2015年08月16日

三都物語です


 こんにちは。米澤です。

 新刊『王とサーカス』(東京創元社)の発売に伴い、七月末から八月上旬にかけて、四ヶ所でサイン会を開いていただきました。
 ……東京以外でのサイン会もちょくちょく経験があるとはいえ、四ヶ所というのはさすがに初めてです。各百人の定員ですので、計四百人。それほどの読者は来て下さるのか、そして私の体力が保つのか、いろいろ不安はあったものの楽しみにしていました。

 最初は池袋、次は新宿会場でした。
 新宿は、これまでも幾度もお世話になっている紀伊國屋書店新宿本店さんが会場でしたので、勝手もわかっています。控室から会場までのルートに始まって、手伝っていただく係の方の動線、手洗場の場所まで把握していますので、心配なことはありませんでした。
 ですがジュンク堂池袋本店さんは初めて。何が出来るというわけでもないのですが少し早めに行って、あちらこちらと見てまわっているうち、サイン会に来て下さる読者の方と鉢合わせして少しお話したりもしました。

 池袋会場は四会場で最初に、新宿会場は最後にサイン会整理券の配布を始めたのですが、どちらも即日予約満了となりました。池袋は「(単行本が一年以上ぶりなので)大丈夫かな……」、新宿は「(既に300人分以上の整理券が各所で配布済みなので)大丈夫かな……」と思っていましたが、蓋を開けてみればこの結果、これにはさすがに驚き、大勢の方が待っていて下さったのだと実感するといろいろ思うところもあり。
 当日は遠方の東北、北海道、中国地方、中国からの読者にも来て頂いていました。喜んで頂けていればいいなと思います。

 翌週は名古屋、大阪とまわりました。
 名古屋は滞在時間が短く、名古屋駅の周辺しか見ることが出来なかったのですが、やはり人々の装いが華やかですね。休日ということもありましたが、名古屋駅島屋前、待ち合わせの名所大時計のまわりは、パステルカラーからビビッドカラーまで一通り揃うように思うほど、実に色彩が豊かでした。
 男性は無柄のシャツを、女性は何かイベントがあったのか、それとも夏のお出かけの定番なのか、浴衣姿を多く見かけました。あれがほんとの名古屋帯……だったのかどうかは、よく見ませんでしたけれども。

 星野書店近鉄パッセ店さんで開かれたサイン会はスムーズに進み、一人あたりほんの一言二言ぐらいではありましたが、読者の方々とお話し出来たのは嬉しいことでした。名古屋でのサイン会は『秋期限定栗きんとん事件』以来でしたが、前回も来て下さった方も、幾人かいらっしゃいました。既に結構な月日が流れていますが、私の本を読み続けてくださったのだと思うと、ありがたい限りです。

 スケジュールの都合上、翌日の昼は新幹線の車内で駅弁と食べることになっていましたので、名古屋で帰る駅弁をいろいろ調べ、楽しみにもしていました。ところが当日は暑さにやられたのかいまひとつ食欲がなく、味の濃いものは避けたい気分でしたので、帆立の炊き込みご飯に落ち着きました。おいしかったのですが、名にし負う名古屋飯を食べ損ねたような気がしたのは、残念ではあります。

 大阪での会場は紀伊國屋書店グランフロント大阪店さんでした。とにかく灼熱の日で、空調の効いた控室に入った瞬間、「生きて辿り着けた……」という思いを禁じ得ませんでした。
 会場の壁には、驚いたことに、『王とサーカス』の舞台であるネパールの写真が幾枚も飾られていました。それも、小説に関わりのある場所や道具を選ぶ凝りようです。拙作からの引用文も掲示されていて、たいへん嬉しく、感慨深いことでした。
 近畿には講演会などでしばしば伺っていたのですが、大坂でのサイン会は『折れた竜骨』以来、二回目になります。こちらでも、前回のサイン会にも来て下さったという方が大勢いらっしゃいました。

 当日は大坂に泊まりました。
 サイン会場で読者の方から頂いたメッセージで梅田においしいお好み焼き屋があると知ったので、そちらで昼を済ませたのですが、なるほどおいしかった。供されたのは私がイメージしていたモダン焼きとは異なる食べ物でしたが、名物に旨いものなしの諺を覆す経験でした。
 せっかくと思い難波から心斎橋にかけて少し歩きましたが、歩いている人々の服装が基本的にモノトーンであることに驚きました。白と黒を上手に組み合わせ、ほとんど色を使わない。もし使うとしたら、目を欺くような綺麗な赤や深い緑を思い切って使う。柄はないか、あるとしても細いストライプで、チェックはまったく見かけませんでした。
 吉祥寺一ヶ所を見て東京全体のファッションを語るような愚を犯しているのかもしれませんが、シックやスタンダードを良しとする文化があるのかなと感じる滞在でした。

 帰り、この一週間は少したいへんだったので楽しいことをしても良かろうと、新幹線の中でスジャータのアイスクリームを優雅に頂く予定でした。
 しかしころりと眠ってしまい、気がついたら新幹線は小田原駅を通過。慌てて買った白桃のアイスはアイスクリームではなく幾分かシャーベットに近いアイスミルク、おいしいのですが望んでいた食感ではなく、ついでに言えばかちこちに凍っていたので表面をスプーンでつついているうちに新横浜に到着し、品川までの十数分で一気呵成にかきこむ羽目になりました。
 これ違う、私が予定していた優雅なアイスクリームタイムとは違うという悔いが残りましたので、またいずれ機会がありましたら、出張サイン会にお招きいただきたいと思います。

 関係者の皆さま、サイン会に来て下さった皆さま、ありがとうございました。
posted by 米澤穂信 at 17:38| 近況報告

2015年08月15日

「真実の10メートル手前」


「ミステリーズ!」vol.72 AUGUST 2015(東京創元社)収録
発売日:2015年8月12日 雑誌定価:1,296円



 今回だけは、美しく撮る必要がある。




 雑誌「ミステリーズ!」に寄稿した短篇です。

 東洋新聞大垣支局に勤める太刀洗万智は、名古屋本社に掛け合ってカメラマンを一人借り受けると、名古屋駅から特急「しなの」に乗り込んだ。
 目的は、あるIT企業のマスコット的存在だった女性のコメントを取ること。その女性は会社の破綻に伴って失踪し、あらゆるメディアがその行方を捜していた。太刀洗は独自のルートから情報を手に入れ、どこよりも速く彼女のコメントを記事にしようと目論んでいた。
 彼女の居場所を推理するために与えられた条件は、数分の通話記録だけ。しかし太刀洗はその言葉の端々に、重要なヒントを見出していく。
 やがて到着したある街で太刀洗は取材対象の足取りを追い、徐々に彼女へと近づく。推理の手がかりを隈なく拾い上げ、彼女までの距離は、10メートルを切ろうとしていた。


王とサーカス』と同じく、太刀洗万智が主役の短編になります。
 ミステリとしては、テキスト読解ものということになるかと思います。

posted by 米澤穂信 at 23:20| 雑誌等掲載短篇

2015年07月30日

『王とサーカス』


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KINGS AND CIRCUSES

著:米澤穂信
写真:岩郷重力+K.K
装幀:岩郷重力+K.K
出版社:東京創元社

発売日:2015年7月29日
定価:本体1,700円(税別)
四六判上製
ISBN:978-4-488-02751-3


信念を持つこととそれが正しいことの間には関係がない。




 19冊目です。

 新聞社に勤めていた太刀洗万智は、やむを得ない事情から五年目にして職を辞し、フリーの記者として生きていこうとする。
 雑誌社から紹介された仕事に便乗し、事前取材と休暇を兼ねて何気なく訪れたネパールで、彼女は大事件に遭遇した。入国の翌日、ネパール国王が殺されたのだ。
 伝えることを自らの仕事と考える太刀洗は、カメラを手に取材を始める。突然の大事件に混乱する人々の声を聞き取るうち、彼女は幸運にも、国王殺害の現場近くにいた軍人と会う機会を得る。指定された場所に向かいながら、太刀洗は奇妙な緊張を覚えていた。この取材は、危険なのではないか?
 彼女の予感は当たった。しかし危険は、想像とは別の形で襲ってきた。
 ――太刀洗万智はこの国で、自らの信念を問われることになる。


 長篇ミステリです。
さよなら妖精』とは登場人物の一部が共通していますが、続篇というわけではありません。
 作中で取り上げられる事態の「真犯人」を当てるのは、ちょっと骨が折れる仕事になるでしょう。
posted by 米澤穂信 at 00:12| 既刊情報

2015年07月01日

『王とサーカス』サイン会


 こんにちは。米澤です。

『王とサーカス』(東京創元社)の刊行に際し、サイン会を開いて頂けることになりました。
 場所は東京です。
 そして東京です。
 さらに名古屋です。
 しかも大阪です。
 ……本当に?


【東京・池袋】
ジュンク堂書店 池袋本店様

7月2日をもちまして、池袋会場は申込受付満数終了です。
ありがとうございます。
以下は当日のご案内のために残してあります。

日 時:2015年7月31日(金)19:00 〜
場 所:ジュンク堂書店池袋本店 1階エントランスにて
定 員:100名
 
参加方法:2015年7月1日(水)午前10:00時より3階カウンターにて、もしくはお電話にてご予約いただいた方に参加整理券を配布いたします。
電話:03-5956-6111(月〜土10:00-23:00・日・祝10:00-22:00)

ジュンク堂書店池袋本店詳細HP
http://www.junkudo.co.jp/mj/store/event_detail.php?fair_id=9541



【東京・新宿】
紀伊國屋書店 新宿本店様

7月11日をもちまして、新宿会場は申込受付満数終了です。
ありがとうございます。
以下は当日のご案内のために残してあります。

日 時:2015年8月1日(土) 17:00 〜
場 所:紀伊國屋書店新宿本店 8階 イベントスペース
定 員:100名 

参加方法:2015年7月11日(土)午前10:00時より2階レジカウンターにて参加整理券を販売いたします。
*お電話でのご予約は整理券残部がある場合のみ、7月13日(月)午前10:00より承ります。

紀伊國屋書店新宿本店詳細HP
https://www.kinokuniya.co.jp/c/store/Shinjuku-Main-Store/20150701103913.html



【名古屋】
星野書店 近鉄パッセ店様

7月19日、名古屋会場の申込受付満数終了を確認しました。
ありがとうございます。
以下は当日のご案内のために残してあります。

日 時:2015年8月8日(土) 15:00 〜
場 所:星野書店近鉄パッセ店 店内特設会場にて
定 員:100名 

参加方法:2015年7月1日(水)午前10:00時よりレジカウンターにて参加整理券を販売いたします。
*お電話でのご予約は整理券残部がある場合のみ、7月2日(木)午前10:00より承ります。
電話:052-581-4796(10:00〜21:00)

星野書店近鉄パッセ店詳細HP
http://bkhoshino.html.xdomain.jp/



【大阪】
紀伊國屋書店 グランフロント大阪様

7月3日をもちまして、大坂会場は申込受付満数終了です。
ありがとうございます。
以下は当日のご案内のために残してあります。

日 時:2015年8月9日(日) 15:00 〜
場 所:紀伊國屋書店グランフロント大阪店 店内特設会場にて
定 員:100名 

参加方法:2015年7月1日(水)正午より1番カウンター、もしくはお電話にてご予約、お買いあげの先着100名様に整理券を配布いたします。
電話:06-7730-8451(10:00〜21:00)

紀伊國屋書店グランフロント大阪様詳細HP
https://www.kinokuniya.co.jp/contents/pc/store/Grand-Front-Osaka-Store/20150701115817.html




 二ヶ所までは経験がありましたが、四ヶ所は私も初めてです。
 どの会場も、賑わってくれるといいのですが……。

 体力が切れないよう、がんばります。
 当日、どうぞよろしくお願いいたします。
posted by 米澤穂信 at 00:00| イベント告知

2015年06月26日

『リカーシブル』


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(四六判)
著:米澤穂信
装画:笹部紀成
装幀:新潮社装幀室
出版社:新潮社

発売日:2013年1月22日
定価:本体1,600円(税別)
四六判仮フランス装
ISBN:978-4-10-301473-7

(文庫判)
著:米澤穂信
装画:笹部紀成
装幀:新潮社装幀室
出版社:新潮社

発売日:2015年6月26日
定価:本体750円
ISBN:978-4-10-128783-6



「バカじゃないの。あんたは人の話をどう聞いてたのよ」
 喉の痛みを忘れ、わたしは叫ぶ。
「強くないから、強いふりするんでしょ!」




 17冊目です。

 中学一年生の越野ハルカは、家の都合で母の故郷に引っ越してきた。新しい環境に戸惑いながらも何とか学校になじもうと、ハルカは神経を張り詰める。その甲斐あってか、在原リンカという友人を得ることができた。

 その一方で、弟のサトルには奇妙なことが起きていた。
 この町で、これから起きることがわかるというのだ。かまってほしくて言った嘘だと、ハルカはサトルに取り合わない。
 しかしある日、サトルの言葉通りに小さな事件が起き、そして言葉通りに解決する。

 そしてサトルは、泣き出しそうになりながら、学校へと続く橋を怖がる。
「ここから落ちた人がいるんだ。ぼく、知ってる」

 ……この町はどこかおかしい。



 長篇ミステリです。
 彼女のしあわせを願っています。
posted by 米澤穂信 at 00:00| 既刊情報

2015年03月27日

『星読島に星は流れた』


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著:久住四季
装画:星野勝之
装幀:岩郷重力+WONDER WORKZ。
出版社:東京創元社

発売日:2015年3月20日
定価:本体1,600円
四六判仮フランス装
ISBN:978-4-488-01788-0


 久住四季の新刊刊行にあたり、オビ文を書かせていただきました。
 オビの裏表紙にあたる部分に、少し長い推薦文を寄せています。表紙部分の一文はそこから採られています。
 ここにその推薦文の全文を載せます。

天上へのあこがれと地上の欲求とが交わる一点で殺意が生まれる、その構図が美しい。胸おどる舞台設定と、ロジックを扱う手つきの確かさに、ミステリを読む楽しみとはこういうものだったと嬉しくなる。『星読島に星は流れた』という題もいい。久住四季の新たなる一歩に接し、たちまちその第二歩が待ち遠しくなった。

 なにぶんミステリですので、書きすぎるわけにはいきません。ですが、楽しく読んだということだけは何とかお伝えしたいと思っていました。
「題もいい」という素っ気ない一文に、読後、同意していただけることを願っています。
posted by 米澤穂信 at 06:03| 解説・推薦・編纂

2014年12月26日

『蝦蟇倉市事件〈2〉』『街角で謎が待っている』


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(四六判)
著:秋月涼介/北山猛邦/越谷オサム/桜坂洋/村崎友/米澤穂信
装画:佐久間真人
装幀:岩郷重力+WONDER WORKZ。
出版社:東京創元社

発売日:2010年2月24日
定価:1,785円
四六判仮フランス装
ISBN:978-4-488-01762-0

(文庫判)
解説:福井健太
装画:田中寛崇
装幀:西村弘美
出版社:東京創元社

発売日:2014年12月26日
定価:972円(税込)
文庫判
ISBN:978-4-488-40058-3

 東京創元社が編んだアンソロジー企画『蝦蟇倉市事件〈2〉』に拙作「ナイフを失われた思い出の中に」を寄稿しました。
 文庫判は『街角で謎が待っている』と改題されています。
 以下に収録作一覧を記します。

秋月涼介「消えた左腕事件」
北山猛邦「さくら炎上」
越谷オサム「観客席からの眺め」
桜坂洋「毒入りローストビーフ事件」
村崎友「密室の本」
米澤穂信「ナイフを失われた思い出の中に」
posted by 米澤穂信 at 00:00| 共著・アンソロジー

2014年11月30日

『連城三紀彦 レジェンド』


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著:連城三紀彦
選:綾辻行人 / 伊坂幸太郎 / 小野不由美 / 米澤穂信
装幀:下山隆(Red Rooster)
出版社:講談社

発売日:2014年11月14日
定価:本体590(税別)円
文庫判
ISBN:978-4-06-277981-4

 連城三紀彦のご逝去を悼み、その筆業を改めて広く紹介するべく、アンソロジーが編まれました。
 縁あってその収録作選定に加わらせていただきました。
 以下に収録作を記します。

「依子の日記」
「眼の中の現場」
「桔梗の宿」
「親愛なるエス君へ」
「花衣の客」
「母の手紙」

 巻末には特別対談として、

「ミステリー作家・連城三紀彦の魅力を語る 綾辻行人×伊坂幸太郎」

 が入っています。


 今回、各選者がまず三編ずつ推薦し、後にそこから一編ないし二編が採られる形で選定が進められました。
 私が推したものからは「花衣の客」が採られています。
 なお、他に挙げた二編は「白蘭」と「午後だけの島」でした。どちらも一癖ある、ちょっと忘れがたいような短編です。本書をきっかけに連城三紀彦を読んでいこうと思われた方に、わずかばかりでもご参考になればと思います。
posted by 米澤穂信 at 23:25| 解説・推薦・編纂

2014年10月16日

「金曜に彼は何をしたのか」


「小説すばる」2014年11月号(集英社)収録
発売日:2014年10月16日 雑誌定価(本体):852円



 自己満足のための儀式は済んでるのさ。




 雑誌「小説すばる」に寄稿した短篇です。

 期末テストの準備期間として授業は午前で終わり、部活動も委員会活動も禁止になった金曜日。松倉と堀川は、図書室の事務を滞らせるわけにはいかないと残業をしていた。そこには一人、図書委員の地位を悪用して閉室のはずの図書室で試験勉強をする後輩、植田もいた。
 他愛ない会話を交わし、週が開けて月曜日、期末テスト初日を終えた堀川の下に植田がやってくる。相談に乗ってくれませんか、と。植田の兄が、金曜の夜に校舎の窓ガラスを割って侵入したというのだ。
 植田の兄曰く、アリバイはあるという。けれど彼はそれを口にしない。心配している家族のためにも、なんとかその「アリバイ」とは何か、調べる手伝いをしてほしい。そう懇願する後輩を、堀川は邪険には出来なかった。たまたま一緒に話を聞いた松倉と連れだって、植田の家へと向かう。
 一見、特に変わったところのない高校生の部屋。堀川たちはそこから、金曜の夜に彼が何をしていたのか、アリバイを立証しようとする。

913」「ロックオンロッカー」に続くシリーズ第三作になりますが、密接な関係はないので単独でもお読み頂けます。

posted by 米澤穂信 at 00:00| 雑誌等掲載短篇

2014年08月01日

第11回ミステリーズ!新人賞


 こんにちは。米澤です。

 現在発売されている「ミステリーズ!」(vol.67 OCTOBER 2014)に、浅ノ宮遼氏の手になる第11回ミステリーズ!新人賞受賞作、「消えた脳病変」が掲載されています。

 選考委員の一人として、この賞の選考に参加いたしました。本誌には選評も掲載されています。
 知的な興奮を楽しんでいると思わぬ伏兵に横からやられる、良いミステリでした。そのあたりのことをもう少し詳しく書いています。

 受賞作も、どうぞよろしくお願いいたします。
posted by 米澤穂信 at 00:00| お知らせ

2014年07月10日

『時の罠』


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著:辻村深月・万城目学・湊かなえ・米澤穂信
装画:mocchi mocchi
装幀:大久保明子
出版社:文藝春秋

発売日:2014年7月10日
定価:本体460(税別)
文庫判
ISBN:978-4-16-790146-2

 文藝春秋「別册文春」掲載作から、「時間」をテーマにした短篇を集めてアンソロジーが編まれました。
 その中に拙作「下津山縁起」を採っていただきました。
 ある犯行計画の進行を描く、サスペンスフルな一篇です。
 いや、どうだろう……。

 以下に収録作を記します。

「タイムカプセルの八年」辻村深月
「トシ&シュン」万城目学
「下津山縁起」米澤穂信
「長井優介へ」湊かなえ
posted by 米澤穂信 at 00:00| 共著・アンソロジー

2014年06月21日

「ほたるいかの思い出」


「小説新潮」2014年7月号(新潮社)収録
発売日:2014年6月21日 雑誌定価(本体):861円



 声に出して、
「負けるもんか」
 と言ってみた。でも、波の音が大きくて、情けないぐらいに小さくしか聞こえない。もう一度、腹に力を入れて、
「負けるもんか」
 と叫んだ瞬間、自分ほど勇敢な小学生がこの世にいるだろうかと思っていた。




 雑誌「小説新潮」に寄稿した短篇です。

 琴座流星群がよく見えるという新月の晩、わたしは新婚の夫とベランダに出て、鍋物をしながら流れ星を待つことにした。ところが用意が早すぎて、夕食が済んでも流星群のピークにはまだ間がある。夫は空ばかり見上げていたが、
「そうか。今夜は、そういう夜か」
 と呟くと、子供の頃の思い出を話し始めた。
 小学四年生の春。夫は虫取り網を持って、こごえるような夜の富山湾へと自転車を走らせていた。春の海に打ち寄せられるというほたるいかを採って、父と母に喜んでもらうために……。
 その思い出話は、やがてむごい結末を迎える。そしてわたしは、夫の話には一つだけ奇妙な点があることに気づいていた。

 山本周五郎賞受賞記念短篇として、選評掲載号に載せて頂きました。
posted by 米澤穂信 at 00:00| 雑誌等掲載短篇

2014年05月15日

受賞しました


 こんにちは。米澤です。

 拙作『満願』が、第27回山本周五郎賞を受賞しました。
 もしクオリティの低いものを書いてしまったら、それは単行本未収録にして頂くというお約束をした上で取りかかった仕事でした。自分がどういうミステリを愛してきたのか、それを思い出しながら一作一作を書いてきました。
 それがこのような栄誉を頂くことになり、たいへん光栄に思っています。

 読んで下さった皆様、書店や出版社、関係者の皆様にご報告します。
 ありがとうございました。
posted by 米澤穂信 at 00:00| お知らせ

2014年05月14日

『世界堂書店』増刷決まりました


 こんにちは。米澤です。

『世界堂書店』の増刷が決まりました。
 特にテーマを定めず、ミステリというジャンルにも限ることなく、無制限に良い短編だけを集めるという今回の方針はおそろしいものでした。枚数や権利上の問題から当初のリストは幾度も変更を迫られ、アンソロジーにはこんな困難があるものかと思い知ることもありました。

 ですが素晴らしい装幀に恵まれ、こうして多くの読者のお手元にお届け出来たことをとても嬉しく思います。
「あれ良かったよね」「これ凄かったね」という読者の声を仄聞するたび、「だよね!」と気持ちが浮き立っています。

 ありがとうございます。引き続き、よろしくお願いいたします。
posted by 米澤穂信 at 00:00| お知らせ

2014年05月08日

『世界堂書店』


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編纂:米澤穂信
装画・装幀:森ヒカリ
出版社:文藝春秋

発売日:2014年5月9日
定価:本体770円
文庫判
ISBN:978-4-16-790101-1


 今回、機会を頂きまして、アンソロジーを編むことになりました。

 率直に申し上げて、僭越であったという思いは拭えません。化け物揃いの文芸界にあって、なぜ私だったのか。身が縮こまるようなおそれを感じずにはいられません。
 しかし、恐縮して辞退するより蛮勇をふるって力を尽くした方が、一人でも二人でも、面白い小説に出会わせられることも確かです。場合によっては、誰かが一生の友となるような小説に会う、その契機になれるかもしれない。それならば、私の趣味を公衆の面前に晒すことにも、何らかの意味はあるのだろうと思いました。

 おそれはあっても、こう申し上げることに躊躇いはありません。いい短編、揃いました。
 お手にとっていただければ嬉しいです。



 美しい忘却の傍らに残酷な忘却を配し、無常というにはあまりにむごい結末を迎える「源氏の君の最後の恋」(マルグリット・ユルスナール フランス 多田智満子・訳)。

 この小説そのものにも何かのまじないがかかっているのではないかと思わせる、「破滅の種子」(ジェラルド・カーシュ イギリス 西崎憲・訳)。

 かつて私に植え付けられたある種の恐怖症を、今度は別の誰かに植え付けられたらと願って。「ロンジュモーの囚人」(レオン・ブロワ フランス 田辺保・訳)。

 まさかの破壊力。SFは絵だとは聞いていましたが、こんな絵を見せられようとは。「シャングリラ」(張系国 台湾 三木直大・訳)。

 恍惚とするようなシチュエーションのみから成り立つ、エキゾチズム極まる一篇。「東洋趣味」(ヘレン・マクロイ アメリカ 今本渉・訳)。

 卑俗さによって貶められたものが、高潔さによって救われるカタルシスのある話……本当に? 「昔の借りを返す話」(シュテファン・ツヴァイク オーストリア 長坂聰・訳)。

 もろく美しいものが、時の流れと共に失われる。それ自体は当然としても、もう少し、誰かが惜しんであげてほしかった。「バイオリンの声の少女」(ジュール・シュペルヴィエル ウルグアイ 永田千奈・訳)。

 乏しい読書経験から予想した展開の全てが外れ、「いや面白いものを読んだ」としか言えなくなった、忘れがたい「私はあなたと暮らしているけれど、あなたはそれを知らない」(キャロル・エムシュウィラー アメリカ 畔柳和代・訳)。

 特別さは時間によって失われる。けれど、時間を残酷と見るのは、一人称的な見方に過ぎない。次があるのだ。「いっぷう変わった人びと」(レーナ・クルーン フィンランド 末延弘子・訳)。

「物語の類型」に囚われていたことを思い知らされる。三〇〇年前のお話に! 翻訳の魅力も異様な、「連瑣」(蒲松齢 中国 柴田天馬・訳)。

 正常の中に異常が忍び寄れば、それはもちろん怖い話になる。でも、異常の中に忍び寄る正常が、まさかこんな効果を生むなんて。お年寄りは大切にしましょう。「トーランド家の長老」(ヒュー・ウォルポール イギリス 倉阪鬼一郎・訳)。

 これもまた、狂気の中の正気か。死が横溢する世界(比喩ではなく!)における尊い奇跡の物語にして、傑作ミステリ。正直に言って、真相は看破出来ませんでした。「十五人の殺人者たち」(ベン・ヘクト アメリカ 橋本福夫・訳)。

 セピア色の神話的な物語がうつくしき復讐によってビビッドに彩られていく、今後永遠に愛するだろう「石の葬式」(パノス・カルネジス ギリシア 岩本正恵・訳)。

 孤独が何によって救われるか、それは余人にははかりえない。そのことこそが、孤独だと思う。「墓を愛した少年」(フィッツ=ジェイムズ・オブライエン アイルランド 西崎憲・訳)。

 海の彼方へと旅立っていった魂も、八月になれば戻ってくる。おかえりなさいませ。「黄泉から」(久生十蘭 日本)。



 そして最後に、解説にかえて拙文を載せて頂きました。
 どこかのだれかがどれかを(できればどれをも)愛してくれますように。心から、そう願っています。




まとまった(でも背景色の)収録作一覧

源氏の君の最後の恋(マルグリット・ユルスナール 多田智満子・訳)
破滅の種子(ジェラルド・カーシュ 西崎憲・訳)
ロンジュモーの囚人たち(レオン・ブロワ 田辺保・訳)
シャングリラ(張系国 三木直大・訳)
東洋趣味(ヘレン・マクロイ 今本渉・訳)
昔の借りを返す話(シュテファン・ツヴァイク 長坂聰・訳)
バイオリンの声の少女(ジュール・シュペルヴィエル 永田千奈・訳)
私はあなたと暮らしているけれど、あなたはそれを知らない(キャロル・エムシュウィラー 畔柳和代・訳)
いっぷう変わった人々(レーナ・クルーン 末延弘子・訳)
連瑣(蒲松齢 柴田天馬・訳)
トーランド家の長老(ヒュー・ウォルポール 倉阪鬼一郎・訳)
十五人の殺人者たち(ベン・ヘクト 橋本福夫・訳)
石の葬式(パノス・カルネジス 岩本正恵・訳)
墓を愛した少年(フィッツ=ジェイムズ・オブライエン 西崎憲・訳)
黄泉から(久生十蘭)
posted by 米澤穂信 at 01:48| 解説・推薦・編纂

2014年04月24日

『ミステリマガジン700 国内編』

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編:日下三蔵
装画・装幀:森ヒカリ
出版社:早川書房

発売日:2014年4月24日
定価:本体1,140(税別)
文庫判
ISBN:978-4-15-180302-4

 早川書房「ミステリマガジン」が700号を数えたことを記念し、その掲載作からアンソロジーが編まれました。
 今回その中に、拙作「川越にやってください」を採っていただきました。
 小品ではありますが、いっぷう変わった短編です。こうしてもう一度皆様に読んで頂ける機会が得られたこと、嬉しく思っています。

 以下に収録作一覧を記します。

「寒中水泳」結城昌治
「ピーや」眉村卓
「幻の女」田中小実昌
「離れて遠き」福島正実
「ドノヴァン、早く帰ってきて」三条美穂
「温泉宿」都筑道夫
「暗いクラブで逢おう」小泉喜美子
「死体にだって見おぼえがあるぞ」田村隆一
「クイーンの色紙」鮎川哲也
「閉じ箱」竹本健治
「聖い夜の中で」仁木悦子
「少年の見た男」原リョウ
「『私が犯人だ』」山口雅也
「城館」皆川博子
「鳩」日影丈吉
「船上にて」若竹七海
「川越にやってください」米澤穂信
「怪奇写真作家」 三津田信三
「交差」結城充考
「機龍警察 輪廻」月村了衛

エッセイ「証人席」 山田風太郎、渡辺啓助、日影丈吉、福永武彦、松本清張
posted by 米澤穂信 at 00:00| 共著・アンソロジー

2014年04月08日

『満願』増刷決まりました


 こんにちは。米澤です。

『満願』の二刷・三刷が相次いで決まりました。
 一篇一篇に丹精を込め、ミステリへの思いの丈をぶつけた一冊になったという自負はありましたが、いまミステリ短篇集というものが読者に喜んでもらえるのかどうかはわかりませんでした。
 こうしてひとつの結果を残せたこと、嬉しく思います。

 ありがとうございます。そしてどうぞ、引き続きよろしくお願いいたします。
posted by 米澤穂信 at 18:38| お知らせ

2014年03月26日

特設棚の本を選びました


 こんにちは。米澤です。

 拙宅の最寄りの書店は、いわゆるベストセラーしか置かないお店でした。送り込まれてくる本を並べ、大当たりもしないけれど少なくとも大外しもしない、堅実と言えば言える書店でした。
 それが最近、レジ前の小さなスペースに、ちょっとした特設棚を設けています。コミックが中心なのですが、見ればなるほど、一癖ある。「あ、好きな人がいるんだな」と思うだけで、何だか嬉しいものです。

 この企画も、そんなふうに思ってもらえればいいのですが。
 紀伊國屋書店新宿本店さんの特設棚に入れる本を、選びました。


 国内は定番ミステリを押さえつつ、最近読んで好きだったものも織り交ぜました。
 海外は、割と自由奔放に選びました。それだけに……自分の本棚を公衆の面前に晒しているようで、何というか、ほんのちょっとだけ、いたたまれないような気がします……。


 なにぶん書店さんの企画なので、いま流通している本からしか選べなかったのが残念です。まさか、あれもあれも切れているとは……。
 題して「米澤屋書店」。
 期間は、4月下旬までとのことです。
 お近くにお立ち寄りの際は、ちらりと見て頂ければと思います。

 紀伊國屋書店さんからも、以下のURLで告知されています。


 どうぞよろしくです。
posted by 米澤穂信 at 00:00| お知らせ

2014年03月20日

『満願』


man-gan.jpg


著:米澤穂信
写真:Jim Green/fStop/Getty Images
装幀:新潮社装幀室
出版社:新潮社

発売日:2014年3月20日
定価:本体1,600円(税別)
四六判上製
ISBN:978-4-10-301474-4



 天も見ていたに違いありません。




 18冊目です。

 四年前、当時の担当編集者さんと、捨てるところなきミステリ短篇集を作ろうと話し合いました。記憶に残る傑作ミステリ短篇集を挙げあう、楽しい時間でした。
 それから、「小説新潮」の企画「Story Seller」シリーズを主な舞台として、ミステリ短編を書き続けてきました。タイムスケジュールに追われることはあっても、いつも意識の片隅には「この短編は、あの日約束した短篇集に恥じることなく入れられるだろうか?」という問いがあったと思います。
 また今回、刊行に当たって、集英社「小説すばる」の当時の担当編集者さんの快諾を得て、そちらに載せて頂いた短編も入れることが出来ました。

 収録作は以下の通りです。

夜警
死人宿
柘榴
万灯
関守
満願

 お楽しみ頂けることを願っています。


第27回山本周五郎賞受賞作
posted by 米澤穂信 at 00:00| 既刊情報

2014年03月16日

『満願』サイン会




 申込受付満数終了です。
 ありがとうございます。



 こんにちは。米澤です。

『満願』のサイン会を開いていただけることになりました。


■米澤穂信『満願』刊行記念サイン会

○日時:平成26年4月4日(金) 19:00〜

○場所:紀伊國屋書店新宿本店 8階イベントスペース

○整理券の配布: 
3月19日(水)朝10時より紀伊國屋書店新宿本店2階文学・文庫カウンターにて『満願』(新潮社)本体価格1,600円をお買い上げの方先着120名様に整理券を配布いたします。

*恐れ入りますが、整理券の配布は新規にご購入頂いた方に限らせていただきます。
*整理券の配布はお一人様一枚とさせていただきます。
*当日は本にお客様の名前も入れさせていただきます(必須)

○電話予約:整理券の残がある場合に限り3月20日(木)より電話でのご予約も承ります。お1人様1枚とさせて頂きます。

問い合わせ・ご予約 新宿本店2階文学書売場 03-3354-5702

※3月中に電話予約された方でも、4/1以降のご購入にはすべて8%の消費税が適用されます。予めご承知ください。

※イベントの日時・時間については急な変更等ある場合がございます。詳細は新宿本店にお問い合わせください。

※定員になり次第、整理券の発行を終了させていただきます。尚、当サイトでの整理券配布終了のご案内は遅れる場合があります。整理券の残数については上記へお問い合わせください。

紀伊國屋書店新宿本店告知ページはこちら
http://www.kinokuniya.co.jp/c/store/Shinjuku-Main-Store/20140315100235.html


 とのことです。
 金曜開催ということで、少し遅めの時間からのスタートです。
 4月ですからそれほど寒くもならないと思いますが、花冷えということもあります。来ていただける方は、当日どうぞお気をつけください。

 では、当日新宿で、よろしくお願いいたします。
posted by 米澤穂信 at 17:23| イベント告知