月20日
定価:本体1,600円
四六判仮フランス装
ISBN:978-4-488-01788-0


 久住四季の新刊刊行にあたり、オビ文を書かせていただきました。
 オビの裏表紙にあたる部分に、少し長い推薦文を寄せています。表紙部分の一文はそこから採られています。
 ここにその推薦文の全文を載せます。

天上へのあこがれと地上の欲求とが交わる一点で殺意が生まれる、その構図が美しい。胸おどる舞台設定と、ロジックを扱う手つきの確かさに、ミステリを読む楽しみとはこういうものだったと嬉しくなる。『星読島に星は流れた』という題もいい。久住四季の新たなる一歩に接し、たちまちその第二歩が待ち遠しくなった。

 なにぶんミステリですので、書きすぎるわけにはいきません。ですが、楽しく読んだということだけは何とかお伝えしたいと思っていました。
「題もいい」という素っ気ない一文に、読後、同意していただけることを願っています。
posted by 米澤穂信 at 06:03| 解説・推薦・編纂

2014年11月30日

『連城三紀彦 レジェンド』


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著:連城三紀彦
選:綾辻行人 / 伊坂幸太郎 / 小野不由美 / 米澤穂信
装幀:下山隆(Red Rooster)
出版社:講談社

発売日:2014年11月14日
定価:本体590(税別)円
文庫判
ISBN:978-4-06-277981-4

 連城三紀彦のご逝去を悼み、その筆業を改めて広く紹介するべく、アンソロジーが編まれました。
 縁あってその収録作選定に加わらせていただきました。
 以下に収録作を記します。

「依子の日記」
「眼の中の現場」
「桔梗の宿」
「親愛なるエス君へ」
「花衣の客」
「母の手紙」

 巻末には特別対談として、

「ミステリー作家・連城三紀彦の魅力を語る 綾辻行人×伊坂幸太郎」

 が入っています。


 今回、各選者がまず三編ずつ推薦し、後にそこから一編ないし二編が採られる形で選定が進められました。
 私が推したものからは「花衣の客」が採られています。
 なお、他に挙げた二編は「白蘭」と「午後だけの島」でした。どちらも一癖ある、ちょっと忘れがたいような短編です。本書をきっかけに連城三紀彦を読んでいこうと思われた方に、わずかばかりでもご参考になればと思います。
posted by 米澤穂信 at 23:25| 解説・推薦・編纂

2014年05月08日

『世界堂書店』


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編纂:米澤穂信
装画・装幀:森ヒカリ
出版社:文藝春秋

発売日:2014年5月9日
定価:本体770円
文庫判
ISBN:978-4-16-790101-1


 今回、機会を頂きまして、アンソロジーを編むことになりました。

 率直に申し上げて、僭越であったという思いは拭えません。化け物揃いの文芸界にあって、なぜ私だったのか。身が縮こまるようなおそれを感じずにはいられません。
 しかし、恐縮して辞退するより蛮勇をふるって力を尽くした方が、一人でも二人でも、面白い小説に出会わせられることも確かです。場合によっては、誰かが一生の友となるような小説に会う、その契機になれるかもしれない。それならば、私の趣味を公衆の面前に晒すことにも、何らかの意味はあるのだろうと思いました。

 おそれはあっても、こう申し上げることに躊躇いはありません。いい短編、揃いました。
 お手にとっていただければ嬉しいです。



 美しい忘却の傍らに残酷な忘却を配し、無常というにはあまりにむごい結末を迎える「源氏の君の最後の恋」(マルグリット・ユルスナール フランス 多田智満子・訳)。

 この小説そのものにも何かのまじないがかかっているのではないかと思わせる、「破滅の種子」(ジェラルド・カーシュ イギリス 西崎憲・訳)。

 かつて私に植え付けられたある種の恐怖症を、今度は別の誰かに植え付けられたらと願って。「ロンジュモーの囚人」(レオン・ブロワ フランス 田辺保・訳)。

 まさかの破壊力。SFは絵だとは聞いていましたが、こんな絵を見せられようとは。「シャングリラ」(張系国 台湾 三木直大・訳)。

 恍惚とするようなシチュエーションのみから成り立つ、エキゾチズム極まる一篇。「東洋趣味」(ヘレン・マクロイ アメリカ 今本渉・訳)。

 卑俗さによって貶められたものが、高潔さによって救われるカタルシスのある話……本当に? 「昔の借りを返す話」(シュテファン・ツヴァイク オーストリア 長坂聰・訳)。

 もろく美しいものが、時の流れと共に失われる。それ自体は当然としても、もう少し、誰かが惜しんであげてほしかった。「バイオリンの声の少女」(ジュール・シュペルヴィエル ウルグアイ 永田千奈・訳)。

 乏しい読書経験から予想した展開の全てが外れ、「いや面白いものを読んだ」としか言えなくなった、忘れがたい「私はあなたと暮らしているけれど、あなたはそれを知らない」(キャロル・エムシュウィラー アメリカ 畔柳和代・訳)。

 特別さは時間によって失われる。けれど、時間を残酷と見るのは、一人称的な見方に過ぎない。次があるのだ。「いっぷう変わった人びと」(レーナ・クルーン フィンランド 末延弘子・訳)。

「物語の類型」に囚われていたことを思い知らされる。三〇〇年前のお話に! 翻訳の魅力も異様な、「連瑣」(蒲松齢 中国 柴田天馬・訳)。

 正常の中に異常が忍び寄れば、それはもちろん怖い話になる。でも、異常の中に忍び寄る正常が、まさかこんな効果を生むなんて。お年寄りは大切にしましょう。「トーランド家の長老」(ヒュー・ウォルポール イギリス 倉阪鬼一郎・訳)。

 これもまた、狂気の中の正気か。死が横溢する世界(比喩ではなく!)における尊い奇跡の物語にして、傑作ミステリ。正直に言って、真相は看破出来ませんでした。「十五人の殺人者たち」(ベン・ヘクト アメリカ 橋本福夫・訳)。

 セピア色の神話的な物語がうつくしき復讐によってビビッドに彩られていく、今後永遠に愛するだろう「石の葬式」(パノス・カルネジス ギリシア 岩本正恵・訳)。

 孤独が何によって救われるか、それは余人にははかりえない。そのことこそが、孤独だと思う。「墓を愛した少年」(フィッツ=ジェイムズ・オブライエン アイルランド 西崎憲・訳)。

 海の彼方へと旅立っていった魂も、八月になれば戻ってくる。おかえりなさいませ。「黄泉から」(久生十蘭 日本)。



 そして最後に、解説にかえて拙文を載せて頂きました。
 どこかのだれかがどれかを(できればどれをも)愛してくれますように。心から、そう願っています。




まとまった(でも背景色の)収録作一覧

源氏の君の最後の恋(マルグリット・ユルスナール 多田智満子・訳)
破滅の種子(ジェラルド・カーシュ 西崎憲・訳)
ロンジュモーの囚人たち(レオン・ブロワ 田辺保・訳)
シャングリラ(張系国 三木直大・訳)
東洋趣味(ヘレン・マクロイ 今本渉・訳)
昔の借りを返す話(シュテファン・ツヴァイク 長坂聰・訳)
バイオリンの声の少女(ジュール・シュペルヴィエル 永田千奈・訳)
私はあなたと暮らしているけれど、あなたはそれを知らない(キャロル・エムシュウィラー 畔柳和代・訳)
いっぷう変わった人々(レーナ・クルーン 末延弘子・訳)
連瑣(蒲松齢 柴田天馬・訳)
トーランド家の長老(ヒュー・ウォルポール 倉阪鬼一郎・訳)
十五人の殺人者たち(ベン・ヘクト 橋本福夫・訳)
石の葬式(パノス・カルネジス 岩本正恵・訳)
墓を愛した少年(フィッツ=ジェイムズ・オブライエン 西崎憲・訳)
黄泉から(久生十蘭)
posted by 米澤穂信 at 01:48| 解説・推薦・編纂

2014年02月13日

『カササギたちの四季』


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著:道尾秀介
解説:米澤穂信
装画:影山徹
装幀:片岡忠彦
出版社:光文社

発売日:2014年2月13日
定価:本体580円
文庫判
ISBN:978-4-334-76692-4

 道尾秀介『カササギたちの四季』が文庫化されました。
 今回、その解説をお任せいただきました。

 とんでもなく手が込んでいるのに、技巧が決して前面に出しゃばらず、物語をしっかりと下支えする。道尾秀介の小説に共通して見られるそんな美意識は、本作にも横溢しています。
 今回は、「嘘」というキーワードを用いて解説を組んでみました。

 あたたかみのあるミステリ連作で、読んでいても解説を書いていても、楽しい仕事になりました。
posted by 米澤穂信 at 18:27| 解説・推薦・編纂

2013年06月06日

『十蘭ラスト傑作選』


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著:久生十蘭
解説:阿部日奈子
装画:北川健次
装幀:山元伸子
出版社:河出書房新社

発売日:2013年6月6日
定価:本体760円
文庫版
ISBN:978-4-309-41226-9

 透徹した知、乾いた浪漫、そして時には抑えきれぬ筆。十蘭が好きだ。

 河出文庫が刊行していた久生十蘭短編集シリーズが、七巻でひとまず最終巻となります。
 そのオビ文を書かせていただきました。

 以下に収録作を挙げます。

風流旅情記

雪原敗走記
フランス伯N・B
幻の軍艦未だ応答なし
カイゼルの白書
青髯二百八十三人の妻
信乃と浜路

 海の十蘭に外れなし、南方の海を行く「風流旅情記」、畝傍消失とドッガーバンク事件を並べ冒険小説の旨味も味わえる「幻の軍艦未だ応答なし」。推定処女作「蠶」。ノンフィクション的な筆致がロシアの大地に及んで秘境小説かと思うような「雪原敗走記」など、短編集七冊目に至っても落ち穂拾い的な肩すかし感が皆無の一冊です。なんといっても、ドイツ皇帝(退位済み)の日々を描いた「カイゼルの白書」が本当に面白い。十蘭にはユーモア短篇も多々ありますが、これが一番好きです。

 私などが「小説の魔術師」を推薦するなど、と尻込みもしましたが、せめて新しい読者に届く一助になればと思います。
posted by 米澤穂信 at 00:00| 解説・推薦・編纂

2012年06月15日

『時計館の殺人』


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著:綾辻行人
装画:喜国雅彦
装幀:坂野公一(welle design)
解説:米澤穂信
出版社:講談社

発売日:2012年6月15日
定価:上下巻ともに本体676円
文庫判
ISBN:(上)978-4-06-277294-5
/(下)978-4-06-277295-2

 綾辻行人『時計館の殺人』が、版を改め新装版として刊行されました。
 今回、その解説をお任せいただきました。

 日本ミステリのマイルストーンであると同時に、個人的にも非常に思い入れの深いミステリです。
 もし昔日の私に「お前はいずれ『時計館の殺人』の解説を書くのだぞ」と教えたら、震え上がって夜も眠れなくなるでしょう。
 思い出話ばかりではご退屈と、微力ながら内容の読解を載せていただきました。

 新本格黎明期にミステリを読み始めた同志たちと、そしてこれからミステリを読んでいく皆さまに、少しでも推薦の役が果たせればと思っています。
posted by 米澤穂信 at 00:00| 解説・推薦・編纂

2011年04月01日

『パイド・パイパー』


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著:ネヴィル・シュート
解説:北上次郎
装画:杉田比呂美
装幀:東京創元社装幀室
出版社:東京創元社

発売日:2002年2月22日
定価:本体700円
文庫判
ISBN:978-4-488-61602-1

 ひとしずくもたらされる善意。その尊さが、胸に迫る。

 以前、「ミステリーズ!」のエッセイ「私の一冊」で、『パイド・パイパー』について書きました。
 その中の一文をオビに使って頂くことになりました。
 エッセイから引かれた関係上、オビ文には前後があります。さすがに全部書くわけにはいきませんが、少しご紹介します。
 年老いた紳士が「子供は私の責任」と確信し、気負うでなく、おためごかしでもなく、ただ自らの責任を全うするために全ての困難に立ち向かっていく。その高潔さに、心を打たれる。
 誰もが自分のことで精一杯な状況下で、それでもひとしずくもたらされる善意。その尊さが、胸に迫る。
 この小説が書かれたのは一九四二年。イギリスとドイツはまだ戦っていた。けれど、ネビル・シュートの筆は、敵を描く時でさえ品位を失わない。
『パイド・パイパー』は気高い小説です。巡り合わせとはいえ、私などがお薦めする機会を得られたことを光栄に思っています。
posted by 米澤穂信 at 00:00| 解説・推薦・編纂

2010年03月05日

『青春探偵団』

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著:山田風太郎
解説:米澤穂信
装画:黒田硫黄
装幀:INFOBAHN
出版社:ポプラ社

発売日:2010年3月5日
定価:620円
文庫判
ISBN:978-4-591-11678-4

 山田風太郎『青春探偵団』がポプラ文庫ピュアフルから復刊されました。
 今回、その解説をお任せいただきました。

 好きな大作家の作品ですから、ともすれば気圧されそうになるところを深呼吸して解説を付けました。
 本書に至るまでの「天国荘」の系譜(山田風太郎が入っていたのは「青雲寮」ではなかった!)から始まり、各篇のミステリ的な読みどころを紹介する形になっています。

 それにしてもこの装幀には驚きました。
 山風と黒田硫黄を合わせるとは、ちょっと思いつかなかったです。
posted by 米澤穂信 at 00:00| 解説・推薦・編纂

『黄金三角』

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著:モーリス・ルブラン
訳:南洋一郎
挿画:奈良葉二
解説:米澤穂信
装画:牧 秀人
装幀:モリサキデザイン
出版社:ポプラ社

発売日:2010年3月5日
定価:609円
文庫判
ISBN:978-4-591-11674-6

 モーリス・ルブラン『黄金三角』がポプラ文庫で復刊されました。
 今回、その解説をお任せいただきました。

 ルブランの復刊というより、南洋一郎訳の復刊という意味合いが濃いように思います。
 ですが解説はその辺りの事情には触れず、第一次世界大戦という特別な事情の中で書かれた本書について、私なりの視点と考えを記しました。

 この冒険譚が多くの子供に届く一助になればと思っています。
posted by 米澤穂信 at 00:00| 解説・推薦・編纂

2009年07月10日

『夏の口紅』


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著:樋口有介
解説:米澤穂信
装画:中島梨絵
装幀:野中深雪
出版社:文藝春秋

発売日:2009年7月10日
定価:税込580円
文庫判
ISBN:978-4-16-753108-9

 樋口有介『夏の口紅』が文春文庫で復刊されました。
 今回、その解説をお任せいただきました。

 なにしろ文体が特徴的な小説(というか、作家)です。
 その魅力をどうお伝えしたものか迷いましたが、好きだというだけで解説を書ききる芸はないので、ちょっとばかり本作の占める位置や意味、一読者としての私が受け止めた「樋口有介的な手法」についても書きました。

 穿ちすぎではない、と信じたいです。
posted by 米澤穂信 at 00:00| 解説・推薦・編纂

2009年06月24日

『七人のおば』


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著:パット・マガー
解説:北村薫
装画:朝倉めぐみ
装幀:矢島高光
出版社:東京創元社

発売日:1986年8月22日
定価:本体800円
文庫版
ISBN:4-488-16404-8

 結婚? 考えてません。『七人のおば』を読んだら怖くって ―― 米澤穂信

 創元推理文庫50周年記念企画として、特装帯を使ったフェアが行われています。
 今回、『七人のおば』の帯を書かせていただきました。
 ちょっとユーモラスな帯になりました。店頭で見かけたらくすりと笑って、そして手にとっていただけると嬉しいです。
posted by 米澤穂信 at 00:00| 解説・推薦・編纂

2007年08月06日

『敗北への凱旋』


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著:連城三紀彦
解説:米澤穂信
装画:上村一夫
出版社:講談社

発売日:2007年8月6日
定価:税込840円(本体800円)
新書版
ISBN:978-4-06-182546-8

 講談社ノベルス25周年記念企画として、現在手に入りにくい作品を「綾辻・有栖川セレクション」として復刊する試みが進んでいます。
 第一弾として、連城三紀彦『敗北への凱旋』が復刊となりました。
 光栄なことに、その解説をお任せいただきました。

 物語に触れて語るには、あまりに大きな小説です。「暗号ミステリ」としての『敗北への凱旋』、という視点に絞るべきだと判断しました。
 本篇より先に読まれることも想定していますが、出来れば読後に読んでいただいた方が、強調部分の意味がわかっていただけるのではと思います。

 このような、あまりに幸福な仕事に対し、思い入れが過ぎていないか祈るような気持ちです。
posted by 米澤穂信 at 00:00| 解説・推薦・編纂