2010年02月23日

『夏期限定トロピカルパフェ事件』コミカライズ始まりました

 こんにちは。米澤です。

 先日、雑貨屋に行きました。なにしろ売り物が多く、目当てのものがさっぱり見つかりません。仕方がないので店員さんに尋ねました。
「あの、すみません」
「はい!」
 ふくよかで活発な、たいへん愛想の良い店員さんでした。
「何かお探しですか?」
「はい。書見台はありますか」
「え?」
「ええと、こう、本を開いて置く……」
 手振りを加えて説明すると、店員さんの表情がぱっと明るくなりました。
「ブックレストですね! ご案内します」

 そうして目当てのものを手に入れることはできましたが、必要なものはまだありました。
「あの、それと状差しはありますか」
「え?」
「ええと、こう、手紙を差しておく……」
 手振りを加えて説明すると、店員さんの表情がぱっと明るくなりました。
「レターラックですね! ご案内します」

 書見台と状差しでいいじゃないか、と腑に落ちない思いを抱えて帰宅した翌日。
 外出に備え、髪型を整えようとしましたが道具が見当たりません。
 きょろきょろ部屋を見まわしながら、思わず呟きました。
「ええと。鬢づけ油はどこに置いたかな」
 その途端に反省しました。いくらなんでもそりゃないです。
 どう考えてもヘアワックスですね。


 それはさておき。
 先日ご案内した『夏期限定トロピカルパフェ事件』のコミカライズが、「Gファンタジー」誌2月号から掲載されています。
 どうぞよろしくお願いします。
posted by 米澤穂信 at 04:33| お知らせ

2010年02月16日

短命です

 こんにちは。米澤です。

 パソコンのキーボードが故障したため、USBキーボードを利用して作業をしています。キーストロークやキーの大きさそのものが違うのに加え、[Fn]キーが左側にしかないのが大変不便です。
[Fn]+[↑]or[↓]でページアップ、ページダウンをするのですが、[Fn]キーが左にしかないとページ操作に両手を使うことになるからです。

 しかし、購入から二年で故障とは、随分あっさり壊れてくれたものです。回路部分ならまだ諦めもつこうというものですが……。
 日本製品が、という言い方はしません。ですが、日本で普通に購入する製品の頑丈さは退歩しているなあとつくづく思います。
 十年選手、十五年選手の家電を見かけなくなりました。思い返せばこのところ、製品を買い換える理由はいつも「より良い製品が出たから」ではなく、「故障を直すよりも買い換える方が早いから」だったように思います。


 壁掛け時計を使っているのですが、ムーブメントがくたびれて作動音が大きくなったので買い換えました。なにしろ私がほんの子供だった頃から使っていた時計ですから、そろそろ寿命かなと思ったのです。
 ところが、買い換えた時計は最初こそ静かだったものの、半年で異音を発するようになりました。購入店に相談したところ、「ムーブメントが静かに動くのを保証できるのは半年までですね」と言われてしまいました。

 安物を買ったつもりはなかったんですが……。というか、その前の十年以上静かだった時計も、さほどの高級品ではないはずです。普通のお店で普通の金額で買った製品が、以前より劣っている。
 私のような者は米一粒釘一本自分では作れない末期哀れの徒ではありますが、良質の製品が身のまわりから消えていることに気づくと、やはりなんとも寂しいものがあります。
 買って半年の壁掛け時計は、うるさいので、電池を外されてただの壁飾りになりました。なにしろデザインは悪くないんですよ。


 ところでパソコンですが。
 いちおう保証書がありますので、無償修理の対象ではあります。私はキーボードで小説を書いていただけで、物を落としたことも水で濡らしたこともありません。
(ちなみにここでこぼしたのはあくまで、テーブルの上に、です。わかりづらく書いてますけど)

 しかし私はほとんど期待していません。
 なにくれとなく理由をつけられて、有償修理にされてしまうんだろうなという諦めがあります。
 二年で壊れるキーボードを売っている会社なのだと思えば、サポート体制だけは上々だなんて、いったいどうして思えるでしょうか?
posted by 米澤穂信 at 11:27| 近況報告

2010年02月01日

『Story Seller2』

story_seller_2.jpg


編:新潮社ストーリーセラー編集部
出版社:新潮社

発売日:2010年2月1日
定価:税込700円
文庫判
ISBN:978-4-10-136672-2

 2009年4月に刊行された「小説新潮」別冊「Story Seller2」が、文庫本になりました。初出誌の通り、拙作「リカーシブル――リブート」が収録されています。
 以下に収録作一覧を記します。

「マリーとメアリー ポーカー・フェース」沢木耕太郎
「合コンの話」伊坂幸太郎
「レミング」近藤史恵
「ヒトモドキ」有川浩
「リカーシブル ― リブート」米澤穂信
「444のイッペン」佐藤友哉
「日曜日のヤドカリ」本多孝好
posted by 米澤穂信 at 00:00| 共著・アンソロジー

2010年01月30日

特設です

 こんにちは。米澤です。

 先日、角川書店の新春感謝会に行ってきました。
 いつも通りの壁の花だったのですが、後になって私を捜していた編集者さんがいらしたと聞きました。
「それは申し訳ないことをしました。なにしろ広いですからね」
 と申し上げたところ、こう返って来ました。
「米澤さんは壁際に行く習性があると聞いたので、外周を捜したんですが……」

 習性て。

 なお米澤は好気性です。
 ときおり負の走光性が見られます。



 東京創元社さんのアンソロジー『蝦蟇倉市事件』の一巻が発売されました。
 アンソロジーとしては珍しいことだと思うのですが、なんと特設サイトがオープンしています。


 なお、この奇妙な街の命名者は道尾さんです。大藪賞超おめでとうございます。
 一つの街を舞台にして競作をしようという企画が持ち上がり、著者が集まって相談をしました。ところが、漠然と「街」と言われてもイメージがつかめない。そこで私が鎌倉をモデルにしてはどうかと言いました。南が海、北が山、鉄道があって歴史もあるのでミステリに使いやすいと思ったからです。

 街の名前は後で決めようという話だったのですが、真っ先に原稿を仕上げた道尾さんが、作中で「蝦蟇倉」と命名しました。もっともこの時点ではあくまで仮の名前で、いずれもう一度相談しようということだったと記憶していますが……。
 別の方の作中に、街の名前が蝦蟇倉でないと通じない絶妙のネタが記されるに至り、「このネタは捨てるには惜しい」ということでそのまま決着してしまったのです。
 それほどのネタが何であるかは、お読みいただければ薄々おわかりになるのではと思います。


 ちなみに拙作は二巻目に収録されています。
 どうぞよろしくです。
posted by 米澤穂信 at 16:22| 近況報告

2010年01月19日

『インシテミル』映画化の制作発表がありました

 こんにちは。米澤です。

 拙作『インシテミル』が映画化が決まり、制作発表がありました。
 監督は中田秀夫氏。
 配給はワーナーブラザース映画。
 芸能プロダクション・ホリプロの創立50周年記念映画となります。


 初めて接したミステリは「新本格」でした。
 その後さまざまなミステリを好きになり、また幸いなことに自ら書く機会にも恵まれてきましたが、初めてのミステリへの思いはどこかに持ち続けていました。

 ある時、こういうミステリもまた好きだったという思いにひたすら淫してみようと思い立ち、書き始めました。仕上げた千枚の原稿には『インシテミル』という題をつけました。
 本が店頭に並んだ時、読者の皆様に喜んで頂けることを願う一方で、自らの思い出に決着をつけたような満足を覚えてもいました。

 あれから三年。こういう成り行きになろうとは。
 さすがに、ちょっと驚きましたね。


 映画の公開は2010年秋予定だそうです。
posted by 米澤穂信 at 21:53| お知らせ

2010年01月18日

『夏期限定トロピカルパフェ事件』コミカライズ詳細決まりました

 こんにちは。米澤です。

 先日、スクウェア・エニックス社の新春記念パーティーに招かれて行ってきました。
 壇上での発表によりますと、昨年のコミックの売り上げが三強に次いで業界四位だったとか。どういう数字を用いた比較なのかわかりませんので一概には言えませんが、好調は確かなようで、まことにめでたいことです。
 ちなみに今年のゲストはパパイヤ鈴木でした。「MY FIRE」や「TUBTHUMPING」、「JUMP」などなど懐かしい音楽に合わせてパパイヤ鈴木が基本的なダンス動作を解説付きで披露してくれるという、たいへん贅沢な時間でした。
 私はじっとチョコレートファウンテンを見つめていたので踊りはしなかったのですが……。

 さて、そんなスクウェア・エニックス社の「Gファンタジー」誌で、拙作『夏期限定トロピカルパフェ事件』のコミカライズが始まります。

parfait_comic.jpg

 来月、2月18日発売の3月号に第一回が掲載されます。
 構成に山崎風愛さん、作画におみおみさんというチーム体制で進めていきます。山崎さんはネームの構成がたいへん上手く、おみおみさんはこの一つ前でパティシエの漫画を描いていらっしゃるという隙のない布陣です。私が隙にならないようがんばらねば。
 お楽しみいただけることを願っています。

作画のおみおみさんから年賀状を頂きました
posted by 米澤穂信 at 22:07| お知らせ

2010年01月15日

『本格ミステリ06』 『珍しい物語のつくり方』


best_select_06.jpgbest_select_06_pb

(新書判)
編:本格ミステリ作家クラブ
解説:円堂都司昭
装幀:柴田淳デザイン室
出版社:講談社

発売日:2006年5月9日
定価:税込1,365円(本体1300円)
新書判
ISBN:4-06-182484-8

(文庫判)
解説:杉江松恋
装幀:京極夏彦 with FISCO
出版社:講談社

発売日:2010年1月15日
定価:税込1,050円(本体1,000円)
文庫判
ISBN:978-4062765664

 本格ミステリ作家クラブが毎年編んでいるアンソロジーに、拙作「シェイク・ハーフ」を採っていただきました。
 新書判が『本格ミステリ06』という題名で、文庫判が『珍しい物語のつくり方』という題名で出ています。
 以下に、今回の収録作一覧を記します。

〈小説〉
「霧ケ峰涼の逆襲」――東川篤哉
「コインロッカーから始まる物語」――黒田研二
「杉玉のゆらゆら」――霞 流一
「太陽殿のイシス(ゴーレムの檻 現代版)」――柄刀 一
「この世でいちばん珍しい水死人」――佳多山大地
「流れ星のつくり方」――道尾秀介
「黄鶏帖の名跡」――森福 都
「J(ジェイムズ)・サーバーを読んでいた男」――浅暮三文
「砕けちる褐色」――田中啓文
「陰樹の森で」――石持浅海
「刀盗人」――岩井三四二
「最後のメッセージ」――蒼井上鷹
「シェイク・ハーフ」――米澤穂信

〈評論〉
「『攻殻機動隊』とエラリイ・クイーン」――小森健太朗
posted by 米澤穂信 at 00:00| 共著・アンソロジー

2009年12月31日

今年の総括です

 こんにちは。米澤です。

 2009年ももう終わりです。今年はデビューから……ええと、8年目の年でした。節目の年でも何でもないですね。しかしあれです、あんがい長く続けて来られたものです。決して順調なことばかりではなかった足あとを振り返れば、支えていただけているなと実感します。

 今年は『秋期限定栗きんとん事件』と『追想五断章』をお届けすることができました。
 シリーズ物の最新刊と、少し渋めの長篇。まるで傾向の違う二作でしたが、自分なりの調理ができたかと思っています。今後も広く楽しんで頂ける工夫をしたいと思っています。
 来年、さしあたっては〈古典部〉シリーズの新刊『ふたりの距離の概算』に全力傾注です。

 ところで、さっき今年のblog記事を読み返していたら、ひとつ書いてないことがあるのに気づきました。
 このお寺、蘇州の寒山寺です。
 皆既日食を見に行ったのです。悪石島に行こうかと考えたのですが、あまり大勢で押しかけても迷惑かと思ったので。
 どこかでオチをつけようと思っていて忘れていました。
 これで日蝕の日に日本にいなかったというアリバイは確保です。

 今年もありがとうございました。来年もがんばります。
posted by 米澤穂信 at 22:53| 近況報告

2009年12月14日

始めています

 こんにちは。米澤です。

 面白いんじゃないかと思うことは小説に書きます。
 面白そうでも小説には馴染まないことはエッセイに書きます(が、私はエッセイが上手くないので、たいていなんとかして小説に仕立てます)。

 小説にはならないだろうと思うことをblogのネタにしています。
 掲示板やメールフォームがアダルト業者の跳梁跋扈によって使えなくなったので、blogに書いたことをmixiに転記しています。
 鶏肋をtwitterに書いています。

 いつ続けられなくなるかわかりませんが、とりあえず始めています。
posted by 米澤穂信 at 16:56| 近況報告

2009年12月07日

インタビューです

 昨日、山手線恵比寿駅で編集者さんと別れました。私が電車を降り、編集者さんは乗ったままでした。
 ところがその直後、四つ先の駅である新宿に用事があったことを思い出し、一つ先の渋谷駅で元の車両に戻って来ました。

 私から見ると自然な行動だったんですが、編集者さんから見ると「恵比寿で降りたはずの米澤が渋谷でまた乗って来た」ということになるわけで、ずいぶん驚かれてしまいました。
 イッツアリバイトリック。

 こんにちは。米澤です。

 原書房の「2010本格ミステリベスト10」でインタビューを受けています。


 インタビュアーはミステリ評論家の川井賢二さん。内容は今年の総括といった感じです。えがおがふしぜん。
 よろしくお願いします。

アリバイトリックを解明する
posted by 米澤穂信 at 22:08| お知らせ

2009年11月22日

悪い夢です

 こんにちは。米澤です。

 最近どうも悪い夢ばかり見て、眠りが浅くて困っています。
 他人の夢の話ほどつまらないものはないといいますが、世にも恐ろしい悪夢をおすそわけしたくて書いてみます。

「こんな夢を見た」で書き始めたりはしませんよ。



1)
 仮面を被った殺人鬼が見目麗しい美女をつけ狙うという夢でした。

 殺人鬼の獲物はなにか鋭利な刃物で、たぶん鋏のようなものでした。元ネタがいくつか思い浮かびますね。
 そして殺人鬼はこの世のものではない力を備えていました。

 しばらく夢を見ていてわかったのですが、殺人鬼はどうも、「中に誰もおらず、外から中が見えない空間であれば、そこに犠牲者をテレポートさせられる」ようでした。
 たとえば仮面の殺人鬼が部屋のドアを閉めると、閉鎖空間になったその部屋に、逃げたはずのヒロインが忽然と現れるのです。

 面白いのが、閉ざされた部屋にヒロインが飛ばされてきても、殺人鬼はその部屋の「外」にいるということです。
 犠牲者をテレポートさせる部屋は無人でなくてはならないので、殺人者自身がいる部屋に呼んでくることはできない。常に無人の部屋に呼び出されるヒロインは、どこから殺人鬼が入ってくるか怯えることになるのです。

 ヒロインは自分がテレポートさせられないよう、扉や窓などを片っ端から壊していきます。
 そうして閉鎖空間を作られないようにしているのですが、家のどこかでサッとカーテンが閉まる音がしたかと思うと、カーテンによって区切られた空間にテレポートさせられてしまう。
「外から見えず、中に誰もいない」という条件を満たせば、そこが別に「部屋」でなくても犠牲者を招くことができるからです。

 ようやく逃げ出しても、ヒロインはまたしてもテレポートさせられてしまう。無人の空間で、殺人鬼はどこから入ってくるのかわからない。
 恐怖は無限に続くのです!

 どうやら洋画ホラーらしく、視界の下の方に字幕がついていました。

 問題なのはヒロインの造形です。
 ホラー映画なんですから「きゃー」と叫んで欲しいものですが……。

 夢の中で彼女は、背中にダブルバレルの猟銃、手に22LR口径のセミオートと象牙で飾られたリボルバーを所持。
 そして、殺人鬼の姿を見ると悲鳴も上げず、躊躇いもせずに銃弾を叩き込んでいきました。


 夢を見ていた私は、「これ怖くないよ。ホラーなのにぜんぜん怖くないよ。設定は凝ってるのに返り討ちにしていいのか? というかまだ誰も死んでないんじゃないか? こんな怖くないホラーで大丈夫なのか? ちゃんと客を呼べるのか?」と不安で不安で、観客動員数と損益分岐点のことを考えると恐ろしくてたまらず……。
 それで目が覚めました。

 ひどい悪夢でした。



2)
 銚子かどこか、漁港に来ているようでした。
 せっかく港に来ているのだから新鮮な魚を食べようと、タクシーをつかまえました。
「どこか魚の美味しい店に連れて行って下さい」
 タクシーの運転手はきさくな人で、「いい店があるよ」と車を出しました。

 車内では他愛のない話で盛り上がりました。
 何でもこれから連れて行ってくれるオススメの店は、運転手さんの息子も大のお気に入りだそうです。
 その息子さんはまだ幼児で、言葉を覚えたばかりなのですが、
「どうも、ませたやつでね」
 と、運転手さんは嬉しそうに話してくれました。
「ほとんど喋れないのに、X-JAPANを歌うんだ」
 それは確かにませていて、凄い息子さんだな、と感心しました。

 ところがどうもおかしい。
 車はどれだけ走ってもお店に着かず、それどころか道沿いには建物の数さえ少なくなって、だんだん山の中に入っていくようなのです。
 途中何件か料理屋があったので、そのたびに「ここかな」と思うのですが、運転手さんはどんどん先に車を走らせるのです。

 とうとう、漁港から遠く離れて長い長いトンネルに入ってしまいました。
「ねえ運転手さん。腹が減ったんですが、そのお店はまだですか」
「うーん、まだもうちょっとかかるねえ。大丈夫、いい店だから」
 そう言われてしばらくは黙っていたのですが……。

 トンネルを出てもまだ着かない。どんどんひとけのない道に入っていきます。
 店がどうこうというより、いったいどこに連れて行かれるのかと不安になって、私はとうとう訊きました。
「運転手さん、そのお店にはあとどれぐらいで着くんですか」
「そうだね、あと二時間ぐらいだね」
 そんなに! 漁港に来ていたはずなのに、どうしてそんなに遠くに行かなければならないのか。
「すみません、そのお店、いったいどこにあるんですか」
 運転手さんはそれまでと変わらない快活な声で、しかしこちらを振り返ることなく、こう言ったのです……。

続きを読む
posted by 米澤穂信 at 07:00| 近況報告

2009年10月25日

ここが約束の地です

 こんにちは。米澤です。

 ひどい風邪にやられてしまい、一週間を棒に振ってしまいました。
 これは悪くなるなとわかったので週の前半は長めに寝るようにして、それでほぼ治ったと思ったのですが。
 症状がほぼ全て引いてからも咳だけがいっこうに止まらず、たいへん苦しい仕儀となりました。

 咳止めの薬も飲んだのですが、これがどうもよくない。
 咳が止まるというより、喉が痺れて咳をするだけの筋力がなくなるような感じで、異物感は残るのにしようと思っても咳ができないという薄気味悪いことになるのです。

 別の薬も試してみたところ、こっちはそういう不自然さはなかったものの、覿面に眠くなってしまう。
 寝れば寝ただけ回復するのですから確かにいい薬ではありますが、仕事が残っているとなるとありがたくもありません。

 ひとづてに聞いた話に、蜂蜜が喉に利くとやら。幸い、暑中見舞いに頂いた蜂蜜がまだ残っていたので、牛乳に溶いて飲むことにしました。
 牛乳を電子レンジで温め、蜂蜜を溶く。ちょっと喉を通せば、まあ偽薬効果かもしれませんが、ずいぶん楽になったような気がしました。

 それで蜂蜜入りのホットミルクを傍らにかたかたキーボードに向かい続けたのですが、あやふやな言葉を調べようと電子辞書に無造作に手を伸ばしたのがまずかった。
 あっと思ったときにはもう遅い。まんまとひっくり返してしまいました。


 それが流れていくのを見ながら、私は卒然として悟りました。
乳と蜜の流れる地
 旧約聖書にいう「約束の地」とは、なるほどここのことであったのか、と。


 べたつく。
posted by 米澤穂信 at 03:43| 近況報告

2009年10月06日

『ボトルネック』増刷決まりました

 こんにちは。米澤です。
 スケジュールの隙を衝いて彦根城に行ってきました。

 城の麓で「ひこにゃんは○時に来ます」と言われました。
 城の中腹で「もう間もなくひこにゃんが来ます」と言われました。
 城の天守閣で「いま入るとひこにゃんに間に合いませんよ」と言われました。

 もし「いや、ひこにゃんに興味はありません」とでも言おうものなら、
「なんですって!」
「ひこにゃんに興味がない!?」
「失礼、聞き違えたかな。何と言われました」
「やだ、こわい」
「ママー、ママー!」
 と大騒ぎになった挙句、微笑みが顔に張りついた彦根城管理事務所員がどこからともなく現れて「少しお話を伺えますか」と深く静かで心地よく秘密めいたところに連れて行かれるのではないかと不安でした。

 帰ってきたら『ボトルネック』文庫判の増刷が決まっていました。
 ありがとうございます。
 ひこにゃん。
posted by 米澤穂信 at 00:00| お知らせ

2009年10月01日

『ボトルネック』


bottleneck.jpgMr_Blank.jpgbottleneck_b.jpg

BOTTLENECK

(四六判)
著:米澤穂信
装画:フジモト・ヒデト
装幀:新潮社装幀室
出版社:新潮社

発売日:2006年8月31日
定価:税込1470円(本体1400円)
四六判クレスト装
ISBN:4-10-301471-7

(文庫判)
著:米澤穂信
装画:笹部紀成
装幀:新潮社装幀室
解説:村上貴史
出版社:新潮社

発売日:2009年10月1日
定価:本体476円
文庫判
ISBN:978-4-10-128781-2

 八冊目です。
 ミステリというよりは青春小説、と言われます。

 舞台は石川県金沢市。実在の場所を物語の舞台にするのは、多分初めてです。主人公は高校一年生、嵯峨野リョウ。彼は二年前に死亡した恋人を弔うため、福井県東尋坊を訪れます。
 しかし、強い眩暈に襲われ、気がつくと彼がいたのは金沢市。不思議に思いながらも帰宅した彼を迎えたのは、サキと名乗る見知らぬ女性でした。いくばくかのやり取りの後、サキは言います。自分はリョウの、生まれなかった姉。ここはあなたが生まれなかった世界なのだ、と。
 もちろんリョウは、すぐにはその言葉を信じません。ともあれサキはリョウを温かく遇し、二人は連れ立って金沢の街や、北陸本線や、東尋坊を見てまわることになります。

 ボトルネックがあります。排除すれば済むと人は言いますが、むしろ問題なのはここからです。
posted by 米澤穂信 at 00:00| 既刊情報

2009年09月30日

新連載と文庫化です

 こんにちは。米澤です。

「野性時代」(角川書店・毎月12日発売)に小説を連載することになりました。
〈古典部〉シリーズの五冊目になる予定の長編で、題名は『ふたりの距離の概算』と付けています。

 2007年の『遠まわりする雛』以来、久しぶりの〈古典部〉になります。
 その間にいろいろな小説を書きました。〈古典部〉の書き方を忘れているのではと不安に思っていましたが、キーボードに向かい合った途端、すらすらと折木奉太郎の一人称が出てきたのは不思議なぐらいでした。

 10月発売の11月号から掲載されていきます。
 しばらくおつきあいいただければ嬉しいです。



 また、10月1日には新潮社から『ボトルネック』が文庫化されます。
 いま振り返れば、あれも一つの総括でした。良かったらお手にとってみてください。
posted by 米澤穂信 at 21:24| お知らせ

2009年09月24日

立川に行ってきました

 こんにちは。米澤です。

 去る9月23日、東京は立川市のオリオン書房ノルテ店さんで開かれたトークセッションに行ってきました。
 会場は立ち見が出る盛況。対して私が大勢の人の前で話すのは何年ぶりでしょうか。俺ァ小説を書くのが仕事でい、喋りはトチっても知らねぇぜ、と思い切って席に着きましたが、お相手の瀧井さんにも助けられ一時間半のトークを何とか無事に終えることができました。
 お世話になった関係者の皆様、そして参加してくださった皆様、ありがとうございました。

 トークの後ももう少し場所を借りられるということで、サインもしてきました。
 有楽町でのサイン会と今回のトーク、両方に来ていただけた方もいらっしゃって、そういう方々は既にサインを受け取っているのですから面白みがない。そんなこともあろうかと、今回は落款を持参しました。
 落款のお披露目です。
 なお落款はイベント後に落として壊しました。
 落款のお蔵入りです。


 アンケート用紙を回収して赤面しました。
 サイン中、「『犬はどこだ』に出てくる○○に乗っています」と言って下さった方がいらっしゃいました。私はついそれを聞き逃したんですが、てっきりドゥカティのバイクの話だと思い込み、「ああ、あれは住宅街では下りて押すしかないですね」というようなことを言ったと思います。
 ところがアンケートには「『犬はどこだ』に出てくるコペンに乗っています」と書いてあったのです。
 ……コペンだったら、あんまり、下りて押さないかな?
 いやいやまったく、とんでもない勘違いでした。ここにお詫びして訂正します。
posted by 米澤穂信 at 13:57| 近況報告

2009年09月23日

『追想五断章』トークセッション

このイベントは終了しました



 8/31をもちまして申込受付満数終了です。
 ありがとうございます。
 以下は当日のご案内のために残してあります。


 こんにちは。米澤です。

『追想五断章』の発売を記念して、トークセッションを開いていただけることになりました。
 ……トークセッション?
 えっ、誰が喋るの? 私?


オリオン書房ノルテ店

2009年9月23日(
15:30開場 16:00開始

オリオン書房ノルテ店ラウンジにて

入場料 500円(当日会場にて清算)

店頭・電話・メールにて席のご予約をお願いします。
メールにてお申込みの方は、お名前(フルネーム)・ご連絡先・参加ご希望イベントを必ず明記してください。

電話でのお申し込み先:042-522-1231

トーク終了後、米澤穂信さんのサイン会を予定しております。
対象本は『追想五断章』に限ります。
対象本はオリオン書房でお買上げいただいた本でなくても結構です。

*写真撮影ならびに録音はお断りさせていただきます。
*イベントの主旨上、作品の内容に触れる可能性もありますので、未読の方はご注意ください。

 とのことです。
 聞き手はライターの瀧井朝世さんです。

 オリオン書房ノルテ店というのは、東京都立川市のお店ですね。リンク先にはわかりやすい地図もあります。
 今回は入場料制ですが、拙作をお買い求めいただいていなくても参加できます。
 ただ、刊行記念トークセッションということで、上記にもあるように、作品内容の話はどんどん出ると思います。

 あまり気張った話はやろうと思っても出来ないので、のんびりやらせていただこうと思っています。ぐだぐだになったらごめんなさい。

 では当日、立川でお会いできることを楽しみにしています。

この記事はイベント当日まで最上部に掲示されます
posted by 米澤穂信 at 00:00| イベント告知

2009年09月18日

推薦文とインタビューです

 こんにちは。米澤です。

 夕食は秋刀魚でした。ああ夏なんて、なんにもいいことなかったわ。

 早川書房の「ハヤカワ文庫の100冊」に推薦文を寄稿しました。たまには冒険小説から書いてみようかななんてことも思いましたが、出来れば本格ミステリからとのことでしたのでハリイ・ケメルマン『九マイルは遠すぎる』について書きました。
 ううむ、せっかくのネット媒体なんですから、もっと大雑把に規定字数を超えてたっぷり書けばよかったかもしれません。この短篇集、表題作が有名すぎて他の作品があんまり顧みられないんですよね。


 また、小学館の「きらら」誌から『追想五断章』についてのインタビューを受けました。インタビュアーはライターの瀧井朝世さんです。


 機会があったらお手にとっていただければと思います。
posted by 米澤穂信 at 23:27| お知らせ

2009年09月07日

『追想五断章』増刷決まりました

 こんにちは。米澤です。

 先日のサイン会の出来事です。
 サインの合間に、編集者さんにそっと耳打ちされました。
「……さんがいらしています」
 何しろ会場がお店の中ですから、それなりにざわついています。よく聞き取れませんでした。それに気づいたのか、編集者さんはもう一度言って下さいました。
「道尾さんです」
 なんですと。

 というわけで、仲の良い作家の道尾さんにもサイン会に来ていただきました。
 笑顔でお出迎え!
 ご自身も新刊を出されたばかりでお忙しい時期だったでしょうに。サインする僅かの時間に交わされた会話はたいへん興味深いものでしたが、あいにく、さすがにここには書けません。


 そんな『追想五断章』ですが、今回重版の運びとなりました。
 読者の皆様、関係者の皆様、ありがとうございます。
posted by 米澤穂信 at 21:55| お知らせ

2009年09月04日

インタビューです

 こんにちは。米澤です。

 新刊『追想五断章』の発売を受けて、インタビューに呼んでいただきました。

 今回はweb媒体、しかもインタビュアーは担当編集者さん。
 インタビューには割と金城湯池な感じで臨む私ですが、なにしろ一緒に本作りをした方との後日談ということもあって、ちょっとだけガードが下がっているような気もします。


 さらに、有線放送「ミステリチャンネル」にも出させていただきました。インタビュアーは杉江松恋さんです。
 書き手なんて基本「お話の生る木」でいいんじゃ、と思っている私にとって、映像が残るのはちょっと恥ずかしいことだったりします。
 でも出てしまいました。


 ううむ、動いている自分を見るのは恥ずかしい。
 とまれ、よろしくです。
posted by 米澤穂信 at 19:19| お知らせ