2020年12月31日
今年の総括です
こんにちは。米澤です。
今年は、
1月 『巴里マカロンの謎』(創元推理文庫)刊行 「花影手柄」中篇
2月 『消えた脳病変』(浅ノ宮遼 創元推理文庫)解説 「花影手柄」後篇
3月
4月 日経新聞「半歩遅れの読書術」全四回
5月 「遠雷念仏」前篇
6月 「崖の下」 「ありがとう、コーヒーをどうぞ」 「里芋病」 「友情」 「遠雷念仏」中篇
7月 「遠雷念仏」後篇
8月 「バラ法」
9月 「落日孤影」前篇
10月 「落日孤影」後篇 ワテラスコモン・オンライン読書会
11月 ワセダミステリ・クラブオンライン講演会
12月 「桑港クッキーの謎」
といった感じでした。
世情が騒がしい中、小説の仕事に打ち込んだ一年でした。
史上、さまざまな疫病が流行し、終息していきました。
今回のそれが一日でも短くあることを願います。
posted by 米澤穂信 at 21:16| 近況報告
2020年12月11日
「桑港クッキーの謎」
掲載誌:「ミステリーズ!」(東京創元社) 発売日:2020年12月21日 |
わたし、誰にでも公平でありたいと思ったことは、一度もない。 |
船戸高校出身の芸術家縞大我が、サンフランシスコ美術展で特別賞を受賞。全国紙でも報道され、テレビでも取り上げられる騒ぎとなり、市はにわかに活気づく。そんな中、小鳩常悟朗は新聞部の堂島健吾から頼みごとをされる。いわく、
「小佐内を紹介してくれないか?」
新聞部員の健吾は、縞大我の学生時代の活動を調べるうち、縞が残した絵を見つけたのだ。だがそれはロシアの画家の絵にそっくりだった。練習のために模写したのかと思われたが、どうやらこの絵は県展に出展されていたらしい。
この絵は剽窃なのか? 健吾は卒業生の成功を祝うつもりで、彼の旧悪を暴いてしまったのか?
剽窃ではないと言える理由が、何かひとつでも見つからないか。健吾は藁にも縋る気持ちで、かつて絵にまつわる謎を解いた(ことになっている)小佐内を頼ろうとしている。
相談を受けた小佐内は言う。
「いやです」
まあ、そうだよね、と小鳩は思う。小市民たらんとする小佐内ゆきが、どうして鑑定士のまねごとをしなければならないのか。だけどそこはそれ、人情というものがあるじゃないか!
ふたりは紆余曲折の末、絵の正体に迫っていく。
謎のカギを握るのは――サンフランシスコ生まれのにくいやつ、フォーチュンクッキー。
調査と捜査の面白さを描ければと思った短編です。
お楽しみいただければ幸いです。
タグ:〈小市民〉
posted by 米澤穂信 at 00:00| 雑誌等掲載短篇
2020年10月06日
「落日孤影」
掲載誌:「カドブン」 発売日:2020年10月6日 |
「菩提を弔っておりました」 「何者の菩提を」 「此度の戦で果てた者どもの」 「何十何百とおろう」 「はい」 |
荒木摂津守村重がいのちを賭けた謀叛は、十二月以降ろくに鑓も交えないまま、静かに終わろうとしていた。有岡城の戦いの敗北は軍事力の敗北であった以上に、政治力の敗退であった。そして城内では、少しずつ、「村重以後」に備える動きが始まる。
村重は、人心の離反を扇動する「誰か」を一太刀に切り捨てればすべては元通りにうまくいくと信じている。村重の政治的ショーを妨げた一発の銃弾、それがどこから放たれたかさえつきとめれば、何もかも元通りになるのだと……。
夏が終わる。
荒木村重と黒田官兵衛の籠城が、終わろうとしていた。
四章にわたって書いてきた有岡城の物語、その秋の章をお送りします。
posted by 米澤穂信 at 00:00| 雑誌等掲載短篇
2020年08月07日
「バラ法」
掲載誌:「群像」(講談社) 発売日:2020年8月7日 |
「豚バラの角煮じゃん」 「じゃん、と来たか……」 「豚バラは禁止じゃなかったっけ」 在宅勤務に従い通勤の負荷が軽減され、「夫に貫禄がつき、人が丸くなってきたことに対する緊急の措置として」豚肉はバラを禁ずると妻が宣言したのは、わずか三日前のことであった。 |
豚バラの角煮を食べるだけの話です。
本当にそれだけです。
「day to day」に寄稿した「ありがとう、コーヒーをどうぞ」、「小説現代」に寄稿した「里芋病」とたぶん同じ日の、別のふたりのお話です。
実はこの三篇、同時に書いたのです。おそれに満ちた世相の中で、自宅で読めるものを……という「day to day」の趣旨に賛同し、かなしくない、平凡なものを書いています。
posted by 米澤穂信 at 00:00| 雑誌等掲載短篇
2020年07月18日
2020年07月10日
「遠雷念仏」
掲載誌:「カドブン」 配信日:2020年5月10日、6月10日、7月10日 |
また、かすかに雷鳴が耳に届く。村重は首を巡らして障子を透かし見るが、夏の日は眩しいばかりに照り、ふたたび夕立が来ようとは思われない。 「遠雷じゃな」 「さようにござる」 「こなたに来ねばよいが。落ちねばよいが」 「さようにござるな」 「……儂は将じゃ。雷が来ねばよいと願うだけでは足りぬ。御坊。有岡の開城は、長島、上月のようであってはならぬ」 |
城兵の士気は未だ高く、武具兵粮の備えも充分で、有岡城はまだ一年でも二年でも戦える。だからこそ荒木村重は、戦の終結に向けて交渉を始めていた。交渉の窓口は息子の義父、惟任日向守光秀。使僧を丹波に派遣し、村重は終戦工作を進めていた。しかし惟任家は深入りを嫌ってか、到底村重が呑めない、過大な条件を突きつけてくる。世に知られた名物、銘〈寅申〉を質として渡せというのである。
村重は、その条件を受け入れ、〈寅申〉は使僧の手に渡った。使僧は払暁を待ち、有岡城を忍び出て光秀のいる丹波を目指す手はずになっていた。
その夜、使僧が斬られた。
むくろを検めた村重は、残された荷物の中に〈寅申〉がないことに気づく。あれがなければ終戦工作は頓挫してしまう……。
使僧を斬ったのは、織田の手の者か? そうとも言い切れない、奇妙な点が村重の気にかかる。
村重は地下へ向かう。この有岡城で最も優れた知恵者にして囚人、黒田官兵衛に会うために。
まだしも受け入れられる形で、この戦に敗北するために。
posted by 米澤穂信 at 00:00| 雑誌等掲載短篇
2020年06月27日
2020年06月22日
「崖の下」
掲載誌:「オール讀物」 発売日:2020年6月22日 |
群馬県杉平町杉平警察署に遭難の一報が入ったのは、二月四日土曜日の午後十時三十分のことだった。通報者は鏃岳スキー場でロッジ「やじり荘」を経営する芥見正司で、一一〇番ではなく杉平警察署に直接電話をかけ、夕食までに戻るはずの客が戻らないと訴えた。十時五十六分にロッジに警官が到着し、事情聴取をしたところ、埼玉県上庄市から来た五人連れの客のうち、四人が戻っていないことが確かめられた。 |
「オール讀物」に寄稿した短編です。
群馬県のスキー場で遭難事故が発生し、速やかに救助隊が組織された。
遭難した四人のうち二人は、崖下の谷筋に落下しているのが見つかった。一人はすぐに救急搬送されたが、意識不明の重体である。そしてもう一人は、崖の下に残された。他殺体だったからだ。
厳冬期、深夜の山中に、第三者がいたというのは考えにくい。犯人は救急搬送された遭難者で間違いない。
だが、遭難者が犯人だと考えると、一つどうしても解けない謎が残る。……現場に凶器が残されていないのだ。
遭難者の意識回復を待って事情聴取すれば、わかるかもしれない。だが意識はいつ戻るかわからず、意識が戻った遭難者が素直に自白するとは限らない。
県警捜査一課の葛警部補は部下に命じ、あらゆる情報を集める。
果たして「何が」被害者の命を奪ったのか。
指揮官に、一人で考える時間などほんの僅かしかない。そして葛は、そのわずかな時間に沈思する。
ハウダニット!
せっかくですから、葛警部補に先んじて「凶器」の正体を当てられるか、試していただければ幸いです。
タグ:〈葛警部〉
posted by 米澤穂信 at 00:00| 雑誌等掲載短篇
「里芋病」
掲載誌:「小説現代」 発売日:2020年6月22日 |
あなたのためを思ってという言葉は、相手を制御したいという毒をどこかに潜ませている。けれど私たちの場合は違うはずだ。 |
「小説現代」に寄稿した掌編です。
妻は死を恐れる。自分自身のそれをではなく、身近な人に死の影が射すことをひどく怖がる。
だから私は、妻に話すことが出来ない。――自分がしばしば、奇妙な汗をかくことを。
私はこの汗をかく症状をもたらす何かを、「里芋病」と呼んでいる。
「day to day」に寄稿した「ありがとう、コーヒーをどうぞ」とたぶん同じ日の、別のふたりのお話です。
posted by 米澤穂信 at 00:00| 雑誌等掲載短篇
2020年06月06日
「ありがとう、コーヒーをどうぞ」
掲載誌:「tree」 公開日:2020年6月6日 |
雨はいつでも降るし、どんな時でも季節は巡るものだ。 |
「tree」の企画「day to day」に寄稿した掌編です。
秘密の職場のお話です。
マグカップはどこにあったか、少々鈍感なのは誰だったかというお話でもあります。
posted by 米澤穂信 at 00:00| 雑誌等掲載短篇
2020年02月21日
『消えた脳病変』解説
著:浅ノ宮遼 カバーイラスト:牧野千穂 カバーデザイン:大岡喜直(next door design) 出版社:東京創元社 発売日:2020年2月21日 定価:本体680円(税別) 文庫判 |
第11回ミステリーズ!新人賞の選考過程で「消えた脳病変」に巡り会った時は、ずいぶん昂奮したものです。一読、あまりにも「これだ」という思いが強すぎて、何か見落としていないか不安になったほどです。
単行本が刊行された時、その受賞作「消えた脳病変」に匹敵するクオリティの短編が並んでいることに驚き、嬉しくなりました。今回解説をお任せいただいたことは、まことに光栄です。
作中の医師たちは、やり方は違えど、ただひたすらに仕事をしています。奇矯な行動は何一つしていません。それでも(それだからこそ)、人間味が滲み出てくる。私はこの本が好きです。
微力ながら、この本が多くの方の手に渡る手伝いが出来ていればと願っています。
posted by 米澤穂信 at 00:00| 解説・推薦・編纂
2020年02月10日
「花影手柄」
掲載誌:「カドブンノベル」2020年 1月号・2月号・3月号 発売日:2019年12月10日・2020年1月10日・2月10日 |
武士たるものすべては戦、起き伏しも飯を食うことも、仏のことも宝のこともこれすなわち戦じゃ。されば茶は、茶だけは戦にするまいと思うておった。……が、出来なんだ。 |
「カドブンノベル」に前中後編で寄稿した中編小説です。
初戦を防ぎ切り、荒木村重の謀叛は長期化しつつあった。士気を保つために勝利を欲する村重は、城の東側に小規模な陣地が築かれつつあることに気づいた。格好の獲物とばかり村重は夜襲を試み、見事に勝利する。だが、その勝利こそが、有岡城に新たなる危機を生じさせた。
夜襲に用いられたのは、三部隊。村重が直率する御前衆。降伏開城した高槻城から脱出した、高山大慮(ダリヨ)率いる高槻衆。大坂本願寺の命で有岡城に入った、鈴木孫六率いる雑賀衆である。御前衆は村重を守って攻撃には参加せず、陣を攻めたのは高槻衆と雑賀衆だった。
陣を築いていた織田勢はまともな抗戦も出来ず、総崩れに逃げ去った。それもそのはず、寄せ手は敵将を討ち取っていたのだ。だが……高槻衆が挙げた首、雑賀衆が挙げた首、どちらが敵将の首なのかが判然としない。
天下に武名を鳴らす大手柄を上げたのは、果たしてどちらか。
手柄争いは思いもかけず、南蛮宗と一向宗の争いに発展する。誰が見ても納得する裁定を村重が下さない限り、城内は二つに分断されてしまう。そうなれば、落城も時間の問題である。
時間は残されていない。村重はふたたび、地下牢の囚人――黒田官兵衛の知恵を借りることを決意する。
だが官兵衛の興味を引いたのは、「誰が敵将を討ち取ったか」ではなかった……。
被害者は織田の将。容疑者は夜襲に加わった荒木勢。
つまり、フーダニットです。
posted by 米澤穂信 at 00:00| 雑誌等掲載短篇
2020年01月30日
『巴里マカロンの謎』
著:米澤穂信 装幀:岩郷重力+WONDER WORKZ。 出版社:東京創元社 発売日:2020年1月31日 定価:620円(税別) 文庫判 ISBN:978-4488451110 |
わたしがあなたを、助けてあげる。 |
24冊目です。
小市民を志す高校一年生、小鳩常悟朗と小佐内ゆき。自分たちの住む街では羊の着ぐるみをかぶる二人が、東海道本線に乗って名古屋におでかけ。
トラブル回避のための注意深さも禍根を残さないための慎重さもお出かけ先ではいったん棚上げし、おいしくマカロン(などなど)を賞味するだけの小市民の休日には、特筆すべきことなど何も起こらない……はずだった。
「巴里マカロンの謎」
新規開店のパティスリーに馳せ参じた小佐内(と小鳩)。三種類のマカロンが試せるティー&マカロンセットを注文したのに、皿にはなぜか四つマカロンが乗っていた。
どれが招かれざるマカロンかを当てることは、小鳩と小佐内には難しいことではない。けれど、問題はそれで終わらなかった――増えたマカロンの中から何かが出てきた。なんと、金の指輪だ。
「紐育チーズケーキの謎」
名古屋で知り合った中学生、古城秋桜に招かれて、小鳩と小佐内は文化祭にやって来た。別行動を取った二人だったが、小佐内が三人組の男子生徒に言いがかりをつけられ、拉致されてしまう(n年ぶりm回目)。
三人組の言い分はこうだ――小佐内は、三人組が捜している「あるもの」を手に入れ、どこかに隠したはずだ。小鳩は小佐内救出のためという建前で、小佐内が隠した「あるもの」の所在を推理する。
「伯林あげぱんの謎」
アンケートを届けに新聞部の部室を訪れた小鳩は、知人の堂島健吾から相談を持ち掛けられる。「世界の年越し」についての特集記事を書くため、新聞部はベルリーナープファンクーフェンを手配し、その中の一つにマスタードを仕込んだ。参加した部員は四人、だがベルリーナープファ……あげぱんを食べた四人の誰一人、マスタード入りに当たったとは言いださなかったのだ。しかし誰かは「あたり」のあげぱんを食べたはず。それは誰か。なぜそう言えるのか?
「花府シュークリームの謎」
正月を迎え、小佐内はおしるこを食しながら、新年は些事に妨げられることなく心行くまで甘味を楽しめる一年になるよう祈念していた。しかしそんな彼女の思惑をあざ笑うように携帯電話に着信が入る。古城秋桜が停学になったというのだ――まったく身に覚えのない罪状で!
誰が自分に罪を着せたのかを知りたいと、古城は言う。小鳩と小佐内はそんな古城に覚悟を問う。本当に知りたいのか? ……何を犠牲にしても? 古城が頷いた時、小市民ふたりの捜査が始まる。
「小市民の休日」をコンセプトにした、中篇集です。
地元ではそれなりに身を慎む小鳩と小佐内ですが、名古屋では匿名であるのをいいことにいつもよりちょっと気軽に推理をして、起きている事件の表面にあらわれた謎だけを解き、その推理によって関係者の人間関係がかき乱されたことにはノータッチで、謎を解いた満足感を胸に東海道本線で帰っていきます。
どうかと思います。
posted by 米澤穂信 at 00:00| 既刊情報
2020年01月17日
『巴里マカロンの謎』サイン会
申込受付は終了しています。
ありがとうございます。
こんにちは。米澤です。
『巴里マカロンの謎』の刊行に際し、サイン会を開いて頂けることになりました。
場所は東京と大阪です。
東京会場
ブックファースト新宿店様
日 時:2020年2月1日(土) 15:00 〜
場 所:ブックファースト新宿店 地下2階 Fゾーンイベントスペース
申込方法:
1月24日(金)10:00〜電話にて予約を受け付けるとのことです。03-5339-7611 にお問い合わせください(営業時間10:00〜23:00)
*予約方法は電話受付のみです。店頭受付は行いませんのでご注意ください。
ブックファースト新宿店詳細URL
http://www.book1st.net/event_fair/event/page1.html
大阪会場
紀伊國屋書店グランフロント大阪店様
日 時:2020年2月8日(土) 14:00 〜
場 所:紀伊國屋書店グランフロント大阪店 店内特設イベント会場
申込方法:
1/17(金)10:00〜1/21(火)23:59までの期間、紀伊国屋書店ウェブサイトにて受け付けるとのことです。詳細は下記URLをご確認ください。
紀伊國屋書店グランフロント大阪店詳細URL
https://www.kinokuniya.co.jp/c/store/Grand-Front-Osaka-Store/20200117095200.html
シリーズ新刊をお届けできて嬉しいです。お楽しみいただけますように……。
当日どうぞよろしくお願いいたします。
posted by 米澤穂信 at 15:36| イベント告知
2019年12月31日
2019年12月10日
「龍軸経」
掲載誌:「オール讀物」2020年 1月号 発売日:2019年12月10日 |
唐天竺の海も案内いたしましょう。凍りつく海、煮え立つ海も見物いたしましょう。いつまでも、どこまでもお心のままにお連れいたします。 |
「オール讀物」に寄稿した短編です。
京都生まれのかれは家の事情で引っ越すことになり、船に乗せられたが、ひどい船酔いに苛まれた。苦しみぬいて、ふと気づくと、まわりには誰もいない。とにかく船から逃れたい一心で海に飛び込むと、不思議と五体が水に馴染む。しばらく海に遊ぶうち、魚たちの泳ぎを見るうちに、どうもその自在さが羨ましくなってきた。もっと思うままに遊んで、海の彼方までも見物したいものだと思っていると、海底から龍が現れて、願いをかなえてくれるといった……。
おそれ知らずにも、本歌は雨月物語、「夢応の鯉魚」です。
posted by 米澤穂信 at 00:00| 雑誌等掲載短篇
2019年11月03日
2019年09月26日
『Iの悲劇』
著:米澤穂信 装幀:大久保明子 出版社:文藝春秋 発売日:2019年9月26日 定価:本体1,500円(税別) 四六判上製 ISBN:978-4163910963 |
みのいしへようこそ! |
23冊目です。
徐々に人口が減り、とうとう最後の一人が去って無人になった旧・簑石村。そこに、市長肝いりのIターン推進プロジェクトで延べ十二世帯が移り住んでくる。よみがえるはずだった簑石では、しかしなぜか、奇妙な謎が絶えない。
プロジェクトを担当する市役所「甦り課」は、本来の業務のかたわら、謎の解明に奔走することになる――でないと、せっかくの移住者が去ってしまう!
小さな村で繰り広げられる密室、失踪、服毒その他もろもろの謎に挑むのは、「甦り課」に属する三人の公務員。一人は学生気分が抜けきらない新人、観山。一人は煙草を吸ってくると言って出て行くと三十分は戻ってこない課長、西野。苦労は必然的に最後の一人、万願寺にのしかかる。
移住者のため万願寺は走り続ける、簑石が甦るその日まで、さもなくば異動の辞令が下るまで。
「Iの悲劇」
序章です。みのいしへようこそ!
「軽い雨」
先行して移住してきた二世帯のあいだに、早くも緊張がみなぎる。ある晩、一方の家で小火が起きた。対立する家の住人が放火したと考えれば辻褄が合うが、彼のアリバイは万願寺と観山自身が証明している……。
「浅い池」(書き下ろし)
簑石に事業を興そうと、ある移住者が鯉を育て始める。ある日、出張中の万願寺に電話がかかってきた。助けて、閉ざされた空間からなぜか鯉が減っている! 万願寺は電話の内容から、密室の謎に挑む。
「重い本」
単著も出している歴史研究家が、近所の子供と仲良くなった。夏のある日、「本の小父さん」のところに遊びに行くと言ったまま、子供が行方不明になる。歴史研究家は留守、家は完全に施錠されているが……。
「黒い網」
住人達の親睦を深めるため、秋祭りが計画される。当日、それなりに楽しい時間が流れる中、突然一人が倒れてしまう。ただの食中毒か? 一服盛る機会は誰にもなかったはずだから……本当に?
「深い沼」(書き下ろし)
万願寺の実家で法事が営まれることになり、参加人数を確定させるため、万願寺は弟に電話をかける。短い対話の章。
「白い仏」
村に円空が彫った仏像があることを知った住人が、それを観光の起爆剤にしたいと主張。地権者から仏像を預かっている住人は、この仏は自分が守ると主張し譲らない。緊張の中、万願寺に「祟り」が降りかかる。
「Iの喜劇」
終章です。真相へようこそ。
ユーモアとペーソスを両輪にした、ミステリ連作です。
解決は少々困難かもしれません。
posted by 米澤穂信 at 00:00| 既刊情報
2019年09月18日
ハロウィン読書会
こんにちは。米澤です。
拙作『Iの悲劇』を対象とした読書会を開いていただくことになりました。
ハロウィン読書会で、仮装可とのことです。
9月19日17時から受付を開始し、定員は先着で70名となります。
以下、詳細を記します。
日時:2019年10月31日(木) 19:00〜
場所:ワテラスコモン
参加費:1,000円(飲み物が一杯提供されます)
定員:70名
参加対象:どなたでも
申込方法:https://jpicyouth.com/bookfesevent4.html に記載
当日、どうぞよろしくお願いいたします。
posted by 米澤穂信 at 21:17| イベント告知
2019年09月11日
『Iの悲劇』サイン会
台風19号のため
延期となりました
延期となりました
新しい予定日は10月27日(日)です。
詳細は紀伊國屋書店新宿本店さんからの案内メールをご覧下さい。
こんにちは。米澤です。
『Iの悲劇』の刊行に際し、サイン会を開いて頂けることになりました。
場所は新宿です。
紀伊國屋書店 新宿本店様
日 時:2019年10月12日(土) 18:00 〜
場 所:紀伊國屋書店新宿本店9階 イベントスペース
参加方法:
9月10日(火)10:00から9月17日(火)23:59まで、紀伊國屋書店webサイトで申込受付。応募者多数の場合、抽選となります。詳しくは こちら 。
紀伊國屋書店新宿本店詳細URL
https://www.kinokuniya.co.jp/c/store/Shinjuku-Main-Store/20190910100000.html
新刊、お楽しみ頂けることを願っています。
当日どうぞよろしくお願いいたします。
posted by 米澤穂信 at 18:51| イベント告知